ゴジラvsデストロイア

2014年09月09日 火曜日

大河原孝夫監督、辰巳琢郎主演の1995年の映画「ゴジラvsデストロイア」。
ゴジラシリーズの22作目。平成vsシリーズ7作目。

香港に現れたゴジラは体が赤く光っており、どうやら体内の核分裂が進み核爆発を起こす危険性があった。
一方でミクロオキシゲンを研究している伊集院研作は東京湾の採掘作業場から地中深い古代の土を研究用に持って来たが、その中にオキシジェン・デストロイヤーに触れたらしい古代の生物が混ざっており、やがてその生物は巨大化しデストロイアとなった。

話はそれなりに描いてはいるけれど、やっぱりデストロイアの造形の拙さと馬鹿馬鹿しさで、グチャグチャなお子様向け着ぐるみ怪獣対決映画でしかない。
デストロイアは40年前にオキシジェン・デストロイヤーに触れたらしく、それによってミクロオキシゲンを自在に攻撃に使えるという時点で「何のこっちゃ…?」でしかないんだけれど、人位の大きさにまで成長して出て来た場面でその安っぽさに笑ってしまった。
怪獣の首から上を蜘蛛みたいな動体につけただけという、まあ酷いモノ。
そのデストロイアが地上に出て来て、それを見た人々が恐怖で逃げ惑うのだけれど、普通だったら「あのだっさいの何!?」と皆が笑い転げるはず。
ここら辺はまさに子供向け特撮モノの記号的怖さしかなく、普通に普通の映画として見たら、そんな反応にはならんじゃないという場面。
その後も複数いるデストロイアが襲う場面のミニチュアなんて非常に安いし、地上を這う姿と空を飛ぶ姿が全然違って意味不明。
完全体になって空を飛ぶ場面なんて非常に醜悪。
やたらと下半身がでっぷりとしていて、その巨大怪獣が羽ばたきもせず、すーっと飛んで行くのなんて生物的にも航空力学的にも意味が分からない。
多分、ミクロオキシゲンで飛んでいるんだろうなぁ…。魔法、魔法。

ゴジラvsメカゴジラ」で登場したゴジラジュニアも登場するけれど、結局ゴジラジュニアで何がしたかったのかがよく分からない。
ゴジラ徘徊の理由だけ?
それに、この映画でゴジラがメルトダウンで溶けてしまうけれど、そもそもゴジラの体内の核分裂って何なのだろう?
生物が放射能を浴びると体内で核分裂が起こるの?
それとも何かの隠喩なんだろうか?
また、このゴジラの最後も酷く、ゴジラがメルトダウンして溶けて行き放射能をまき散らしていたのに最後には放射能の数値が極端に下がりゴジラの姿が現れるって、最後まで意味不明な脚本。
ゴジラ溶けたのに放射能を吸収して一気に復活したって事?
だとしても、やっぱり意味不明。

人間側の話も描いてはいるけれど、最後まで見ると「結局必要だったの?」と思える人達ばかり。
主人公であるはずの辰巳琢郎は、始めミクロオキシゲンの話をしていたので第一作の「ゴジラ」の芹沢博士の様な活躍をするのかと思いきや、したのは海底の古代の土を拾って来た位で、あとは「魁!!男塾」の雷電の様な解説をするだけの役割になってしまう。
ヒロインの石野陽子もテレビのキャスターとして何か活躍するのかと思ったらデストロイアから逃げ回ってビショビショに濡れるだけ。
辰巳琢郎との恋愛話も一切無いという、何で出て来たのか分からない人物。
後半ほぼ主人公だったのは林泰文演じる大学生。
ゴジラを趣味として独自に研究していて、その内容がGサミットに認められてオブザーバーとして意見するという、この欲無き若き天才があれよあれよという内に…という大嫌いな展開で重要人物となってはいたけれど、結局彼も雷電の様に解説するだけ。
それも、ゴジラの体内の核分裂や体内温度の数値という、どうやって測っているのか一切説明の無い数値の計測を伝えるという、お前じゃなくてもいいじゃん的な位置。
人物で見るべきは石野陽子の綺麗さ。
今でも綺麗だけれど、綺麗。
でも、石野陽子を見ると志村けんとコントをしているおもしろい人の方の印象が強い。
辰巳琢郎も「クイズ王の辰巳豚郎」という印象。
でも、この時の辰巳琢郎を見ると、第一作の「ゴジラ」で芹沢博士演じていた平田昭彦とちょっと似ていて、だから配役されたのかな?とも思った。
中盤で急にスーパーXIIIを指揮する役で高嶋政宏が出て来たので、「あ、これって『ゴジラvsメカゴジラ』で主役だったあの人か!」と思ったんだけれど、調べてみたら「ゴジラvsメカゴジラ」の役名は青木一馬で、今回の役名は黒木翔で別人。
この配役も意味不明。
しかも、この黒木翔って「ゴジラvsビオランテ」で登場した時は弟の高嶋政伸が演じていたって、更に意味不明な配役。
このグチャグチャしている配役でわざわざ出す意味って何なんだ?
役者陣では神山繁小野武彦が自衛隊員としてデストロイアとの戦いを見守ってるのが妙におもしろかった。

あと、「ゴジラvsメカゴジラ」でも思ったけれど女性の扱いが変。
小高恵美のテレパシーが使えるという、特に必要無い超能力の存在も何のこっちゃなんだけれど、やたらとゴジラ側に気持ちを入れるのが不思議。
ゴジラは散々町を破壊し、人々を殺しまくっているのに、それでもゴジラに対して感傷的になり、その将来のゴジラになるであろうゴジラジュニアに対して涙を流すって相当人間に対する感情が欠如している。
それに第一作の「ゴジラ」で同じ役で出演していた河内桃子も、これだけゴジラによって被害が出ている中、唯一ゴジラを殺す事が出来たオキシジェン・デストロイヤーを使うべきじゃないと言うし、彼女達はゴジラによって大勢の人が死に、被害を受けているのなんて知らない!知らない!という事なんだろうか…。

特撮は「ゴジラvsメカゴジラ」の時は全然デカくも見えず、火薬もやり過ぎでよくなかったけれど、見た限りでは特撮関係の制作陣は同じなのに、こっちの方がまだいい。
でも、所々でCGを使っているのだけれど、これが非常に安っぽい。
この時のCGってこんなに安っぽかったっけ?

ゴジラの造形は特に変わり無しの様だけれど、ゴジラよりもゴジラジュニアの造形の方が全然良い。
前傾姿勢でトカゲっぽさもあり、ゴジラの如何にも人が入っている着ぐるみ感よりも生物感があって、この方向でゴジラにすれば良いのに…と思った。

この映画、そのデストロイアの造形が「大人の僕が考えた、トゲトゲが一杯あって変身し、空を飛んで火を吐く、強い怪獣!」なので、やっぱり子供向け着ぐるみ怪獣対決映画があり、幾ら原子力がどうのこうの、兵器がどうのこうの言った所で…な映画。

☆★★★★
 
 
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