ゴジラ(1984年)

2014年09月07日 日曜日

橋本幸治監督、田中健主演の1984年の映画「ゴジラ」。
昭和ゴジラシリーズとは別の、この映画からの新しいゴジラシリーズ、所謂平成ゴジラシリーズとなった映画。

この映画の立場がおもしろいのは、第一作の映画「ゴジラ」で起こった事は作中内では事実としてあるけれど、第一作以降のゴジラシリーズの映画での事は存在していない様で、リブートやリメイクとも違う所。
二作目以降のリブートという部分では「スーパーマン リターンズ」みたい。
なので、この映画も第一作目と似ている部分が多く、船の消息不明からゴジラの存在が明らかになり、ゴジラは序盤は中々出て来ない。
ゴジラの扱いに対し政府が緊急に総力をあげて対応する等、一作目に準じて作っているのが良く分かる。
それに加えて、米ソからの核ミサイル使用とかの政治的話も入り大人向けの話を進めている。
でも、やっぱりゴジラは着ぐるみなので、ゴジラが登場した瞬間に苦笑。
それまでおっさん達が自然災害や国際紛争に発展しそうな事象に対応するが如くに真面目に話が進み、皆が真剣に演技している分、ゴジラ登場で「あ~あ…」となってしまう。
当時の大人の感想はどうなのかよく分からないけれど、流石に1984年当時でも着ぐるみの怪獣で大人向けって有り得ないんじゃないかしら?
ゴジラ対スーパーXって子供向けなら良いけれど、大人向けだともうギャグだしなぁ…。
ゴジラが攻撃されても全く動じないのは、一作目のゴジラだと自然災害の象徴としてや日本的な神としてという部分があったので何となく納得は出来るけれど、この映画でのゴジラは相当ミサイルやら弾薬を受けているのに全く動じないのは生物的な部分が一切無く、もう着ぐるみだから反応しようがないという事以外には見えないし。
それにゴジラの意味もよく分からない。
一作目は戦争や自然災害の隠喩としてのゴジラが非常に強かったけれど、今回のゴジラは自然災害としての隠喩では弱過ぎるし、結局怪獣が町を破壊する以上のモノが見えて来ない。
その破壊も盛大にぶっ壊す訳でもないので怖さが無く、実際作中でもゴジラが眠ったので人々が近くに寄って来て見ているという、まあのんびりし過ぎな場面まで入れているし。
これって笑わそうとしているんだろうか?

一作目の続編的位置にはあるけれど、一作目と結構違う部分も。
一作目のゴジラって水爆実験によって住処を破壊されて出て来た古代の恐竜の進化版だったのに、今回は何だか放射能で変化したみたいな感じだし、原子力発電所から放射能を吸収するしで放射能怪獣になっている。
それにゴジラの大きさが50mから80mと1.6倍に大きくなっているけれど、これって一作目のゴジラがまだ若ゴジラだったとか、メスだったとかなのかしら?
それに一作目の1950年代にゴジラが東京を破壊した事実があるのに、政府はあんまりゴジラ対策を講じて来ていないのも不思議。
あれだけグッチャグチャに破壊されたら、それ以降は起こるかどうか分からない戦争よりは来るかもの可能性が大のゴジラ対策に戦力整えるはずだし、相当人員や資金を割いて研究もするはずなのにゴジラ対策や研究しているのは政府ではなく、ゴジラとは違う研究をしている科学者が細々と研究していた…って…。
始めてゴジラが現れてから30年の間「ゴジラを倒したから、もう大丈夫!」という頭晴々な人間しかいなかったって事か…。
そういう意味では「おごりは身を滅ぼすかも」という題材はしっかりある。
ただ一方でスーパーXというトンデモない超科学技術を使用して、どんだけ予算をつぎ込んだんだなチタンとプラチナを大量に使って作っていたりもする兵器があるんだけれど、ただこのスーパーX、対ゴジラ用に作ったのではなく、単に首都防衛用として作られているのも訳が分からない。
なのにスーパーXは果たして首都防衛用兵器として役に立つのか?な感じだし。
ここら辺は子供向けの見せ場としての超兵器な感じが物凄い。

あと、ゴジラの造形も良くない。
顔がデカくて首が長く、物凄い撫で肩。
頭が長いので中の人の頭よりも上にゴジラの頭が来るだろうから、ゴジラが歩くと結構頭がフルフル揺れてしまう。
ゴジラの体の着ぐるみが薄い感じもはっきり見えるし。
それに歩いている時何故か上目使いだし。
で、このゴジラの一番の見所でもあり、この映画全体での一番の見所でもあるのは高層ビルを枕にして眠りこけるゴジラ。
恐怖としての対象であるはずのゴジラが可愛らしい…。

怪獣映画の「ゴジラ」としてよりも1980年代の日本の感じを見る映画としては抜群におもしろい。
当たり前だけれど当時の服装、髪型、町並み、自動車や家電まで80年代。
セットや兵器のデザインも1980年代。
当時、高層ビルが新宿の副都心に建ち始めているので1980年代の東京の映像と言うと新宿のビル群で、その印象がそのまま登場するし。
それに総理大臣役の小林桂樹が良い事言った後に官房長官に煙草に火を付けさせてプカ~と煙草を吸うけれど、今だとこの演出完全に悪役の親分。
まあ、時代。

初めに宅麻伸や田中健が登場しているけれど、二人共若いので全然分からなかった。
それに沢口靖子がまだ芸能界入りした年らしいので、まさに1980年代の弩新人アイドル的下手くそな演技で笑ってしまった。
それにまだ19歳なのにおばさんみたいな老けている感じがある。
脇の役者達は結構大御所が多くて、小林桂樹、小沢栄太郎、金子信雄、佐藤慶、夏木陽介等が登場するのだけれど、着ぐるみゴジラが相手なので何だか滑稽に見えてしまう。

子供の時にどれかのゴジラ映画を見た覚えがあるのだけれど、始めの漂流する船の中でミイラ化した死体が登場する場面で「あ、見たのこの映画だ!」と思い出した。
何でか知らないけれど、始めの場面を見逃して行き成りこの場面から見てしまい、「結構見逃している…」と思って全編見終わってからもう一回初めから見て、ミイラをもう一回見て「うげ~…」となったのを思い出した。

この映画、これまでの映画を無しにして一作目の続編として再始動したので大人向けの要素も大きいけれど、やっぱり着ぐるみゴジラで大人向けって無理あるし、スーパーXとかの子供向けな超兵器出したり、田中健と沢口靖子のどうでもいい恋愛要素入れたりと余計な部分は多いし、結構間延びする展開で何だかなぁ…な出来。
なのに、この後結構続編が続くのが不思議。

☆☆★★★
 
 
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