怪獣大戦争

2014年09月06日 土曜日

本多猪四郎監督、宝田明主演の1965年の映画「怪獣大戦争」。
昭和ゴジラシリーズの第六作。

木星に新たに発見された13個目の衛星に調査に出掛けた地球連合宇宙局の二人は、その衛星にX星人が住んでおり、キングギドラが衛星上にいる為地下で生活しなくてはならなくなっている事を知る。
X星人達はキングギドラ退治の為に地球にいるゴジラとラドンを貸して欲しいと頼んで来た。

他の昭和ゴジラシリーズでもそうだけれど、「三大怪獣 地球最大の決戦」「怪獣大戦争」と怪獣の対決を煽っている割に、その対決までが長く、それまでの人間のどうでもいい話が長過ぎ。
今回のX星人達の見た目は酷過ぎるけれど、ここのSF話だけで進めればそれなりのSF映画になっているのに、そこに怪獣を絡めるので雰囲気は前半後半で違い過ぎて全体的に不均衡だし、怪獣を見せるなら前半の話は不必要だし。
前作の「三大怪獣 地球最大の決戦」でもそうなんだけれど、当時の宇宙に対する関心からか怪獣映画なのに変に宇宙と話を絡めて来るので話が変な方向で進んでグッチャリして来る。
「三大怪獣 地球最大の決戦」の金星人の意識が乗り移るとか、今回のX星人の見た目とか、キングギドラ自体は結構格好良いのにキングギドラが登場するとその周辺の話が非常に安っぽくなってしまう。
怪獣を戦わすという企画ありきに肉付けして行っただろう脚本じゃあ、どっちつかずにしかならんのか…。

おもしろいのは、宝田明とニック・アダムスのバディモノの構成。
生真面目な宝田明と色男なニック・アダムスという対比が効いていて、別に怪獣出さずにこの二人のSF映画でも良いのに…と思ってしまった。
ニック・アダムスが円盤に乗って衛星に行く前に付き合っている女性に「帰って来たらすぐ結婚しよう。」と言って行くのなんて、もう完全に結婚詐欺師的な台詞で笑ってしまう。
しかし、ニック・アダムスの方は意外と哀しい恋愛劇を見せ、中盤の主人公はニック・アダムス。
この二人の人物が立っていて、怪獣が出て来ず、この二人の宇宙隊員が活躍する映画なら物凄いおもしろそうなのに…。

衛星Xに宝田明が入って行き、そこの当時の近未来SF的なセットや陰影での演出は非常に良く、全然今のSFのセットとしても使える位良いのに、その後直ぐに登場するX星人で台無し。
X星人酷過ぎる見た目。
これ、当時の本気のSF的造形なんだろうか…?
特撮は宇宙円盤が登場する部分はCG以前として非常に良く出来ているんだけれど、怪獣達の対決になるとやっぱり子供向け着ぐるみショーで、がっかり。
特に「おそ松くん」のシェーをするゴジラなんて子供騙しもいい所で酷くて見てられない。

他の昭和の映画シリーズでもそうなんだけれど、これまでの映画の設定や話を引き継いでいるはずで、再び同じ役者が出演しているにも関わらず今までの事は無かった事になっていて、全く違う役で出て来る事がよくある。
今回の宝田明も第一作の「ゴジラ」では船員。
シリーズ四作目の「モスラ対ゴジラ」では新聞記者。
今回は地球連合宇宙局のパイロット兼調査員と、まあバラバラ。
シリーズの映画で同じ役者が演じているにも関わらず別人って、結構間を置かず見ると頭がクラクラして来る。
あと、不思議な感じがするのは、ニック・アダムスは多分英語で喋っているのだろうけれど、それを問答無用で日本語吹き替えにして話が通じている昔の日本映画である外国人の扱いなんだけれど、その吹き替えをしているのが納谷悟朗
納谷悟朗と言えば、「ルパン三世」の銭形警部であり、「ふしぎ研究所」でセイ子さんを指導する博士で、しゃがれた声であり、見た目は仙人の様なおじいさんの印象しかないけれど、この映画での吹き替えの声は若く、男前。
そりゃこの時36歳だから若いのは当然だけれど、わたしの印象と全然違って不思議な感じ。

伊福部昭の「怪獣大戦争マーチ」から始まる所なんて最高に盛り上がるんだけれど、この音楽がまた出て来るのは最終盤で他の場面でももっと音楽が欲しい所。
この最終盤で流れるのは、地球側の電磁波妨害兵器によって三匹の怪獣とX星人の円盤を倒すという場面で始まりよりも盛り上がり、この映画の中でも、これまでのシリーズでも最高に気持ち良い場面。

調べて「へ~。」と思ったのは、この当時、木星の衛星は12個発見されていて13番目の衛星を新たに発見したという話になっているけれど、今現在は66個の衛星が発見されている事。
物凄いあるじゃん。
13番目の衛星どうのこうのと言う話でもないなぁ。

この映画、怪獣が登場すると急につまんなくなるので、着ぐるみの怪獣とX星人の酷過ぎる見た目がなければ結構おもしろいSF映画になっていたんじゃないかと思ってしまった。
性格の違う宝田明とニック・アダムスがもっと活躍して、密かに策略を巡らして地球の資源を狙う高度な科学技術を持った地球外の人型生命体と戦うなんて後年の非常に王道なハリウッド映画の侵略SFモノじゃん。
「V」じゃん。
是非ともそっちでやって欲しかった。

☆☆☆★★
 
 
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