スター・トレック(1979年)
2025年12月12日 金曜日ロバート・ワイズ監督、ジーン・ロッデンベリー製作、ウィリアム・シャトナー主演の1979年のアメリカ映画「スター・トレック(Star Trek: The Motion Picture)」
テレビドラマ「宇宙大作戦」のその後を映画で描いた続編。
天体程の大きさのある巨大な何かが地球へと迫っていた。
それを調査して止める為に大規模な改修が終わろうとしていたU.S.S.エンタープライズが任務に赴く事となり、提督となっていたジェームズ・T・カークが名乗り出て再び艦長として指揮を執る事となった。
その為、エンタープライズの艦長として出航するはずだったウィラード・デッカーはカークに副長に任命されてしまった。
モンゴメリー・スコット、ウフーラ、ヒカル・スールー、パヴェル・チェコフらはそのままエンタープライズに残っていたが、カークはレナード・マッコイを呼び戻し、謎の物体に興味を持ったスポックもエンタープライズへとやって来て、謎の物体の調査へと赴く事となった。
インターネットで色々調べていたら、Youtubeで「宇宙大作戦(TOS)」の映画が無料で公開しているという情報を見つけ、わたしは「宇宙大作戦」は全話見て、その後に映画を見ようと思ったら何故かAmazon プライムビデオでは「スタートレックIV 故郷への長い道」だけが配信していたのでそれを見ただけだったので、これは好機と思って見てみた。
スタートレックシリーズのその後への影響とかの部分で見るとおもしろい部分はあったけれど、一作の映画としてだとおもしろくはなかった。
このYoutubeの配信だと始まってから一・二分間は画面真っ黒で音楽が流れているだけが続いたので「何か壊れてる?」と思ったら、そこからオープニングクレジットが始まって「??」ではあり、更にそのオープニングクレジットの音楽が「新スタートレック」のメインタイトルでお馴染みの曲で戸惑ってしまった。
「新スタートレック」からスタートレックに入って、最近も「新スタートレック」をシーズン1から見ていた身としては、この音楽は「新スタートレック」なので、「宇宙大作戦」で「新スタートレック」の曲だと思ってしまったので変な感じ。
続編の映画なのでエンタープライズを新たにするのは分かるけれど音楽まで変えてしまったのは当時の「宇宙大作戦」を見ていた人からするとどうだったのだろう?
やっぱり「宇宙大作戦」はあの「♪ア~ア~~アアアアア~」の曲じゃないの?
それに、この映画の音楽を新たなテレビドラマの「新スタートレック」にそのまま持って来る使い回しだったのもどうなんだろうと思ってしまった。
で、映画が始まってからも初めに額に飛び出た筋のあるクリンゴン人が登場したけれど、「新スタートレック」以降で馴染んでいるわたしはやっとお馴染みのクリンゴンが初登場と思う一方で、やっぱり当時の「宇宙大作戦」を見ていた人からすると「宇宙大作戦」の時とは見た目が全然違うクリンゴン人はどう思ったのだろう?
制作側は大分思い切った事をしたので、これは後々各シリーズでネタになっているし。
それにこの時のクリンゴンの額は背骨みたいな感じで「新スタートレック」の時のクリンゴンともちょっと違っている。
その後の映画の前半は状況説明とお馴染みの各登場人物のエンタープライズへの集結と再紹介を結構ゆったりして見せているので結構間延びしながら進んでしまう。
ここは当時の「宇宙大作戦」打ち切り終了から再放送で人気が出て、ドラマ終了から十年も経って映画で続編が作られたという経緯で見たら感動的でおもしろいんだろうけれど、わたしは2020年代に「宇宙大作戦」を見てから二年位立ってからの映画なので、そこの感動は薄くなってはいた。
ここら辺の再集結もカークがエンタープライズに戻って来て興奮していたけれど何でエンタープライズから降りたのかとか、二度と船には乗らないと言っていたマッコイを呼び戻す理由が弱かったり、戻って来たスポックとの再会の時のスポックの反応の弱さがおもしろくなってはいないとか、どれも描きが弱い感じなのでいまいち乗って行けず。
カークとスポックとマッコイの三人が話し合う場面でやっと「宇宙大作戦」っぽくなったけれど、感情を抑える修行をしていたからとは言え、スポックの反応が弱いのでそんなにおもしろくならず。
そう言えば「宇宙大作戦」ってこのカークとスポック、カークとマッコイの漫才的やり取りで、このトリオ漫才がおもしろかったのにと思い出した。
特に用事もないドクターがブリッジにしらっとやって来てはカークに文句たれるとかも「宇宙大作戦」。
主人公のカークは地上勤務になったけれどその権力を使ってエンタープライズに異様な執着を見せる様な、まるで駄々っ子の様な人間になってしまっていて、何でこんなその後のカークにしたんだろう?と思ってしまった。
本来ならそんな自分勝手なカークと、艦長だったはずが突然副長に降格されてしまったウィラード・デッカーとの対立に、そこにマッコイも入って来てカークに説教してどうにかなりそうだったのけれど、対立も話的には盛り上がりに欠け、二人の理解や和解も大してないままで思わってしまい、カークが提督になって人間的に成長したとかも無く、まるでカークが更年期になって精神的に不安的になっているだけみたいだった。
ウィラード・デッカーとアイリーアの関係と言うかウィラード・デッカーのアイリーアへの思いも薄くて最後の行動もいまいちピンと来ないままだしで、おもしろくなりそうな感じではあったのに全部描きが弱かったり少なかったりで物足りず。
ヴィジャーに関する調査や分析も結局スポックが精神融合という魔法で全部説明してしまう「宇宙大作戦」の悪い部分があったり、ヴィジャーの行動原理とかも何だか有耶無耶な感じだったりとそこも描きが微妙だったし。
序盤で、映画になってドラマよりもお金をかける事が出来、エンタープライズもよりお金をかけて作ったからか、長い間シャトルポッドで行ったり来たりしてエンタープライズを長く見せていたけれど、ここで思ったのがエンタープライズとシャトルポッドの寸尺が変な気がするだった。
エンタープライズが小さ過ぎる様な気がしたけれど、見慣れた「新スタートレック」のギャラクシー級のDのエンタープライズが大きいからで、後から調べて初代のエンタープライズってDの半分位の大きさなのかと知って、映画のこの寸尺なのかと思った。
ここでもエンタープライズをずっと見ているという場面だったけれど、その後も登場人物達が外の何かをずっと眺めているという場面が何度も登場して、これが非常に間延びしていた。
これって当時は「スター・ウォーズ」が当たってそっちの早い宇宙戦の映画に向いていたけれど、「スター・ウォーズ」とは違うという方向性で「2001年宇宙の旅」の様な方向性にしたんだろうか?
話もヴィジャーが人工知能や謎の地球外生命体や進化とかだったし。
ヴィジャーの外側の宇宙船もやたらと長く見せていたけれど、お金をかけての大画面での映画だから特撮や視覚効果を見せるという意味もあったのかな?
この場面はちょっと「インデペンデンス・デイ」を思い出してしまったけれど長々とだったので間延び感が否めなかった。
アイリーアがアンドロイドとして戻って来てからのこれは一体何なのだ?で「宇宙大作戦」のSF的おもしろさが出て来たのに、それ以降のヴィジャー内部が間延びし過ぎていたので結構飽きてしまった。
エンタープライズが新たになっていたけれど制服も新しくなっていて、でも相変わらず寝間着感は強い。
「宇宙大作戦」から続く、この寝間着感は何なのだろう?
それに「宇宙大作戦」でもそれ以降でも続く、赤・青・黄の制服ではなく灰色や白色って、当時のSFの雰囲気では制服はこういう感じが正解だったのだろうか?
でも、半袖の制服って何故?
艦内は常に暑いから初めから半袖制服を作ったの?
あと気になったのがカークが結構老けていた事。
「宇宙大作戦」から十年後に作られた映画なので、そりゃあウィリアム・シャトナーも老けるんだけれど、「宇宙大作戦」でのカークの輝きから大分減った様に思えてしまった。
スポック役のレナード・ニモイは「宇宙大作戦」の時から何歳なのか分からない見た目でこの映画でも変わらない感じだったし、マッコイ役のデフォレスト・ケリーは「宇宙大作戦」の時から四十代後半なのにおじいさんにしか見えなかったし、ミスター・カトウ役のジョージ・タケイやチェコフ役のウォルター・ケーニッグも「宇宙大作戦」からあんまり変わっていない感じだっただけにカークの老けた感じがカークだけが歳を取った感じになってしまっていた気がしてしまった。
映画の中でも言っていたけれど「宇宙大作戦」の五年の調査から二・三年後ではあるので、それだとカークの老け感はよっぽど提督や地上勤務があってなかったのだろうなぁと思ってしまった。
提督になって地上勤務ばかりで疲れた感じが出ていると言えば良い風なんだけれど。
チャーリーに関しては「宇宙大作戦」での渋いけれど優しいおじさん前期チャーリーから、この映画から呑気なおじいさんの後期チャーリーになっていて、最早別人なのでそういう者として見てはいた。
登場で嬉しくなったのがジーン・ロッデンベリーの妻メイジェル・バレット演じるクリスティン・チャペルで、「宇宙大作戦」ではマッコイに付く看護師だったのがこの映画ではエンタープライの医師になっていた。
「宇宙大作戦」では本当に脇役扱いだったのに映画にもちゃんと登場したのが嬉しいんだけれど、しかし何故かその場所にいるのにほとんど画面に映らないというのは何でなんだったのだろう?
カークが新しくなったエンタープライズに来て直ぐに機関室に行って機関室内を歩いて周ったり、二階部分から降りて来たりしていたけれど、そう言えばこれって「新スタートレック」の一話目でもジャン=リュック・ピカードが同じ様に機関室歩き回っていたし、確か「スタートレック:ヴォイジャー」でもキャスリン・ジェインウェイが歩き回っていた様な記憶があって、確かに内部を見せる紹介にも良いしでここからの引用や伝統になったのかな?
それに、エンタープライズ内の通路も、「宇宙大作戦」ではセット内に壁を作った位の物だったのが宇宙船っぽい通路になっていて、これも後の「新スタートレック」のエンタープライズDに繋がる感じで、そこでちょっと喜んでしまった。
あと、「宇宙大作戦」でお馴染みの、こちらには何にも無いのにハッタリを吹っかけて上手く行ってしまうカークの交渉術も、これこれ!と言う感じで喜んでしまった。
この映画、低予算ドラマで結局打ち切られた「宇宙大作戦」が再放送から人気が出て、宇宙SF映画の流行の波に乗って映画で復活して、新たなエンタープライズに皆が再集結してという流れがあるのは分かりはするけれど当時に見てないので大して感動が無く、何だか老けてしまって輝きが減ってしまい妙に駄々っ子の様なカークの魅力が無かったし、スポックも余りに素っ気なさ過ぎでカークとの漫才も不発だったと思うし、SF的なおもしろさも出しては来たけれど描きが足りないのに間延びしていて、いまいちさばかりが目に付いてしまいました。
☆★★★★
関連:宇宙大作戦 シーズン1・2・3
スタートレックIV 故郷への長い道