スタートレックVI 未知の世界
2025年12月29日 月曜日ニコラス・メイヤー監督・脚本、ウィリアム・シャトナー主演、レナード・ニモイ製作総指揮・原作・出演の1991年のアメリカ映画「スタートレックVI 未知の世界(Star Trek VI: The Undiscovered Country)」
テレビドラマ「宇宙大作戦」のその後を描いた映画五作目。
クリンゴンの母星クロノスの衛星プラクシスが過剰な鉱物採掘で爆発してしまい、その影響はクロノスにも及び、クロノスは後五十年で滅びてしまうとされた。
クリンゴンは軍事費が多い為に対処が困難だと判断し、長年敵対していた惑星連邦との和平交渉を行う事にした。
交渉の為にクリンゴン帝国総裁ゴルコンが中立地帯までやって来るので、その迎えとしてジェームズ・T・カークが指揮するエンタープライズが向かう事になった。
カークはクリンゴンに息子を殺されたので恨みがありつつも、それを隠しながらクリンゴンを迎えるが、送迎途中で誰も指示していないのにエンタープライズから魚雷が発射されてクリンゴン艦に命中。
クリンゴン艦に何者かが乗り込みゴルコン総裁を殺してしまった。
カークとレナード・マッコイが状況を確認して説明する為にクリンゴン艦に乗船するが捕縛され、クリンゴン人達によって裁判にかけられて流刑惑星に送られてしまった。
インターネットで色々調べていたらYoutubeで「宇宙大作戦(TOS)」の映画が無料で公開しているという情報を見つけ、一作目から順番に見始めての「宇宙大作戦」の最終話になる六作目。
これまでドラマでも映画でも描かれて来たクリンゴンとの対立が、「宇宙大作戦」から数十年後の世界の「新スタートレック」の時代には惑星連邦とクリンゴンがある程度仲良くやっている関係になっている所への繋がりの始まりを描いた内容で、「宇宙大作戦」のまとめとしてや最終回としても良い題材だし、後へと繋がるという部分でも良い要素が多くておもしろくは見れたのだけれど脚本が緩くていまいち感ばかり。
突然の衛星の爆発って何してたんだ?とは思うけれど、クリンゴンの行き成りの危機に対して惑星連邦との和平を取るってクリンゴンって実は非常に現実主義だし、戦い以外の部分での面子に対してはこだわらないのかと思う興味深い所から始まり、これまでの映画ででは登場させた割にカークの息子という役回りを活かせていなかったと思っていたデビッド・マーカスをここで遂に上手く活かし、息子の死でカークははっきりとクリンゴンを嫌っている、憎んでいるけれど与えられた指令に対して忠実に実行し、エンタープライズが攻撃をしていないのに光子魚雷を発射した時は直ぐに降伏して冷静な判断をする姿を描いたり、エンタープライズの乗組員達とクリンゴンの食事会のギスギスした会話劇等、人を描く部分ではおもしろく見ていた。
ただ、それ以降の撃っていないはずのエンタープライズ側の捜査の部分が雑過ぎ。
誰よりも冷静で論理的なスポックが捜査を始めるのが遅過ぎ、大して何もしないままで裁判を皆で眺めているんだ。裁判までに証拠を集めろよと。
ブーツを探せと言う話になるけれど、まずコンピューターの記録やシステムをチェックしないの?だし、何らかのセンサー等で調べずにエンタープライズの下に遮蔽したクリンゴン艦がいると言う推測だけで話が進み、その後のこのクリンゴン艦の詳しい説明も無いし。
何故か捜査が始まってから結構時間が経ってから突然クリンゴン艦に行った実行犯を殺害し、しかもその死体を通路のど真ん中に置きっ放しの意味も分からないし、犯人も当然の様にヴァレリスという捻りも無いし。
ハリウッド映画って、こういう突如出て来た身内が実は裏切り者だった…をやたらとする印象なんだけれど、これって今までいた馴染みの人が裏切り者なら意外性があるけれど急に出て来た人なら意外性は無いし、題名にもなっている「未知の世界=未来」に行く為に次の世代に繋いで行くというまとめを言っていたのに、その優秀な次の世代のヴァレリスが惑星連邦の理想とは逆を行く人物でした…。理想を行ったのは引退間近のエンタープライズの面々でした…って良いの?だし。
この暗殺計画についても、やっぱり超能力なスポックの精神融合で簡単に説明されるけれど、クリンゴン側の和平交渉をしようと思い、公表した所から惑星連邦のクリンゴンが嫌いなはずの強硬派の提督とクリンゴンの惑星連邦が嫌いな強硬派の将軍がどうやって連絡を取って実行出来たのかはさっぱり分からないし、更にそこにロミュランまで関わっていたとかどうやって密談したんだ?だし、そもそもこの人達が計画を立ててから実行するまでにそんなに時間の猶予があったの?だし。
これまでは全員でエンタープライズで一緒に行動していたのに、この映画では何故かミスター・カトウだけがエクセルシオールの艦長になっていて、最後にエンタープライズの危機に登場して助けに入りはするんだけれど、これが結構微妙な感じ。
見ている方が忘れていた所にジャジャーンで現れてカッコ良くエンタープライズを助けるなら待ってましたの納得のエクセルシオールの艦長なんだけれど、何度もミスター・カトウの話が出て来て、何度も宇宙艦隊の命令を無視して助けに行っているのが出て来て、エンタープライズを助けに来てもぬるっと登場してエクセルシオールが被弾するだけという展開としても映像としても大して盛り上がらない存在で終わってしまった。
何でミスター・カトウだけわざわざ別の船の艦長にしたんだろう?
それにミスター・カトウって操舵士だったけれど、操舵士から昇進したら副長とかの経験が無くとも数年で艦長になれるものなのか。
あと、残念なのは、これが「宇宙大作戦」の最終回で、未来に繋がるクリンゴンとの和平の始まりを描いているのは良いんだけれど、それは既にこの映画の公開時には「新スタートレック」のシーズン5が放送中で、「新スタートレック」では既にクリンゴンとは関係性は良くなっている、その未来の時代に合わせに行っている訳だし、エンタープライズの中も転送室やワープドライブ室は「新スタートレック」のエンタープライズDの方のセットをほとんどそのまま使っていたしで、「新スタートレック」があってのこの映画になっていたのが寂しい。
色々とこの映画について調べていたら、「スタートレック:ヴォイジャー」のシーズン3の2話目「伝説のミスター・カトー」でこの映画のミスター・カトウ側の事が描かれていると知って、Netflixでのスタートレックシリーズの配信が終わってしまうのでその前にこの回だけ見てみた。
この回は当時「宇宙大作戦」から三十周年記念での「宇宙大作戦」と関わる回で、しかしヴォイジャーはデルタ宇宙域にいるし、八十年前の出来事なので、苦肉の策としてトゥヴォックが幻想を見始めて、それを治す為に鬼艦長ことキャスリン・ジェインウェイと精神融合して協力して過去の記憶のトラウマを押し戻す中で、実はトゥヴォックはミスター・カトウ艦長下のエクセルシオールが初赴任で、その当時の記憶の中でエクセルシオールのミスター・カトウが登場するとなっていた。
以前にこの回を見た時は「宇宙大作戦」もこの映画も見た事が無く、「スタートレック:ヴォイジャー」を見始めての流れの一話だったので「ふ~ん」位だったけれど、この映画を見てからだと映画の裏話、補足としておもしろかった。
映画の初めにあったミスター・カトウが飲む紅茶のカップが振動で揺れて床に落ちた場面では、実はあの紅茶はトゥヴォックが入れた物で、その紅茶を入れる場面でエクセルシオールの乗組員とのやり取りがあり、その相手は「宇宙大作戦」から映画にも登場していたグレース・リー・ホイットニー演じるジャニス・ランドだったり、トゥヴォックのトラウマのきっかけになった髭の士官ディミトリ・ヴァルテインとのやり取りがあったりと、映画の人物を掘り下げた部分でおもしろかった。
当然ミスター・カトウの活躍も、もしかすると映画以上に描かれているし、「宇宙大作戦」的論理で堂々と宇宙艦隊の誓いを破ったりもするしで、ミスター・カトウを見るならこっちも。
仲間の為に誓いを破るミスター・カトウに対して論理的に抗議するトゥヴォックに対して、トゥヴォックが正しいと言うあのジェインウェイ艦長を見ていると、「宇宙大作戦」時代の人々ってジェインウェイ以上だったのかとも認識出来る意味でもこの映画から「伝説のミスター・カトー」は見ると非常におもろかった。
この映画、惑星連邦とクリンゴンの和平へのきっかけという題材はおもしろいのにそれ以外の脚本の詰められてなさで、見終わると何かつまらなかったとなってしまい、未来へと言うならカークの活躍もそこそこに若手も活躍させないとと思うのにやっぱりカーク万歳!で終わるので、まあこれが「宇宙大作戦」らさしと言えばそうかなとは思う映画でした。
ちなみに映画六作を見て一番おもしろかったのは、スタートレック的SF部分では大分いまいちだったけれど見たかったカーク・スポック・マッコイのトリオ漫才をこれでもかとやっていた「スタートレックV 新たなる未知へ」でした。
☆☆★★★
関連:宇宙大作戦 シーズン1・2・3
スター・トレック(1979年)
スタートレックII カーンの逆襲
スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!
スタートレックIV 故郷への長い道
スタートレックV 新たなる未知へ