スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!
2025年12月20日 土曜日レナード・ニモイ監督・出演、ウィリアム・シャトナー主演の1984年のアメリカ映画「スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!(Star Trek III: The Search for Spock)」
テレビドラマ「宇宙大作戦」のその後を描いた映画三作目。
前作でスポックが自らの命を犠牲にしてU.S.S.エンタープライズを救った。
帰路に就くエンタープライズだったが、レナード・マッコイの精神が不安定になっていたので休養を取る事となった。
しかし、ジェームズ・T・カークを訪ねて来たスポックの父親サレクによるとヴァルカン人は肉体は死んでも魂は生きており、スポックは死を覚悟した時にマッコイへ自分の魂を託していたのでマッコイの精神が不安定になっており、スポックの肉体と魂が合わさればスポックは復活するし、マッコイも元に戻ると言う。
カークはスポックの遺体を送り出したジェネシス計画で誕生した惑星に行こうとするが、その惑星はジェネシス計画の装置を作り出したカークの息子デビッド・マーカス達だけが立ち入りを許可されており、カーク達でも許可はされなかった。
カーク一行は廃船間近のエンタープライズで強行突破してジェネシスの惑星へと向かうがジェネシス計画が強大な兵器だと認識したクリンゴンもジェネシスの惑星へと向かっていた。
インターネットで色々調べていたらYoutubeで「宇宙大作戦(TOS)」の映画が無料で公開しているという情報を見つけ、一作目から順番に見始めての三作目。
二作目「スタートレックII カーンの逆襲」がまるで一作目の「スター・トレック(1979年)」が無かったかの様に心機一転の映画で、その二作目の直後から始まる続編。
二作目の出演に乗り気ではなかったレナード・ニモイがスポックが死ぬならで出たという話を見たのに、その続編はノリノリの様でレナード・ニモイが監督までしてこの映画丸々一本使ってスポックの復活を描く内容で、映画内の最後には更に続編もするよ!と予告も出て来て、レナード・ニモイのこの心変わりは何だったのか?と思う映画。
二作目でレナード・ニモイを納得させる為と映画での意外性の為にスポックを死なせたのはいいのだけれど、その続編となるとどうしてもそれに縛られてはしまい、スポックの復活だけで行くとなると一本の映画としては中々きつい感じがしてしまった。
確かに見せ場も多くあり、これまでの映画でちょこっとだけは登場していたクリンゴンがいよいよ本格的に敵として登場して、しかもクリンゴンのバード・オブ・プレイの初登場や遮蔽装置の使用があったり、新型艦のエクセシオールの登場や宇宙艦隊から逃げ出すカーク一行がお馴染みの人達だけでエンタープライズを動かし、エンタープライズの自爆で最後を迎える等、二作目以上におもしろい要素を盛り込んで結構飽きさせない。
しかし、話の本筋はスポックが復活するという事で、今見ると当然スポックが復活するのは知っている事だし、この当時でもやっぱりスポックは復活しませんでした…にはならない事は分かってはいただろうから、これだけ引っ張ってする事なのか?と思ってしまった。
まだ、テレビドラマのシーズン最終話でスポック死亡のクリフハンガーをして、次のシーズンプレミアでその復活を描くなら如何にもな展開でおもしろく見れたと思うのに、映画だと何だか無駄に水増しした感じを受けてしまった。
そのスポックの復活も、マッコイに魂を残していたから問題無く、肉体の方はジェネシスで遺体の細胞から蘇った?と何でもありで、強引に生き返らせていたので乗っては行けなかったし。
それにカークと息子のデビッド・マーカスも二作目よりも交流も会話も無いままで父と子の関係はさっぱり描かれず、なのでカークの息子へ思いも大して響かない。
前作でこのデビッドを息子として出したは良いけれど結局上手く扱い切れなかったという印象しか残らなかった。
それとそのデビッドとの関係が深まりそうでやっぱり薄いままだったサーヴィックもいまいちで、しかも初登場した二作目の役者から行き成り交代しているし、その役者は前の人とは似てもいないし、やっぱり初登場の時の方が印象が強くなるのでこのサーヴィックは印象が弱くなってしまった。
この映画で一番おもしろかった場面は、最後のカーク対クリンゴン艦長クルーグの対決。
二作目ではカークと敵のカーン・ノニエン・シンが直接顔を合わせる事が無いまま終わったのに対して、その続編ではカークとクリンゴンが直接殴り合って決着を付けるなんて、如何にもハリウッド映画だし、如何にも「宇宙大作戦」っぽくて笑ってしまった。
しかも、これ以降でもお馴染み戦闘種族クリンゴンだけど動きがもっちゃりに加え、ウィリアム・シャトナーも動きがもっさりで、まあ迫力の無い戦い。
最後にはカークが「地獄に落ちろ!」と崖を掴んだクルーグを蹴り落すって、物凄くカークっぽくて笑ってしまった。
これがジャン=リュック・ピカードだったら助けたんだろうなぁ…と思って見てた。
後から調べて知ったのだけれど、このクリンゴン艦長クルーグってクリストファー・ロイドだったのか。
他でもおもしろかったのが、クリンゴンのバード・オブ・プレイの存在。
制作企画段階では元々この映画での敵はロミュランだったらしいけれど、それをレナード・ニモイがクリンゴンに変更したそうで、その為元々ロミュランのバード・オブ・プレイだったのがそのままロミュランのバード・オブ・プレイをクリンゴンが盗んだという話になり、その設定が無くなったけれどバード・オブ・プレイの名前はそのまま残り、「宇宙大作戦」でクリンゴンとロミュランが一時的に同盟を結んでいたという設定もあったのでクリンゴンの遮蔽装置があるバード・オブ・プレイが誕生したという事らしい。
そういう制作側の都合の二転三転で後々までクリンゴンに続いて行くのはおもしろい裏話。
一方でそのバード・オブ・プレイの遮蔽を見抜くのが目視なのはどうにも…。
二作目でも星雲の中での船の移動が目視っぽかったけれど、今回はスクリーンに映る映像を見て「あそこ歪んでないか?」で見抜くって流石にSFとしてどうなの?
センサーを使った何とか波とかのSF用語で見付けないと余りにしょっぱかった。
見ていて意外だったのがエンタープライズの最後。
確かに、宇宙艦隊はもうエンタープライズを修理しないとは言っていたけれど自爆させてしまうんだ…とは思った。
この映画シリーズでは毎回スポックの死やエンタープライズの破壊とか何らかの意外性ある事をしないと気が済まないのか。
「新スタートレック」のギャラクシー級のエンタープライズDも映画「スタートレック ジェネレーションズ」で大破したけれど、映画でお馴染みのエンタープライズが壊れるのはここからの伝統になったのか。
ただ、これってドラマで何度も登場して色んな危機を乗り越えて来た船だから壊れてしまうのは衝撃だし哀しくもあるんだけれど、それをシリーズのまだ三作目のしかも初めの方でエンタープライズをぶっ壊す「スター・トレック BEYOND」って、やっぱりどうなの?と思ってしまった。
この映画、連続する話の真ん中で、主軸はスポックが復活するという分かり切ってはいる話なのであんまりおもしろくはないのだけれど、それ以外のいよいよ登場してきたクリンゴンやエンタープライズの最後等がおもしろくて、そっちでは見れてしまう映画でした。
☆☆★★★
関連:宇宙大作戦 シーズン1・2・3
スター・トレック(1979年)
スタートレックII カーンの逆襲
スタートレックIV 故郷への長い道