帰ってきた若大将
2015年01月23日 金曜日小谷承靖監督、加山雄三主演の1981年の映画「帰ってきた若大将」。
前作「若大将対青大将」から10年後に作られた若大将シリーズ18作目で最終作。
サザンクロス諸島自治政府の顧問を務めている田沼雄一は、テレビの取材で来ていた皆川純子と出会う。日本に戻って来た田沼雄一は再び皆川純子と出会い、皆川純子は青大将とも出会っていた。三人それぞれが自分の仕事でニューヨークに行き、そこで何時もの恋愛劇が繰り広げられる。
新しい方向性を示したのに結局グダグダしてどんどんつまらなくなってしまった社会人編が終わって十年振りの若大将なので初心に帰り、初期の様な加山雄三がモテて恋の三角四角関係で張り切り、スポーツに張り切り、仕事も張り切る様な展開になるのかと思いきや、シリーズの終焉をもたらした酷い駄作だった「若大将対青大将」の悪い部分を受け継いだこちらも酷い展開で、全く意味の分からない若大将シリーズの復活。
若大将の登場がパラシュートでスカイダイビングをしていたので、前作「若大将対青大将」でもスカイダイビングをしていたので、その設定を引き継いでいるのかと思いきや別に関係無く、若大将は南の島の何かしらの顧問という、今までの設定等関係無い何だかよく分からない仕事をしていて行き成りグチャグチャした設定な上、その後日本に戻って来ても大した活躍は無く、終盤にはニューヨークに場所を移してしまい話は散漫だは、この新しい若大将の設定を活かしているのか何なのか分からない展開で終始つまらない。しかも、若大将は最初に少し登場し、その後は青大将の話ばかりが続き、中盤の主役が青大将になってしまっているという「若大将対青大将」でもやってしまった「誰が主人公で、何を見せたいのか?」が非常に曖昧で絞り切れていないという悪い癖が再び出てしまっている。
終盤のニューヨークでのマラソンは、かつての大学生編の最後の試合の様に、ここが盛り上がり所、見せ場と言う事なんだろうけれど、マラソンで若大将が勝てば南の島の使節団とアメリカ大統領の補佐官が会えるという何だか分からない盛り上がらない話にしてしまったので、かつての様な試合に勝つという盛り上がりも一切無いし。
恋愛劇は若大将シリーズ特有のうっすい薄い恋愛劇で、ヒロインがアホでいけ好かないだけという特徴はしっかり出ているけれど、そのヒロインが大学生編の澄子さん役だった星由里子でなく、社会人編で交代した節子さん役の酒井和歌子でもなく、坂口良子に変更してしまい、何でお馴染みの星由里子や酒井和歌子を呼ばなかったのが意味不明。最早加山雄三と田中邦衛が出ているだけじゃん。
だけれど、田能久の懐かしの面々は登場。父親、妹、部活のマネージャーから若大将の妹と結婚して田能久を継いだ元江口も登場。しかし、おばちゃん役だった飯田蝶子がすでに他界していたそうで、劇中でももう七回忌を迎えているという事になっており非常に寂しい。妹役の中真千子は今までのまま少し歳を取った位でそんなに違和感は無いのに、江口役の江原達怡は歳を取ったのか、太ったのかちょっと今までの印象と違うし、何より父親役の有島一郎は明らかに歳を取っておじいちゃんになってしまっていて、十年の時を感じてしまった。
この田能久の面々に加え、新たに三十年程前に田能久で働いていたというおばあちゃんが登場したので、この面々で何か新たな展開を見せるのかと思いきや、若大将は南の島から日本に戻って来てもすぐにニューヨークに行ってしまうので特に活躍もないままで、ほぼ顔見せだけ。だったら新たな人物いらんじゃん。
何よりこの時44歳の加山雄三の若大将はキツイ。これまでのシリーズでも終盤のおっさん感は凄かったけれど、この映画では、もう今のおじいさんの加山雄三に近く、これで今までの様な若大将やられてもなぁ…。それに、「俺の空だぜ!若大将」で富士山の麓の自然を破壊してニュータウンを作る事を目指していた若大将が、見ず知らずの南の島の自然を守る為に働くという急激な変化があるのに何も説明も無いまま、「若大将はそういう人ですから!」とほっぽり出して進んで行くのも、もう若大将に付いて行けず。
一方の田中邦衛も、この時49歳で、50近いおっさんが今までと同じく「パパ?!」とボンボン役やられても二周三周したコントになってしまい、大分キツイ。それにシリーズで何度も澄子さんに強姦未遂を強行していた青大将が、若大将に対して「アメリカにゲイが多いのも分かる!」と体の関係を求めたり、終盤で突然自分に嫌気が差し、坂口良子に本当の事を言うという急な人物の変化も何だかなぁ…。最後の最後で良い奴になったけれど、今回の青大将がシリーズの中でも一番変だし、良くない。
それと音楽が酷い。やたらと音楽を場面場面でかけ、この音楽の演出が小寒く、その演出で安っぽく滑りまくっているコメディになってしまっている。「これまでのシリーズって、こんなに音楽酷かったっけ?」と思ってしまう位。
この映画、十年振りのシリーズ復活だけれど、若大将と青大将のキツさ。今までと関係無いヒロインへ変更。今まで活躍した田能久の面々がおまけ程度の扱い。スポーツに恋にというお馴染みの展開にはしているけれど、これまで以上に散漫でしょうもない展開。シリーズでは毎度「?の海外で撮影しよう!」という企画意図ばかりが先行して来た様な展開になってしまう海外撮影等々、シリーズの悪い部分ばかりを寄せ集めたかの様な酷い出来。「折角のシリーズ復活だから今までのお馴染みだったり、良い所を集めて作ろう!」という気概が見えず、「加山雄三の芸能生活20周年記念の為の復活で、海外でも撮影しましょう!」という企画だけが先行している様な映画。まあ、それも若大将シリーズの特徴でもあるのだけろうけれど。
結局この若大将シリーズは監督がどうのこうのよりも、一作目から脚本を書いていた田波靖男が酷かったという事なんだろう…。
★★★★★
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