俺の空だぜ!若大将

2015年01月21日 水曜日

小谷承靖監督、加山雄三主演の1970年の映画「俺の空だぜ!若大将」。
若大将シリーズ16作目。

今回の田沼雄一は建設会社に勤めており、自分の会社が実家付近のマンション建設を始める事になり、立ち退き交渉を任されたが上司のやり方とぶつかって会社を辞めてしまう。趣味がスカイダイビングだったので、飛行機の操縦者として働く事にする。あとは、毎度の青大将とのいざこざや節子さんとの恋愛話。

前作「ブラボー!若大将」から会社を辞めてしまうという展開がお約束になっているけれど、その辞める原因となった揉め事が長く描かれるので、そこから話が広がるのかと思いきや、そことは関係無い話で展開してしまい、今回の脚本は本当に酷い出来。
前半はマンション建設と地元の知り合いの立ち退きに挟まれ悩む若大将と、おもしろくなりそうな題材なのに、展開はグダグダして一向に進まず、しかも若大将の交渉と言えば銭湯に入り浸るだけで非常にしょうもない。若大将の人柄で土地を売り渡そうとする銭湯の親父もどうかと思うけれど、結局会社と揉めて辞めてしまう若大将なのに、これ以降このマンション建設がどうなったのか、若大将がいなくなった事で銭湯の親父は土地を売る事を止めたのかどうかとか、マンション建設に関する話は一切描かれず仕舞いと言う酷いお座なりな脚本。単に若大将が会社を辞める理由が必要だっただけで、問題のその後なんてどうでもよかったらしい…。
会社を辞めた後はスカイダイビングばかりの話になり、折角社会人編に移行したにも関わらず、大学生編でやっていた様な展開に逆戻り。しかも、太田という大学生の後輩の話が入るので、若大将が全然目立たず散漫なだけの展開に。
終盤で若大将の父親が勧めた先物取引で太田の母親が大きな借金を抱えて、何故かそれを補おうと若大将が悩むという訳の分からない展開にもなってしまい、結局若大将に何をやらせたかったのかが全然絞り切れておらず、それまでの前の展開なんてなおざり。

それに問題なのは若大将の人物像の変化。今まで若大将は気の良い好青年だったから何事も上手く行ったし、見ている方も見ていられたのに、今回は地上げに勤しみ、富士山の麓の何も無い自然の土地を破壊して家等を建設しようと企んでおり、今なら完全な悪者になってしまっている。しかも、これまでは青大将が別会社の社長だけれど若大将の会社と取引があり、友人と仕事仲間の間というおもしろくなる設定だったのが、今回は青大将の会社で若大将が働いているので青大将には上司として対応し、変に媚びた感じが出てしまう一方で、後輩の太田には偉そうな先輩面をしているので若大将というよりも時々自分のスター的高圧的態度を見せてしまう加山雄三感が物凄くあって、折角の若大将がいけ好かない感じになってしまっているのも痛い。

この映画、グダグダした展開と、前半でやっていた事を最後まで一切描かず仕舞いと言う酷い脚本で、シリーズ末期の迷走しかしていない感じと、適当にこなしている感じばかりで酷い出来。でも、シリーズはまだ続く…。

☆★★★★
 
 
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