ジュラシック・ワールド/炎の王国

2022年11月11日 金曜日

J・A・バヨナ監督、クリス・プラット主演の2018年のアメリカ映画「ジュラシック・ワールド/炎の王国(Jurassic World: Fallen Kingdom)」
シリーズ五作目で、ジュラシック・ワールドシリーズとしては二作目。

ジュラシック・ワールドが恐竜の暴走で崩壊してから三年後。
ジュラシック・ワールドがあったイスラ・ヌブラル島は噴火をし始め、残された恐竜達をどうするかが問題となっていた。
恐竜を保護しようとしていたクレア・ディアリングはロックウッド財団から恐竜達を別の島に移して人間のいない状態で保護する計画に参加して欲しいと依頼を受け、オーウェン・グレイディも誘ってイスラ・ヌブラル島へと赴いた。
しかし、ロックウッド財団の一団は恐竜を売りに出す為に捕獲し移送しようとしている事をオーウェン・グレイディ達は知ってしまった。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので改めて一作目から見始めて五作目。
一作目は非常におもしろく、その後二作目三作目と続いて行く度に尻すぼみ感一杯だったけれど、そこから十数年経っての続編「ジュラシック・ワールド」が余りにつまらなく、その続編のこの映画を見るのが結構億劫だったのだけれど見てみたら、やっぱり「ジュラシック・ワールド」よりもつまらなく、終始飽き飽きしていた。
前作の監督・脚本のコリン・トレヴォロウが今回は製作総指揮に回って脚本だけだけれど、やっぱり脚本はつまらないし、人物が薄いし魅力が無い。

「ジュラシック・ワールド」は恐竜テーマパークの開園と恐竜によって崩壊という一作目の「ジュラシック・パーク」のほぼ焼き直し感は、まあ新シリーズ一作目としてはそれしかないのだろうと思ったけれど、今回の「ジュラシック・ワールド/炎の王国」もテーマパークが崩壊して恐竜が自由に暮らしている島から外へと連れ出すという二作目の「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」のほぼ焼き直しになっている時点で既に発想が枯渇している感じがして乗って行けず。
初めから前作の登場人物達をかつてのジュラシック・ワールドに戻し、そこで恐竜に襲われ、一方財団は多くの人と物量で恐竜を捕獲して…って「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」と同じ設定で、なのでやっぱり財団が儲けようとする悪い人々で、アメリカに連れ帰った恐竜が暴れるという展開もほぼ同じで、その展開が初めから見え見えでワクワクも意外性も何も無い。
「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」で恐竜を運び出して制御が効かずに殺戮が起こった事も気にせず今回も恐竜が逃げ出し暴れるって、前作に続き、わざわざ同じ事して、また同じ失敗に陥るってジュラシック・ワールドシリーズの人達って馬鹿しかいないの?
「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」が結構いまいちだったのにそこに乗っかっている時点でおもしろくなる気はしないし、せっかく「ジュラシック・ワールド」として新起動させたのに同じ様な事をしていて新鮮味が無く、ジュラシック・ワールドシリーズに新たな何かを期待するのって間違っているのかと思ってしまった。

登場人物も魅力が無い。
オーウェン・グレイディは相変わらず背景も感情も見えて来ない。
前作からのヴェロキラプトルを操る事が出来るという設定が実はヴェロキラプトルを子供の時から育てていたからと前作で全然説明がなかった理由を後付けで描いてはいるけれど、そもそも何で元海軍軍人だったオーウェン・グレイディがまるで動物学者や飼育員みたいな事をしているのか、出来ているのかの説明は無いし、子供の時から恐竜が好きだったみたいな話も無く、恐竜との接点がまるで見えて来ない。
時々の行動もブルーを心配しているのか、していないのか分かりにくいし、そもそもオーウェン・グレイディの行動原理が分からないので主人公なのに気持ちが乗って行かない。
ブルーの事が行動原理の一つにあるっぽいけれど、最後にブルーとの会話らしきモノがあった以外はそもそものブルーとオーウェン・グレイディの接触自体が少ないってお座なりな脚本。

前作から変わらずクレア・ディアリングは只々うざい。
前作ジュラシック・ワールドの管理責任者で、責任者なのにインドミナス・レックスの管理が緩々でインドミナス・レックスが逃げ出し、それなのにお客を避難もさせずにどれだけの死傷者を出したのか分からない位間違いなく惨劇の原因の責任者なのに島に戻って来てもそれの悔いやトラウマは見せない人間的感情が欠落した人物で全くついて行けず。
始めの時点で特に責任を取ったりしていない様だし、かつての惨劇を周りから非難もされておらず、恐竜を保護しようと活動している時点でクレア・ディアリングって悲劇のヒロインなの…?とゲッソリしてしまった。
常に恐竜を助けようとしているけれど前作で死んだり怪我をして苦しんでいる人の事は一切頭に浮かんでいないの?とクレア・ディアリングの自分酔いに辟易していた。

クレア・ディアリングのやった事とか責任とかを描かない事もそうなんだけれど、前作も今作でも悪そうな人が恐竜に殺される所は描くけれど、それ以外の人が恐竜に殺された所を描かない狡さが嫌い。
普通の人々が襲われる部分を描かずに「恐竜との共存」とか言われても汚い部分や嫌な部分を隠して綺麗事を行っているだけにしか思えなかった。
恐竜でなくとも「動物との共存だ!」と言って動物園から草食動物や肉食動物を逃げ出させた所で警察等が全部捕獲するのが当たり前で、「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」でティラノサウルスが町中で暴れて人を殺しまくったから逃げ出した恐竜は警察だけでなく軍隊も派遣して全部捕獲か銃殺にしかならないでしょ。

そう思ったら、これってもしかして過激な環境テロリストを皮肉ったコメディなんだろうか?と思えて来た。
クレア・ディアリングなんかほぼそうだし、クローンだけれど命だ!は分かるけれど、恐竜なんて制御出来ずに本能のまま人間を襲い続けて来たのを描いているのだから外に出た恐竜が見境無く子供でも引きちぎって喰うのは当たり前で、それでも「恐竜との共存万歳!」ってやるんだろうか?
そこまでしてくれたらコメディ映画として分かりやすいと思うけれど。

恐竜保護グループの男女も、若い男性の方はギャーギャー騒ぐ昔からのホラー映画やパニック映画の典型的なウザい奴だし、若い女性はやたら高圧的で挑発的で、どちらも登場人物としての共感性や面白味も無くて、この二人もそういう典型をそのまましたパロディという事なんだろうか。
序盤ではこの二人は重要な登場人物っぽかったけれど中盤ではほぼ登場しないとか、やっぱりお座なりな脚本。

あと、前作に続きクレア・ディアリングを演じているブライス・ダラス・ハワードの演技が大袈裟と言うか、わざとらしいと言うか、凄く大根に見えて仕方なかった。
この人の演技も古い安いホラー映画に登場する女性を演じている無名な大根役者のパロディかと思えてしまった。

役者ではジェームズ・クロムウェルが出ていて、ジェームズ・クロムウェルって昔の映画でもおじいちゃんだったけれど流石に2018年では大分おじいちゃん。
でも、昔からおじいちゃんなので老け速度が非常に遅いとも思ってしまった。

ジュラシック・パークシリーズに出ていたジェフ・ゴールドブラムも出ていたけれど、ジェフ・ゴールドブラムもおじいちゃんになっていたなぁ。
ジェフ・ゴールドブラムは逆に1997年の「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」から二十年だから老け速度が早い気がした。

今回の目玉の恐竜インドラプトルも弱過ぎた。
前作のインドミナス・レックスはまだ「デカい」「凶暴」と分かりやすい敵恐竜だったけれど、今回のインドラプトルは中型位で、ティラノサウルスがいたりインドミナス・レックスを出しての次がこれでは見た目の強さが全く無い上にインドラプトルが暴れるのが洋館って最早何を見させられているのか意味不明。
演出も酷く、既にインドラプトルの全体像を見せているのに、その後にインドラプトル本体を見せずに雷に照らされた影だけが歩いて来るって何の意味があるんだろう?
これもホラー映画でのあるある演出をパロディ化した演出なんだろうか?

この映画、特に意外性も新鮮味もない展開に、共感性も面白味も無い人物達と見ていてもつまらなく、恐竜は本能のままに人間を襲うという部分をあえて見せずに恐竜は被害者で主人公達の行動は絶対的に正しいみたいな事をずっと見せられて、これは何かの洗脳映画か何かと思ってしまった。
これが「恐竜も生きている」とか「恐竜との共存」とかではなく、反省もしない馬鹿や無能に好き勝手させると大勢の人が死ぬだけという戦争や疫病に対する皮肉だとしたら分かるんだけれど、それは絶対にないんだろうなぁ。
恐竜映画としても一作目にあった恐竜が襲って来る恐怖やドキドキ感が全然無くてつまらないし、前作から製作側が好き勝手に遺伝子を弄った僕の考えた強い怪獣!が暴れる恐竜映画ではない怪獣映画になってしまって微妙さ満開。
もう、好き勝手に出来るのだから恐竜が火を噴いたり、サイボーグ化して制御したりとかまでやっても大して変わらない気がして来た。

☆★★★★
 
 
関連:ジュラシック・パーク
   ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク
   ジュラシック・パークIII
   ジュラシック・ワールド

ジュラシック・ワールド

2022年10月31日 月曜日

スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、コリン・トレヴォロウ監督・脚本、クリス・プラット主演の2015年のアメリカ映画「ジュラシック・ワールド(Jurassic World)」
シリーズ四作目。

かつて開設しようとしていたが恐竜達の暴走で失敗し閉鎖されたジュラシック・パークだったが、二十数年後には同じ島にジュラシック・ワールドとして開設され大勢の人が訪れるテーマパークとして人気を集めていた。
ジュラシック・パークでは新たな恐竜インドミナス・レックスの公開を控えていたがインドミナス・レックスが檻から逃亡。
檻内だけで育てられたインドミナス・レックスは外部の環境に興奮して他の恐竜を殺し続けながらジュラシック・ワールドへと近づいていた。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので一作目から順番に見て行き、三作目まではかつて見た事があったけれど、この四作目、新三部作以降は見た事が無く、しかも製作費も旧シリーズから大分増え、興行的にも大ヒットしたというので期待して見てみたけれど、これがまあつまらなく、これまでのシリーズの映画よりも遥に落ちるつまらなさだった。

まず始まりから恐竜が現代に生きているテーマパークのワクワク感が無い。
何でまず最初に恐竜を見せて掴まずに、テーマパークにこんなに大勢の人が来てますよを出して来るのかが分からない。
恐竜のテーマパークで見たいのってそこじゃないじゃん。
一作目では登場人物達が色々お喋りしている所に恐竜を出し、そこから科学的説明をして行くって上手い展開だったけれど、この映画では折角の掴みでは上手い見せ方も無く、何だかよく分からないけれど子供達がジュラシック・ワールドに行く所から始まって、結局子供達がジュラシック・ワールドに行った動機とか理由もよく分からないままだったし掴みが全然だった。

今回の目玉のインドミナス・レックスも全然よくなかった。
これまであくまで恐竜を扱って来たのに、インドミナス・レックスは遺伝子を弄りまくって便利な怪獣でしかなくて、これじゃあない感が物凄い。
檻の外に出たと思わせる為に爪痕残したり、覚えていたからだという理由で体内のGPS装置を肉ごと取り出したりとほぼ人間的な発想をする賢過ぎで、赤外線を見るとか擬態までするとか最早怪獣になっており白けまくり。
わたしの感覚では、謎の異星生物の遺伝子組み込んで変な触手が出るとか、トランスフォーマーの遺伝子組み込んで恐竜から人型に変身するとかと変わらない位の恐竜じゃない感になっていた。

これまでのシリーズのレギュラー的なヴェロキラプトルも何だかなぁ…。
人間に育てられたら人間の言う事を聞くというのは、まあ遺伝子操作されているからもあるんだろうと何となくは理解したけれど、終盤でヴェロキラプトル達が放たれた時には周囲で光を照らしまくり轟音を発しながら高速移動するバイクや自動車に囲まれてもヴェロキラプトル達は全く気にせずインドミナス・レックスに直進する素直さな上、いざインドミナス・レックスに出会ったらインドミナス・レックスにヴェロキラプトルの遺伝子が足されているからという理由でヴェロキラプトルとインドミナス・レックスが会話し、ヴェロキラプトルはインドミナス・レックス側に付くとか馬鹿みたいな展開。
なのに最後にはヴェロキラプトルはインドミナス・レックスを襲ったり、でもティラノサウルスは襲わないとか、もう只々脚本に都合の良いヴェロキラプトルで、このヴェロキラプトルに感情移入させよう感が見え透いてしまって白けてしまった。

どの登場人物達もこれまでのB級アクション映画やディザスター映画等で散々見て来た様な薄っぺらい人物ばかりで興味を引かない。
主人公のオーウェン・グレイディはとにかく強くて賢くて、だけれど背景が全然見えて来ないという便利な主人公で、元海軍の軍人だったとは出て来るけれど、その海軍仕込みの何かが発揮される訳でも無く、知識や行動原理は動物学者や飼育員的で、ヴェロキラプトルを手名付けているまでになっているけれどそれはどうして?には一切説明はなく、元海軍軍人設定って必要だった?

管理者のクレア・ディアリングはこの手のアクションパニック映画に有り勝ちな危険察知能力が低く、より騒ぎを大きくしたりする人物で、しかも2010年代の映画で恐竜が来たらギャーギャー騒ぐという古典的なホラー映画に有り勝ちなうざい人物をやってしまっていて興ざめしかない。
しかも、初めは恐竜は数字として見てなかったのに死にかけた恐竜を見たら突然泣き出し、でも翼竜が襲って来たらためらわず銃で撃つし、自分達で作り出したインドミナス・レックスは凶暴で襲って来るのでティラノサウルスをぶつけて殺し合いさせても特に何も思わないって、この描き方何?
こういうその場の一時的な気持ちであっちこっちにぶれる人への皮肉?…でもないのか。
結局クレア・ディアリングの姉である子供達の母親との関係性や子供達との関係性も何だか分からないままで、こういう何の決着も見せない入れておいただけの話って酷い脚本。
それに加え、演じているブライス・ダラス・ハワードが下手と言うか大袈裟と言うかで見てられなかった。
普段海外映画の役者って演技が下手なのかはいまいち分からないけれど、このブライス・ダラス・ハワードの演技ってパニック映画だからなのか、わざとなのかいちいち大袈裟、わざとらしい演技ばかりで大根にしか見えなかった。

それにこの主人公二人の恋愛劇も見てられない。
オーウェン・グレイディが翼竜に襲われている所をクレア・ディアリングが助け、そこからキスとかゲロ吐きそうになった。
これって、この手の映画でのあるあるやクリシェとして笑いの演出として入れている訳ではなく、これを本気でやっているんだよね?
最後も「一緒にいよう!」ではなく、「これ見ろよ!これが俺達のやった事だぞ!お前が真面な管理も出来ず、あんな怪獣を作り出したからどれだけ人が死んだんだ!?」でオーウェン・グレイディがクレア・ディアリングを一発ぶん殴って爽快に終わって欲しかった。

あと、ヘリコプターが操縦出来るCEOが出て来た時点でこのCEOはヘリコプターで死ぬんだろうなぁ…と思ったし、ヴェロキラプトルを手懐けられて兵器化しようとしていた人はそういう話が出て来た所でヴェロキラプトルに喰われて死ぬんだろうなぁ…と思ったし、ここまでそのままな安っぽい展開に辟易してしまった。

CGに関しても、やっぱり動物や生き物のCGって動かし過ぎ。
他の映画でも生き物のCGはそうなんだけれど、やたらと全身のあちこちが常にヌメヌメと動き、巨大な恐竜でも有り得ない素早さで動きまくるから如何にもCGアニメーターが作った感ばかりで現実味が無い。

この映画、これまでのシリーズよりも稼いでいるけれどシリーズ最低作。
やっぱり脚本がつまらない。
これまでのシリーズのおもしろそうな所を集めているけれど、それがこれまでよりもおもしろくなっていないし、恐竜はただの襲って来る怪獣でしかないし、これまでのシリーズで散々恐竜は危険で現代に蘇らす事の問題を描いていたのにそれが何にも役に立っておらず、そこの教訓的なモノも全く無いし、特に三作目ではアメリカ本土でティラノサウルスが暴れて人が死にまくったのにジュラシック・ワールドが開設出来ている訳は都合良く一切無視しているしで、ジュラシック・パークシリーズの遺産を使って予算をかけてC級パニック怪獣映画作りました位にしか思わなかった。
SFや恐竜のワクワク感や恐怖を描いたのがジュラシック・パークシリーズだったけれど、最早ジュラシック・ワールドなのでジュラシック・パークシリーズとは別のパニック怪獣映画として、そういう映画として振り切ったとしたから問題は無いのかもしれないけれど、それでもこれまでの典型やクリシェに面白味を感じなかった。

☆★★★★
 
 
関連:ジュラシック・パーク
   ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク
   ジュラシック・パークIII
   ジュラシック・ワールド/炎の王国

ジュラシック・パークIII

2022年10月28日 金曜日

スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、ジョー・ジョンストン監督、サム・ニール主演の2001年のアメリカ映画「ジュラシック・パークIII(Jurassic Park III)」
シリーズ三作目。

前作から四年後。
研究資金に困りながらも恐竜の化石の発掘調査を続けていた古生物学者アラン・グラントの下に会社社長ポール・カービーが訪れた。
ポール・カービーは妻と世界中を周っており、恐竜がいる島への飛行の許可を取ったのでアラン・グラントに同行してガイドをして欲しいと言われた。
研究資金を望むだけ出すと言われアラン・グラントは教えている学生ビリー・ブレナンと共に飛行機に同乗した。
島の上空に着くと上空からの観光だけだったはずが飛行機が島に着陸。
ポール・カービーは実は小さな塗装屋だったが彼の息子が島付近でパラセーリング中に島に不時着し、息子を救出する為に恐竜の専門家アラン・グラントを連れて島へとやって来たのだった。
かつてサイトBと呼ばれたその島では作り出した恐竜のリストに載っていない恐竜もいた。

シリーズ一作目の「ジュラシック・パーク
二作目の「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」と続けて三作目も見てみたけれど、二作目が本伝的続編ではなく一作目のその後を補足した外伝感で一杯で内容的にも大分いまいちで、この三作目は更に二作目を補足する外伝感が一杯な上、二作目の焼き直しみたいな内容になっていて、二作目よりもまだおもしろくはあったけれど一作目のあのワクワク感や興奮は無かった。

一作目でジェフ・ゴールドブラムが演じたイアン・マルコムの役の立ち方に比べて中盤以降の活躍が無かったからなのか二作目ではイアン・マルコムが主人公になり、一作目で主人公だったサム・ニールが演じたアラン・グラントが全く出て来ず、それもあって外伝感があった二作目から、やっとアラン・グラントが戻って来ての一作目の続き感があるのに、内容は二作目でやったサイトBに行く事になり、サイトBでは恐竜達が自由に暮らしている中で脱出方法が無くなったので恐竜と対峙しながら何とか脱出するという同じ事をやっており、何故似た様な話をもう一度するの?と非常に疑問のまま見ていた。
展開はアラン・グラントが恐竜の知識を使いながら危機回避して行く分だけまだ二作目よりもおもしろかったけれど、スピノサウルスは一作目のティラノサウルスとの初遭遇の緊張感や興奮は無いし、目の前に高い柵がある中で直ぐ後ろにスピノサウルスが現れて逃げないといけないという一作目と似た様な状況が出て来たけれど、今回は柵に空いた穴から逃げるだけというしょうもない展開とか、小慣れたはずの三作目なのに一作目を超える様なおもしろい場面が無かったのは痛い。

ちょっとおもしろかったのが母親のアマンダ・カービー。
今までのシリーズで登場した女性は学者で冷静に対応する人が多かったのに、今回の女性のアマンダ・カービーはギャーギャー騒いで場を乱し、プテラノドンの檻の扉をキチンと閉めなかったのでプテラノドンが外に出て自由になってしまうという最後まで非常にうざい人物になっていて、何で今更こういう人物設定にしたのか?と興味が出た。
今回もちゃんと子供を入れて子供対応していたけれど、このアマンダ・カービーって何対応だったのだろう?

あと、一作目でアラン・グラントの同僚で恋人だったエリー・サトラーが登場していたけれど、演じているローラ・ダーンって一作目の時からそんなにパッとした感じではなかったにしろ、一作から八年後のこの映画とは言え、何か急に老けたと言うか、輝きが減ったと言うかで、出て来た時にあれっ?感が強かった。

後気になったのはセットでの撮影の多さ。
今までのシリーズだと野外撮影が多かった様に思えたけれど今回はセットでの撮影が結構多く、明らかなセット撮影の場面から急に外での撮影になるので雰囲気が繋がっていなくて見ていても凄く気になった。
多分二作目が評判的にも良くなかったので製作費が落ちる事になったからのセットの多様なのかな?と思ったけれど、調べてみたらシリーズ三作の中でこの映画が製作費が一番高い様で、何故セットでの撮影で映像的に安っぽい感じにしてしまったのかは謎。

この映画、やっぱり一作目のおもしろさが抜群だった分、一作目と同じ主人公の続編となるとどうしても一作目と比べてしまうけれど、大分いまいちだった外伝的二作目の焼き直しの様な内容では一作目を超える事は無く、二作目よりも少しおもしろいかな?位にしかならないのが非常に残念。
何でわざわざ二作目の焼き直しをしたんだろう?
もっと別のSFした恐竜物が見たかった。

☆☆★★★
 
 
関連:ジュラシック・パーク
   ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク
   ジュラシック・ワールド
   ジュラシック・ワールド/炎の王国

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク

2022年10月26日 水曜日

スティーヴン・スピルバーグ監督、ジェフ・ゴールドブラム主演の1997年のアメリカ映画「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク(The Lost World: Jurassic Park)」
シリーズ二作目。
マイケル・クライトンの小説「ロスト・ワールド -ジュラシック・パーク2-」が原作。

前作の事件から四年後。
数学者イアン・マルコムはジュラシック・パークを開設しようとしたジョン・ハモンドに呼ばれた。
ジョン・ハモンドによるとジュラシック・パークを作っていた島とは別に恐竜を飼育していたサイトBと呼ぶ島があり、そこでは現在も恐竜が生き残っており、恐竜や島の保護の為にイアン・マルコムに調査に行って欲しいと依頼するがイアン・マルコムは乗り気ではなかった。
しかしイアン・マルコムの恋人サラ・ハーディングが既に島に行っていると知った為彼女を助けにイアン・マルコムは島へと向かう。
島では多くの恐竜が生き残っており、イアン・マルコム達は恐竜達を捕まえている集団に出会う。
彼らはジュラシック・パークの失敗で会社の役員を解任されたジョン・ハモンドに代わり会社の実権を握った彼の甥ピーター・ルドローが率いる一団で、ピーター・ルドローは会社の立て直しの為に恐竜をアメリカ本土に連れ帰って新たなジュラシック・パークを建設しようとしていた。

一作目の「ジュラシック・パーク」に続けて見たけれど、一作目が絶滅した恐竜を現代に蘇らしてジュラシック・パークとして見せるというワクワク感に恐竜が襲って来るサスペンスアクションもあり、恐竜を現代に蘇らす危険性等をちゃんと描いておもしろい題材も扱うSFをしていて非常に良く出来た映画だった分、この続編はただ恐竜が襲って来るばかりのB級モンスターパニック映画になってしまっていて余りおもしろくなかった。

続編なので一作目とは違う展開にしなくていけないのは分かるけれど、それにしても内容が薄い。
ただただ次々と襲い掛かる恐竜から逃れるだけの話が延々と続き、島からやっと脱出したと思ったら今度は町中でティラノサウルスを暴れさせるという安っぽく、しかも今までの雰囲気と全然違う事をやってしまい、何か尻すぼみ。
この最後の町での場面は見せ場の為の付け足し感が凄く、一作目にあった「ジュラシック・パーク」のおもしろさを変な風に勘違いして続編で拡大公開した感じでがっかり。
以前見た時は二匹のティラノサウルスが車両を襲う所とか、高い草むらで恐竜が襲って来る所とか、最後の町中のティラノサウルスの所とか、もっとおもしろかった気がしたのだけれど、一作目の「ジュラシック・パーク」のおもしろさがちゃんと恐竜を科学的に、生物学的に説明しながら困難に対応して行く所だった分、ただのモンスターが襲って来るだけのパニック映画になってしまっているからおもしろくなかったのか…?

それに一作目で活躍したサム・ニール演じたアラン・グラントが今回は主人公ではなく、一作目で始めは個性が強くて良い感じだったけれど足を怪我した中盤以降全然活躍しなかった分なのか続編で主人公となったイアン・マルコムの時点で非常にサイドストーリー感が強いけれど、一作目でのイアン・マルコムはもっとふざけていてチャラかったのに今作では娘を心配する父親という前作とは全然違う人物になって一作目のイアン・マルコムの良さが全く無くなってしまい、しかもイアン・マルコムが大して活躍しないというのも主人公として薄い。
前作ではアラン・グラントを中心にして他の人物も非常に立っていたのに、今作では主要登場人物達を結構満遍なく描く分イアン・マルコムの存在が薄くなり、かつ他の人物も深く描かないのでどの人物も薄くなってしまっている。
恋人のサラ・ハーディングは初めは恐竜に対して熱心な学者だったけれど、それ以降その知識を活かして恐竜から逃れる事も無くただ逃げ惑うだけの人だったし、カメラマンのニック・ヴァン・オーウェンやティラノサウルスを狩る為だけに来たローランド・テンボは何か過去があったりする風なんだけれど何も描かれずよく分からない人で終わってしまったし。
ニック・ヴァン・オーウェンって、序盤はそこそこ重要人物風だったけれど中盤以降活躍は大して無いし、終盤の町での話になると完全に忘れ去っていたし。
イアン・マルコムの娘も、娘を出して来たから恐竜に襲われる中で何かしらの親子関係のもつれや進展があるのだと思ったのに何も無く、やっぱり町での話になると完全に忘れ去っていたしでこの娘を入れる必要性ってあった?
一作目では子供を導入した事で非常に上手く主人公の変化や子供目線による子供向け観客対応も出来ていたから続編でも子供を入れたけれど、それが上手く行かなかったって事?

CGは前作よりも良くなっていたと思うけれど、それでも恐竜の質感とか、ぼやけて変に明るい感じとか、流石に時代なんだろうけれど前作同様CGよりもアニマトロニクスの方が当然人物としっくり来るし動きも良い。

この映画、一作目が色々良く出来ていて非常にワクワクしておもしろかったのに、その一作目と同じ監督、脚本家なのにここまで良くない出来になってしまうのってどうしてだったのだろう?
人物達もどの場面も印象に残りそうなのに全然残らず、見終わると一作目の「ジュラシック・パーク」のおもしろかった部分から来る、そこじゃない感ばかりで色々外し過ぎ。

☆☆★★★
 
 
関連:ジュラシック・パーク
   ジュラシック・パークIII
   ジュラシック・ワールド
   ジュラシック・ワールド/炎の王国

ジュラシック・パーク

2022年10月22日 土曜日

スティーヴン・スピルバーグ監督、サム・ニール主演の1993年のアメリカ映画「ジュラシック・パーク(Jurassic Park)」
マイケル・クライトンの小説「ジュラシック・パーク」が原作で、マイケル・クライトンも脚本に入っている。

恐竜の化石の発掘をしていた古生物学者アラン・グラントと古植物学者エリー・サトラーの下に発掘資金を提供しているジョン・ハモンドがやって来た。
ジョン・ハモンドは開館する予定のテーマパークに関して出資者達への補償として恐竜の専門家であるアラン・グラントと古代植物の専門家であるエリー・サトラーの意見をもらえれば今後の研究資金を保証すると持ち掛け、二人を南米の島へと連れて行く。
そこでは古代の蚊が吸った恐竜の血液からDNAを取り出して恐竜のクローンを作り出して放し飼いにしているジュラシック・パークを準備中だった。
アラン・グラントとエリー・サトラーは数学者イアン・マルコムや弁護士やジョン・ハモンドの孫二人と共にジュラシック・パークを回るが、途中で園内の制御システムが止まり立ち往生し、そこにティラノサウルスが現れた。

「ジュラシック・パーク」は大分前に見た事があったけれど、Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので一作目からシリーズを見てみるかと思い見てみた。
改めて見るときっちりと説明を入れながらクローン等の科学技術への問題定義も入れつつ、恐竜が襲って来るアクションサスペンスになっていて抜群に上手いし、非常におもしろい映画だった。

始まりからちょこちょこと恐竜の存在を匂わせながら主要登場人物達の人物説明も見せつつ徐々に話を進め、島に着くと一旦恐竜を見せてからその恐竜がどうやって誕生したのかをジュラシック・パークでのツアーとして見せて、それで映画を見ている人への説明にもなっているし、実際のジュラシック・パークに踏み込んで行っても中々恐竜が登場させずにじらしておきながら一気にティラノサウルスで攻め、そこからはパニック映画やサスペンス映画として次々に何かが起こって最後まで一気に畳み掛けるという展開で、構成や演出がまあ上手い。
確か昔見た時も楽しく見ていたと思ったけれど、今見てもこのワクワク感は凄い。
やっぱり恐竜が今いたらをちゃんと真っ直ぐにすると、この映画の学者ではないけれど大人でも相当ワクワクするのが見ていてもそのまま感じる様なワクワク感。
始めに少し恐竜を出しておいて、その後は暫く出さず、そこからのティラノサウルスへとの持って行き方は興奮させ方が上手い。
ティラノサウルスはまずは足音だけ。
しかも、歩行の振動でカップに入った水に波紋が出来るという映像で見せる演出は恐怖感満載だし興奮するしでこれは大発明。
他の恐竜達も怪獣ではなく現実に近い生き物として描いていて、ちゃんとSF映画としてもおもしろい。

登場人物達もちゃんと皆が立っている。
アラン・グラントやイアン・マルコムは癖があるけれど科学的好奇心や興味が旺盛で興奮しまくりで学者の方が子供みたく、一方で恐竜を現在に蘇らせた事には非常に懐疑的という部分も見せつつ、アクション映画の主人公になっているし、ジョン・ハモンドも基本的には悪い人ではないんだけれど…そうなんだけれど…と責め切れない人になっていたし。
役者陣は今見ると、ああサム・ニールだ。ジェフ・ゴールドブラムだ。サミュエル・L・ジャクソンだってなるけれど、この当時ってまだ皆それ程一般的な知名度が高くはなかった様な気がするけれど、ちゃんと個性が強いよなぁ。
サム・ニールは升毅に見えて来るし、ジェフ・ゴールドブラムはまだ「インデペンデンス・デイ」前だから「ザ・フライ」の方か。
改めて少し驚いたのはサミュエル・L・ジャクソンが出ていた事。
サミュエル・L・ジャクソンもまだ脇役時代なのか。
主人公は大人達だけれど、ちゃんと子供達も登場して所々で子供達が主人公になる場面もあり、子供からの目線も入れてしっかりと子供向け対応もしていて、興行としてのマーケティングもしっかりしている。

CGに関しては、この当時はこの映像は凄い進歩だったし凄く現実味があった様に覚えているけれど、今見ると流石に安っぽくなってしまっている。
人との合成はいまいち浮いているし、恐竜のCGの表面の質感もテラテラした感じでCG感が強い。
逆にアニマトロニクスの方の凄さの方に目が行ってしまった。
現実にあるアニマトロニクスなので当然実際の映像との馴染み具合は抜群だし、恐竜の質感や動きも抜群に良い。
今も昔も恐竜だけでなく、その他の生き物もCGで作るとやたらと動かしまくって現実の動物の動きをしていない位やり過ぎている事がよくあるし、体の変なウネウネ感がどうにもCG感が強くて好きじゃないんだけれど、アニマトロニクスだとそこら辺も無くてアニマトロニクスの方が全然良かった。
このアニマトロニクス、ティラノサウルスは実際の大きさのアニマトロニクスを作ったって凄いよなぁ。
この映画でアニマトロニクスを担当したスタン・ウィンストンの死後に設立された学校スタン・ウィンストン・スクール・オブ・キャラクター・アーツのYouTube公式チャンネルで撮影現場でのティラノサウルスのアニマトロニクスの映像を公開しているのだけれど(「JURASSIC PARK Animatronic T-Rex Rehearsal」)」、これが本当にこの大きさで作って操作しているのに驚きだし、動きも本当に生きている感じなのも凄い。
それに、この映画では恐竜は初めはストップモーション・アニメーションで作られる予定だったのがCGに変わり、それでストップモーション・アニメーションを担当するはずだったあのフィル・ティペットが落ち込んだ…けれど、今までストップモーション・アニメーションで培って来た生き物の動きを熟知するフィル・ティペットが戻って恐竜の動きを教えたり、ヴェロキラプトルの動きや映りや画角もフィル・ティペットが考えたらしいという話とかも凄くしびれる話。

それとやっぱりジョン・ウィリアムズは天才。
あの音楽だけで盛り上がる事半端無い。

ただ所々引っ掛かる部分もあり、途中でトリケラトプスが六週間毎に具合が悪くなるという場面があったけれど、これが何にも繋がらず、結局このトリケラトプス問題は何だったの?
ティラノサウルスが初めて登場した時は雨が降って道がぬかるんでいたにも関わらず物凄い大きな足音と振動だったのに、最後のビジターセンターで二匹のヴェロキラプトルに追い込まれた時に行き成り登場したティラノサウルスは一切無音で直ぐ側にいて誰も気が付かなかったとか、最後のジャジャーン!という狙いが過ぎてちょっと覚めてしまったし。
それと始めは台詞も多く活躍場面もあったの怪我して以降全然活躍無しというイアン・マルコムの変な配分は何だったのだろう?
まあ、ここで活躍しなかった分、続編の二作目「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」ではアラン・グラントを差し置いてイアン・マルコムが主人公になっちゃったし。
そもそも恐竜のテーマパークの視察にカオス理論の数学者を連れて来た意図がよく分からず、カオス理論で恐竜の繁殖の可能性やジュラシック・パークの危うさや問題点を説明したかったという製作側や観客側に対する必要性だけだったのだろうか?

この映画、恐竜が実際に今復活したらをちゃんと描きつつ、人間対恐竜のアクションサスペンスとして最後まで一気に見せ切り、まあ良く出来た、非常に楽しい映画。

☆☆☆☆★
 
 
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