眠狂四郎女地獄

2013年11月20日 水曜日

市川雷蔵主演でシリーズ化した時代劇映画の1968年の第十作目「眠狂四郎女地獄」。

馬で走る武士が眠狂四郎の目の前で叩き斬られ、死に際に受け取った手拭いは佐伯藩の城主の娘に関する密書だった。眠狂四郎は旅の途中でその娘と偶然出会い、佐伯藩の家老同士の権力争いに巻き込まれ、命を狙われて行く。

今回は題名の「女地獄」の通り、次から次へと眠狂四郎の前に女性が現れては消えて行くという展開で、その女性の仕掛ける罠を次々と見破り斬り去って行く眠狂四郎がおもしろい。眠狂四郎の直ぐ女性を抱くという習性をついた罠が基本で、中にはヘタヘタと笑ってしまう様な罠まであるし、コメディ的で楽しい。
その一方で、脇の剣士達が濃く、男臭くもあって良い。雇われ剣士として決して深入りしないような立ち振る舞いで、命を狙うと言うよりは剣士として眠狂四郎に興味がある成瀬辰馬役の田村高廣。奔放で人懐っこい浪人野々宮甚内役の伊藤雄之助と、この二人の個性がビンビンに立っていて、市川雷蔵を喰いかねない程の存在感。この二人はそれぞれ相対する家老側に付き、眠狂四郎を狙う立場ながらも眠狂四郎と不思議な友好関係、好敵手な関係になっていて、決して悪人でもないのが良い。特に伊藤雄之助は周りが時代劇演技の中、一人現代劇的な演技をしており、その演技が顔はおっかないのに物凄く可愛らしさも持った人物になっていて、ある意味見慣れた眠狂四郎よりも伊藤雄之助演じる浪人の方に興味が行ってしまう。市川雷蔵と伊藤雄之助の直接対決までの刀を買ってからの幕切れのさせ方や、伊藤雄之助の結末とかも、単に斬ってお終いではなく、笑いや哀愁を含ませていて、そこでも物凄く良い役になっている。
この映画は、ハードボイルドで相容れる事の無かった「三匹の侍」といった感じ。

眠狂四郎シリーズなので全体的に無常観やニヒルさは満天だけれど、始めの題字の所から音楽が西部劇風で始まり変な西部劇感があったり、次々繰り出される女性の罠や伊藤雄之助の存在で結構笑いのある軽い感じもありで、非常におもしろい映画になっている。前半のそのスパイ映画的な罠の軽い感じの楽しさのあるおもしろさから、後半の因縁と無常さへと行き、その展開だからこそのグッと迫るモノを出している上手さ。それに市川雷蔵、田村高廣、伊藤雄之助の三人がこれだけでお終いというのは勿体無い過ぎる程、この三人の関係性や存在感が光っていて、もっともっと見たいと思わせる映画だった。

☆☆☆☆★
 
 
関連:眠狂四郎殺法帖
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