眠狂四郎無頼剣

2013年11月19日 火曜日

市川雷蔵主演でシリーズ化した時代劇映画の1966年の第八作目「眠狂四郎無頼剣」。

江戸の油問屋に賊が入ったが、これは大塩平八郎の門下の者の仕業だった。それは大塩平八郎が研究していた油の権利を奪った油問屋達とその背後にいる者達への復讐の為だった。眠狂四郎は偶然彼らと出会うが、眠狂四郎は大塩平八郎の息子と自分が似ている事を知った。眠狂四郎をつける女性とも出会い、大塩平八郎の息子の無念を晴らそうしている事を知り、彼女の為にこの陰謀に巻き込まれて行くのだった。

市川雷蔵と天知茂というニヒル対決の構図がはっきりし、そこに過去の復讐を巡る話を持って来ており、全体的に暗澹たるハードボイルドな時代劇になっていて、非常に良い雰囲気。天知茂側も決して悪人ではない復讐者として描かれ、この白黒つかない感じが良いのに、終盤で急に天知茂が単なる悪人になってしまうのは話的には勿体無い。もっと上手い対立のさせ方もあっただろうに。
今回の眠狂四郎は、物事に関心が無いという様な感じや女性を使って捨てる様な冷酷さが無く、常に優しい。雰囲気的にはニヒルなんだけれど、ちゃんと正義の剣士。

今回は画面作り、構図が良い。すだれや障子の間から見える向こうの人とか、正面中央に何か置いて、それ越しの画とか、草木を別けて前進するカメラとか、見入る様な場面が多い。それに編集も、短い顔の寄りのカットを早く入れたりと、非常に流れも良いし「おっ。」と思う場面もあり、同じ三隅研次が監督した五作目の「眠狂四郎炎情剣」も同じ様に感心したけれど、この三隅研次監督作が好き。「眠狂四郎炎情剣」でも最後のチャンバラは寺の上階でだったけれど、今回も天知茂との対決は屋根の上という一風変わった場所で行い、画的にもおもしろくしているし、足場が悪いというのもあるし、最後の大火事へのフリでもあるしで、非常に上手い所を見つけた感じ。

今回の宿敵天知茂は物凄く前面に出て来て、天知茂が眠狂四郎を喰う様な勢い。市川雷蔵が黒い着物に対し、天知茂は全身真っ白な着物という物凄いスカした格好。しかも、リボルバー式の拳銃を持っているのだから、まるで明智小五郎。まあ、明智小五郎はもっと後だけれど。
二作目、四作目に続き、またもや藤村志保が出演しているけれど、他の役者でもこれまであった通り、やっぱりこれまでの映画とは関係無い人物を演じている。ここら辺はこの時代の映画のシリーズモノのいい加減さ。

眠狂四郎のニヒルさは減ってはいるけれど映像や編集も非常に良いし、何より天知茂の存在が大きく、天知茂がいる事で映画の面白味を上げている。

☆☆☆☆★
 
 
関連:眠狂四郎殺法帖
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