眠狂四郎女妖剣

2019年04月01日 月曜日

池広一夫監督、市川雷蔵主演の1964年の映画「眠狂四郎女妖剣」。
シリーズ四作目。

眠狂四郎は二人の女性の土左衛門が流れ着いたのを見付ける。
その二人は大奥の女中で、大奥の菊姫が阿片を与えて殺していた。
その阿片は密貿易で儲けている豪商備前屋が更なる儲けの為に大奥まで手を伸ばしていた為だった。
眠狂四郎の元に一人の隠れキリシタンがやって来て、浜松にいるキリシタンのびるぜん志摩を救って欲しいと頼まれる。
興味の無かった眠狂四郎だが、びるぜん志摩は眠狂四郎も知らない自分の出生を知っていると言われ、助けを求めた隠れキリシタンは備前屋や菊姫の策略によって殺されたので浜松へと向かった。

このシリーズは何作か見ているけれど、確かに変わらず市川雷蔵はカッコ良いけれど、話は結構微妙。
それぞれの話の繋がりが悪いし、投げっ放しのままで終わってしまう事もあり、脚本がいまいち。

初めに菊姫の悪さを描いて中々菊姫の顔を写さないという展開だから、菊姫が話の主軸になり、最終的な敵が菊姫かと思いきや、菊姫の存在は大していらないという展開に「?」。
話は眠狂四郎の出生に集中するので菊姫の悪逆非道がどっかに行ってしまい、菊姫は結局どうなったのか?とかの話も無いまま、最終的には全く触れられずに存在が忘れられてしまって、何でこの物語に菊姫が必要だったのかがさっぱり分からないまま。

備前屋も、あれだけ追手を送り最大の敵として描き、最後には飛び道具もあると見せておいて帆が落ちて来て一瞬で死んで終わりだし、凄腕の宿敵として振りに振っていた陳孫との最後の戦いは中々白熱したけれど、突然陳孫が海に飛び込んで逃げ出したので、再び眠狂四郎の前に現れて最後に一騎打ちをするのかと思っていたのに、それ以降全く登場しないままで終わってしまって、何じゃこりゃ?
主要人物達の投げっ放しジャーマンったらない。

あと、よく分からない場面も多々。
小鈴に兄を救えると捕まったバテレンと関係を持たせたけれど、それが実は嘘で兄は処刑されるというやり取りは何で小鈴とバテレンにそんな事させたのかが分からない。
眠狂四郎から見ると哀れな小鈴と兄を見ての行動となるのは分かるけれど、役人側からだと「聖職者と言えども、高々そんなもんじゃん。やーいやい!」と言いたかったからだけ?

眠狂四郎が偶然通った村で偶然嫁入り行列に出くわし、それについていた巫女に誘われて行き、その巫女は実は備前屋と繋がっていたけれど、この巫女は元からその村にいた巫女っぽいけれど何で備前屋と繋がっているのか?とか、買収されたのか?嫁入りも偶然ではなく眠狂四郎が来るのを見計らって巫女が仕掛けたのか?とかの説明が無いので物凄くモヤモヤしたまま。
その後も備前屋の手下はやたらと眠狂四郎の先に回って罠を仕掛けているし、何故か菊姫は眠狂四郎の行動を知っているし、備前屋との繋がりがないだろうある藩の手下達は眠狂四郎の行動を知っていて呼びに来ているし、眠狂四郎って体の何処かや着物にGPSの発信機を付けられているのかと思うしかない位行動がバレまくっているのは何?
直ぐ近くに隠れている追手は気付いて切り殺すのに、尾行されている事には無頓着だし。

この時の芸名が城健三朗の若山富三郎が演じている陳孫って眠狂四郎と初めて顔を会わせた時にお互い知り合いなので何で?と思ったら、一作目の「眠狂四郎殺法帖」で登場していたとは知らず。
と言うか、「眠狂四郎殺法帖」の内容をさっぱり覚えていないので、調べてみて初めて知った。
この映画が登場二回目という事は、陳孫のあの締まらないままの海に逃げての退場も次回作以降の映画での再登場を考えての振りだった可能性があるのか。
しかし、その後若山富三郎が干されたらしかったり、大映から東映に移籍した為に眠狂四郎シリーズに出演する事が出来なかったのかもしれず、結局これ以降眠狂四郎シリーズには陳孫は登場しないまま。
その為陳孫って一応は強い宿敵なのに、最終的には逃げ出したまま行方をくらませたしょっぱい奴になってしまったのは勿体ない。

話はいまいちだけれど、映像は流石に綺麗だし上手い。
この映画から眠狂四郎が円月殺法で刀を回すと残像が残るストロボ撮影が使われたそうだけれど、これはおもしろい。
ただ、最後の陳孫との決戦で使うのかと思ったら使わず仕舞いで、後から思い返すと「円月殺法って、そう言えばあったな…」という感想にはなってしまう。
他にも、やたらと奥行きのある大奥の廊下とか、夜のチャンバラ場面の照明の当て方とか、二人の会話場面では二人が画面の左右に離れて座っていたり、二人が立っている真下から見上げる構図や見せ方とか、今見ても斬新だしおもしろい映像が多々。

この映画、眠狂四郎の出生でまとめるなら初めからそこを軸にすればいいのに、結局序盤の登場人物達がお座なりのままで投げっ放したままだし、直ぐにドンデン返る小話が連続するしで、話が何処行くの?でフラフラしていてまとまりが無い。
テレビドラマの1シーズンの総集編みたいになってしまっていて微妙だった。

☆☆★★★
 
 
関連:眠狂四郎殺法帖
   眠狂四郎勝負
   眠狂四郎炎情剣
   眠狂四郎魔性剣
   眠狂四郎無頼剣
   眠狂四郎女地獄

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