眠狂四郎炎情剣

2013年11月17日 日曜日

市川雷蔵主演でシリーズ化した時代劇映画の1965年の第五作目「眠狂四郎炎情剣」。

道端で夫の敵討ちをしている女性の助太刀をした眠狂四郎。その女性は藤堂家の家臣で眠狂四郎と共に藤堂家の家老に報告に行くが、家老と商人の鳴海屋は鳥羽水軍討伐の財宝を独り占めし、水軍の生き残り皆殺しにしようと企んでおり、その企みに眠狂四郎が巻き込まれて行く事になる。

面倒臭い事には巻き込まれたくなく、女性は助けるけれど自分に利益が無ければ男性には興味が無い眠狂四郎が権力者の陰謀に巻き込まれ、少々情にほだされながら剣を抜くという、まあニヒルな時代劇。話も陰謀に関わる人々が眠狂四郎の元にやって来るけれど、その相手は自分の欲望の為に仲間を裏切っているのか、眠狂四郎をはめようと画策しているのか、全員が胡散臭く、事実も曖昧なまま進んで行くという展開でおもしろい。最後のこれまでの話の収束と結末、特に各人に対して眠狂四郎がどうしたかというのは非常に情が深く、かつ冷酷という眠狂四郎の特徴と良さがゴリゴリに出ていて上手いし、気持ちの良い締め。
剣劇は所々で出て来るけれど、本格的な所まで行かずに最後の寺での立ち回りに持って行き、そこで一気に見せるのも上手い展開。この最後の寺での立ち回りは、秋の枯れた画の中で水平方向へ駆け回るだけなく、寺の二階の狭い廊下でも斬り合いを行ない、上下にも広さを感じさせる珍しいチャンバラ。他の演出でも、陰影で画作りしたり、人の顔の寄りでも端に顔を寄せたり、急に人の顔の寄りを短く入れたりと、画面の構図や編集でも工夫がなされていて、映像的にも見所が多い。

ただ、始まりで中村玉緒が「夫の敵討ち!」と言って登場するけれど、一作目の「眠狂四郎殺法帖」で加賀藩の女中役で出ていたから一作目の続編かと思いきや、中村玉緒は全然別人の役。二年前、正確には一年2・3か月前の一作目で出演した女優を同じシリーズで再び別人で出すってどういう事?当時の映画界って無茶苦茶。
で、やっぱり市川雷蔵のニヒル感は良い。余り表情が変わらないのに、刀を抜いた時の真剣な表情と、投げやりな時の呆れ顔と、優しい表情とは別人の様に違う表情を見せる。市川雷蔵良いなぁ。

この映画五作目で、1・2と見て3・4と見ていないけれど、それまでよりもより強い眠狂四郎のニヒルな感じが良い。女性に対する扱いなんて悪いし、困っている人は興味が無ければ見捨てるし、決して正義のヒーローでもない眠狂四郎の立ち振る舞いが妙に人間臭くて良い。話も、それ程場面が変化する訳でもないけれど二転三転して飽きさせないし、映像的にもおもしろい所が多いしで、段々と映画「眠狂四郎」が固まって様式美化して来ているのもあり、この映画もそうだけれど、このシリーズおもしろい。

☆☆☆☆★
 
 
関連:眠狂四郎殺法帖
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