三匹の侍

2013年01月13日 日曜日

丹波哲郎長門勇平幹二朗共演、五社英雄が初監督した1964年の映画「三匹の侍」。1963年から始まった同名の連続TVドラマの人気があった為、その当時のテレビドラマと同じ俳優での映画化。

農民が自分達の生活の困窮を代官に訴えようとし、代官の娘をさらって来る。その小屋に偶然寄った丹波哲郎が農民達に加担し、代官一味と対立する。そこに元々は代官に雇われた浪人長門勇も加わり対決して行く。

話は、困窮する農民は人扱いされず簡単に殺され、侍や浪人は自分勝手な野蛮人で、だから情が強い三人の侍が活躍する暗く物哀しい話ではあるけれど、人情時代劇としても、チャンバラ活劇としてもなかなか良く出来ている。
当然この映画を形作るのは三匹の侍なんだけれど、一番初めに出て来る主役の丹波哲郎が人物的に一番薄いっていうのはどうなんだろうか?何故彼がそんなに農民の味方するのかもはっきり分からないままで、単に丹波哲郎が正義の人以上の理由が無く、薄っぺらい人物。それに、やっぱり丹波哲郎の演技って丹波哲郎でしかなく、二枚目なんだけれど役と言うよりも丹波哲郎だという事ばかりが前面に出て来てしまい、しょっぱさが滲み出て来てしまう。
長門勇は主人公達の中でも一番輝いている。彼は元農民で、急に襲って来たので代官の手下だと思って農民の仲間を殺してしまった後悔からも農民達に加担して行くという、理由も心情もはっきりと頷ける人物。非常にのほほんとはしているけれど、情に厚く、熱くもある。役柄的にも、丹波哲郎と平幹二朗の二人だけだと物凄く鬱々とした話にも、画面にもなる所を、コメディリリーフ的立場の彼が入る事によって場が和みつつも熱くなる。
平幹二朗は肩に刀をぶら下げ持ち、常にニヒル。金をもらっているから代官側に付き、誰がどうされようが気にしない悪役なのに、結局「三匹の侍」なので、代官に見捨てられたので丹波哲郎達の元にやって来る。結構酷い奴だったのに急に良い奴になってしまうのは、丹波哲郎達の懐が広いのか、設定の為の都合良さか。この変わり身は結構微妙。

映像的には、前・中盤・奥と三段階に人物を配置したり、前に人が来る等画面の前後を使って奥行きを出す場面や構図が多く、カメラも一場面で前後左右と動き回り、映像的にもおもしろい。それに夜の場面が多く、照明での陰影の付け方も印象的。障子に映る影だけの剣劇場面なんて迫力があり、印象にも強く残り「おおっ!」と思ったし。

話はハードボイルド的な泥臭さと哀しさがあり、かつ剣劇や映像的にも唸る様なおもしろさがあり、物語としても娯楽映画としても上出来な映画。製作に丹波哲郎が入っているせいか、丹波哲郎が面白味の無い英雄になってしまっているのが少々勿体無い所。だからなのか、この映画の後に始まったテレビドラマの第二シリーズ以降は、丹波哲郎に変わって加藤剛になっている。

☆☆☆★★

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