ミッション:インポッシブル

2015年11月29日 日曜日

ブライアン・デ・パルマ監督、トム・クルーズ製作・主演の1996年の映画「ミッション:インポッシブル(Mission: Impossible)」。
テレビドラマ「スパイ大作戦」の映画化作品で、ミッション:インポッシブルシリーズの一作目。

IMFのジム・フェルプス率いるチームは裏切り者によってCIA工作員の名前や活動を記載したファイルが盗み出される情報を掴み、その証拠と犯人を捕まえる為に罠を張って裏切り者を捕まえようと工作を行なっていた。しかし、その作戦中にイーサン・ハント以外の諜報員が次々と殺されてしまう。生き残ったイーサン・ハントはCIAに助けを求めるが、CIAはチームの中に裏切り者がいる事を察知し罠を張っていた事を知らされる。生き残ったイーサン・ハントが怪しまれたのでCIAの手を掻い潜り、本当の裏切り者を探し出す為にイーサン・ハントが奔走する。

わたしは一番初めのテレビドラマの「スパイ大作戦」は世代ではないので、後々深夜にしていた再放送を数話見た程度だけれど、「新スパイ大作戦」は子供の時に地上波で夜10時位に放送していたのを毎回楽しみに見ていた覚えがあり、それから何年も経っての映画化で楽しみに映画館にこの映画を見に行った覚えがある。その時も、そしてそれから20年近く経って改めて冷静に見ても、やっぱり「スパイ大作戦」じゃあないし、映画としても微妙。

「スパイ大作戦」も「新スパイ大作戦」も、「それぞれの特技を持った工作員がチームで動き、悪い奴を罠にはめて罪を暴く」という部分がおもしろさだったのに、この映画にはそれが全然無い。
序盤にチームで「スパイ大作戦」っぽい作戦を行なっているけれど、行き成り失敗で全員死亡って、掴みでこれやってしまうとただスカしただけで誰もがアホにしか見えないし、人物紹介からある程度登場人物に馴染んでからでないと行き成りのどんでん返しも活きて来ない。
その後新チームを作るけれど、ヴィング・レイムス演じるルーサー・スティッケルはコンピューターや機械担当なのにヴィング・レイムスがコンピューター・ギークやハッカーには全然見えないし、やたらと性能の良いコンピューターを要求する割にコンピューターでの手に汗握る活躍がほとんど描かれないし、ジャン・レノ演じるフランツ・クリーガーは下働きばかりで何担当とかもなくて活躍は少ないし、エマニュエル・ベアール演じるクレア・フェルプスの活躍も少々で、結局トム・クルーズが天井から釣らされてのアクション場面を見せる為だけの補佐でしかない。
最終的にトム・クルーズの超人的なアクションで丸く解決してしまうので、「スパイ大作戦」的なチームによる工作のおもしろさが全然無い。

話自体もサスペンスや陰謀を意識し過ぎてこねくり回し過ぎた感ばかり。チームに裏切り者がいて、その容疑をイーサン・ハントに擦り付けられ、新たに作ったチーム内にも裏切り者がいて、更には信頼出来るはずだったクレア・フェルプスも裏切り者で…と、やたら裏切り者ばかりで話がやたらグチャグチャしている。確か昔映画館で見た時、イーサン・ハントがジム・フェルプスと再会して、イーサン・ハントが事件の全容を分かったと言って話している内容と考えている事が全然違った場面で、何の証拠も無くイーサン・ハントの推理が勝手に進んでしまう事もあって、何だかよく分からないまま事件の真相に辿り着いて、「???」となった事を憶えている。今回改めて見ても、現場で調査したり捜査からの推理も無く、特に証拠も無いのに、ただ聖書にホテルの名前があった事から一気に種明かしになる観客に対する不親切な真相の提示で、もう少し何か確実な証拠を描かないと唐突過ぎる気がする。
一方でイーサン・ハント一人だけになった所へクレア・フェルプスが実は生き残っていたとなれば彼女が怪しいのはバレバレだし、夢の中でジム・フェルプスが戻って来るという振りなんて、こんな夢を見るって事は早い段階でかイーサン・ハントが疑っていたという事だろうけれど、何の確証も怪しさも無いのに何でこんな夢を見たのかも分からないし、わざわざ入れる必要があったのだろうか?と思ってしまう。
特に疑問を感じた演出は、手に入れた本物のディスクを本当はジャン・レノが持っているけれど、トム・クルーズが持っていると思わせて騙し取る場面。トム・クルーズの手品しながらの話が長いのもあるけれど、ジャン・レノがディスクをゴミ箱に捨てて、それをトム・クルーズが取りに行く前に聖書を拾い上げてジョン・ヴォイトを怪しむのって順番が変。あれだけ長々とディスクの話を続けていたのだから、サッとディスクを拾って「本当はこっちが本物なんだ」とネタバラシをするのが先なのに、本物のディスクを取り上げる前に聖書を拾って回顧を挟んでのまだ確証が持てない予想が入ってしまうので、本物のディスクのネタバラシが薄くなるし、結局ジョン・ヴォイトへの怪しさを見せたいのか本物のディスクの件を見せたいのかが曖昧になって、非常に中途半端。

この映画で一番の見せ場でもあるCIA本部での天井から釣らされてのアクション場面だけれど、あの部屋の防犯装置と同じく無音にして緊張感のある場面にはなっているけれど、よくよく考えると粗いし間抜け。あれだけ厳重な防犯設備なのに、何故か天井には人が移動出来るだけの大きさの換気口と換気用の通路が存在しており、見事にそこを突かれて侵入されている。しかも、その換気用通路には大きな鼠が現れるけれど、そんな鼠がいるならやたらと警報装置に引っ掛かって一日中警報鳴りっぱなしだろ。この場面を作る為と、窮地に陥る場面を作る為とは言え粗い。

トム・クルーズは今見ると若い。もう20年近くも前の映画だからだけれど、まさか20年も経って同じ役を続けているとは思いもしなかった。
ジョン・ヴォイトも今見ると若い。しかし、ジョン・ヴォイトが歳を取ってからの映画って大抵外れの事が多い。「アナコンダ」とか、「エネミー・オブ・アメリカ」とか、「トゥームレイダー」とか、「ナショナル・トレジャー」とか。彼が目立つ脇役だと駄目な印象の映画しかない。
そんなジョン・ヴォイトに加え、これまた彼が出ていると外れな映画が多い俳優ジャン・レノも出ており、トム・クルーズが製作もして自分で主演していて、「スパイ大作戦」なのに単なるトム・クルーズのアクション映画だったり、一般的に評価は高いけれど見る映画どれも大しておもしろくないブライアン・デ・パルマ監督作品と、やたら外れ要素が盛り込まれている。

この映画、展開をこねくり回していておもしろさが無いし、サスペンス映画としても勝手に展開して行っている感じで緊迫感は無いし、何と言っても「スパイ大作戦」なのに全然「スパイ大作戦」じゃあないので、「だったら『スパイ大作戦』でなくていいじゃん!」と思ってしまう。テレビドラマの毎回の始まり「おはよう、フェルプス君。」こそが「スパイ大作戦」なのに、そのフェルプス君を適当なしょうもない理由で裏切っている悪役にして殺してしまうのは本当に頂けない。普通にフェルプス君をイーサン・ハントを助ける後方支援だったり、勇退させたり、イーサン・ハントに代替わりも出来ただろうに。
「スパイ大作戦」をトム・クルーズのアクション映画にして20年で5作も作られ続いているという部分ではこの映画が礎となった凄い部分であるけれど、逆に言えば「スパイ大作戦」でもない単なるトム・クルーズのアクション映画にしてしまったという部分ではトム・クルーズとブライアン・デ・パルマが完全にやってしまった。そこでもトム・クルーズとブライアン・デ・パルマはあんまり好きじゃあない。

☆☆★★★
 
 
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