ミッション:インポッシブル2

2015年11月30日 月曜日

ジョン・ウー監督、トム・クルーズ製作・主演の2000年の映画「ミッション:インポッシブル2(Mission: Impossible II)」。
映画「ミッション:インポッシブル」の続編で、続けてイーサン・ハントが主人公。

イーサン・ハントに新たな指令が下る。元IMFメンバーのショーン・アンブローズがキメラという謎の物を強奪し、飛行機を墜落させた。イーサン・ハントはこの謎のキメラを取り返す為にショーン・アンブローズの元恋人ナイアを仲間に引き入れ、ショーン・アンブローズの下に潜入させるが、彼女の正体がばれてしまう。

一作目はやたらと脚本をこねくり回し、やたらと裏切り者が出てイーサン・ハントが翻弄されるだけで、全然「スパイ大作戦」ではなかったけれど、今回の続編はその逆を行き、「謎のキメラを取り返す」というだけの真っ直ぐな話で話自体は全然おもしろくないし、見せ場のアクションも数的に少なく、見せ場までが間延びするし、相手に罠を仕掛けるのもイーサン・ハントと敵が変装して相手に成りきるという展開が何度もあり、同じ事の繰り返しばかりで意外性もワクワク感も無い、やっぱり全然「スパイ大作戦」ではない、トム・クルーズの宣伝映画みたいな出来。

特に脚本が悪い。
話はイーサン・ハントとナイアとショーン・アンブローズのキメラを巡る戦いに恋愛のこじれも入れて進んで行くのだけれど、イーサン・ハントとナイアの出会いと恋愛が時間を取る割に内容が薄くて二人の信頼関係や気持ちが全然伝わらず、展開する為の恋愛にしか見えて来ない。

軸になっているキメラも、盗み出したのだから世界中の製薬会社や危ない組織の中で一番お金を出す所に売るのかと思いきや作り出した会社に売り戻すので、何か狭い中で話を回していてこじんまりしている。
このキメラ自体、感染したらその感染者から更に多くの人が感染するのか?とか、その感染方法は?とかが一切描かれないので、感染した個人だけの危機なのか、世界的危機まで行くのかがさっぱり分からず、何を皆が心配しているのかが全然ピンと来ない。
全体に渡る話はキメラに関する一本道で劇的な展開も無ければ新たな展開も見せず、その中で意外性やどんでん返しに使うのがどれもこれもイーサン・ハントの変装の一本槍なので、「またか…」「もういいよ…」という感想しか出て来ず、意外性も無ければ面白味も無い。

それにただ展開の都合だけで理由を端折ってしまう場面も多くて粗い。
ショーン・アンブローズがイーサン・ハントに変装してナイアの正体を暴こうとする場面では、何故ショーン・アンブローズがイーサン・ハントに変装したのかの説明が一切無い。ショーン・アンブローズはナイアがスパイの可能性があるとは初めから思っていたけれど、ナイアの後ろにいるのが何故イーサン・ハントと感付いたかは一切描かれず。
終盤の見せ場であるはずの、イーサン・ハントがヒュー・スタンプに変装してイーサン・ハントの変装させたヒュー・スタンプを殺させる場面も、これってイーサン・ハントが背負っているリュックサックの中に予めヒュー・スタンプの変装マスクと自分の顔の変装マスクを作って持って来ておいたと言う事以外には考えられず、マスクを使う事態を予め想定していて準備周到過ぎる用意をしていたって事なのか?他でもそうだけれど、どうやって変装マスクを作り出しているのかは一切描かれないので、ほぼ魔法の便利さ。
静止軌道上の衛星に誤差1mで位置情報を送れる小さなチップは誰もが全く探知出来ず、一台のパソコンだけが読み取れるという頭の悪い中学生が考えた様な馬鹿みたいなガジェットとか、わざわざ人間が降り易い様な馬鹿でかい真っ直ぐな通気口があるビルとか、本当に展開の都合上だけの馬鹿みたいな物が多過ぎて馬鹿馬鹿しい。

一番最後のバイク・アクションも、倉庫の中に厳重に保管されている訳ではなく何故か出入り口の直ぐ近くに山積みされている危険物質に銃弾が当たって爆発したり、何の振りも無く突然バイクに乗った敵が現れたり、バイクの真下から銃を撃つとバイクには当たらずバイク越しの人間だけに弾が当たって吹っ飛んだり、イーサン・ハントが敵の基地からバイクで全速力で逃げているのに同じ基地からバイクに乗って飛び出した敵が前からやって来たり、正面衝突覚悟で走るバイクからお互いが飛び出して空中で体がぶち当たっても骨も折れた様子も無く結構平気だったり、最後に背後から敵に銃で狙われたイーサン・ハントの足元の砂の中から突然拳銃が現れ、それを蹴り込むと真上に銃が飛び上がって撃つ等々、悪い意味で馬鹿みたいな展開の連続で、最後の一番盛り上がるはずのアクション場面が全然駄目。
それに他のアクション場面はそれ程気にはならなかったけれど、殴る蹴るアクション場面は頑張ってはしているトム・クルーズのアクションが下手くそに見えた。特に殴るのが弱々しい。

演出や編集も良くない。
こういうアクションやスパイモノの映画の始まりって、普通は掴みとして何かワクワクするアクションや仕掛けの一場面をしてから本編に行くのに、この映画の始まりは主人公の活躍ではなく敵のショーン・アンブローズの悪行を見せてから、それの後にやっとイーサン・ハントが登場するという変な掴みをしてしまっている。イーサン・ハントのロッククライミングからで良いのに…と思うのに、この変なスカしの始まりって何?
本編ではやたらとスローモーションを使っているけれど、これが印象的にしようとしているのに逆にそれが邪魔になっていて、イーサン・ハントとナイアの場面のスローモーションは最早コメディ染みているし、アクション場面のスローモーションは折角の早い見せ場の流れを止めてしまっているしで、全く不必要なスローモーション。
ジョン・ウーなので当然横っ飛びの二丁拳銃での銃撃もあるけれど、今回は全然目立たず。それにやっぱり鳩が出て来るけれど、これも特に鳩がいる様な場面ではない地下施設なのに無理矢理鳩を置いているし、白い鳩が一羽だけトム・クルーズと共に急に現れるのは、もうジョン・ウー・ギャグ。カッコ良くなくて、わざとらしいだけ。

あと、登場人物達も全然良くない。
主人公のイーサン・ハントは、前作では女性に気がある風だけれど自分の置かれた状況や任務を遂行する為に非常に冷静行動する人物だったのに、今作ではちょっと知り合ってやってしまっただけのナイアに入れ込んでいて常に衝動的に行動するし、一作目と人物が全然違う。今作のイーサン・ハントって物凄く頭の悪い感じばかりする。
前作に続きヴィング・レイムス演じるルーサー・スティッケルが登場しているけれど、やっぱり凄腕のハッカーには見えないし、今作ではほぼ通信中継係でハッカー的な見せ場が無い。
新たな仲間ビリー・ベアードも始めは人物が立っていたのに徐々に目立たなくなるし。
そして、何でか知らないけれどアンソニー・ホプキンスも出ているけれど、前作のジョン・ヴォイトの様な出番があるのかと思いきや、本当に何にも絡んで来ず、「♪お前、誰だよ~!」だし、アンソニー・ホプキンスである必要性があるのか分からなかったし。このシリーズって無駄に有名年配俳優使うよなぁ。
ナイア役のタンディ・ニュートンはまだ若くて可愛らしい感じだけれど、役自体は初めは泥棒の設定を活かしていたのに中盤からそれも意味も無くなり、終盤は全然目立たず、泥棒なのに何故良い事をしようとしてるのかや、何でショーン・アンブローズと付き合っていてのに思いを断ち切っているのかとかも一切出て来ずで、やっぱり脚本がお座なり。ショーン・アンブローズの背景とかもそうだけれど、登場人物が皆、行動理由となっている背景が何も描かれないのでただ目の前で何かが起こっているだけの薄っぺらなドラマでしかない。

この映画、一作目はこねくり回してグダグダしてしまったけれど、まだスパイモノをしようとしてのに、二作目ではスパイモノの風味はほんの少しだけあるのものの無味に近い薄さで、潜入や罠等のスパイモノのドキドキ感は皆無だし、一方アクションに特化しているにも関わらず、終始間延びした展開なのにアクションも少なく、アクションが安っぽい感じでおもしろくない。ジョン・ウーのハリウッド映画って、本当駄作が多いよなぁ…。ジョン・ウーもだけれど、一作目と今作も脚本を書いているロバート・タウンがどうしようもないのか…?

☆★★★★
 
 
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