ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル

2017年04月07日 金曜日

ブラッド・バード監督、J・J・エイブラムス製作、トム・クルーズ製作・主演の2011年のアメリカ映画「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル(Mission: Impossible – Ghost Protocol)」。
映画ミッション:インポッシブルシリーズの三作目。

IMFのチームの手助けによってモスクワの刑務所から脱獄したイーサン・ハントは、チームを率いてコバルトと呼ばれている正体不明の敵を追ってクレムリンへと侵入する。
しかし、作戦の途中で謎の人物に無線通信に割り込まれて作戦は失敗し、核兵器の発射制御装置をコバルトに取られてしまう。
イーサン・ハントとチームはコバルトを追う事となる。

このシリーズって、一作目「ミッション:インポッシブル」から「スパイ大作戦」ではなかったし、二作目「ミッション:インポッシブル2」で既にトム・クルーズを見せるだけのアクション映画でしかなかったけれど、この四作目は「スパイ大作戦」の要素を少々入れたトム・クルーズ版「007」だな。
アクション映画としてはそこそこおもしろかったけれど、「スパイ大作戦」としてはやっぱり微妙だし、映画としても一杯突っ込み所がある。

一応チームとして敵を罠にはめるという「スパイ大作戦」要素はあるものの、これが全部始めは上手く行くけれど終盤で敵に気付かれたり、敵の方が先回りして先手を打たれて失敗し、結局は殴り合い、銃の撃ち合いの殺し合いで決着が付いたり、派手な爆発や砂嵐でグチャっと終わって、「スパイ大作戦」的爽快さは無い。
一番「スパイ大作戦」であり、「ミッション:インポッシブル」と銘打っているのにそこが無いので最早「ミッション:インポッシブル」である意味も無く、単に「ミッション:インポッシブル=トム・クルーズのアクション映画」でしかなくなってしまっている。

それに見ていると細かい部分で色々と気になる事ばかり。
敵となるカート・ヘンドリクスは元特殊部隊員で、元物理学教授で、核兵器を使って核戦争する事が人類の進化と平和になると考えている人物とか、設定を入れ込み過ぎて、もうグチャグチャとやり過ぎている上に、この訳の分からない狂人設定も安っぽい悪役で馬鹿みたい。こんな人物設定、2011年の映画でやってしまうか?

こんな頭のおかしいカート・ヘンドリクスは行動も頭がおかしく、常に自分で何事もしないと気が済まないらしく、クレムリンに一人で乗り込むわ、起爆コードを手に入れる時もわざわざ変装してまで自分でやって来るわで、実行部隊なのかボディガードなのかの人を雇っているのに何故か現場では自分で全部してしまい、何かあった時は簡単に計画が終了してしまうのに恐ろしいまでの凄い自信と言うよりも、そこまでは考えが至らないアホ。しかし、まあ見事にカート・ヘンドリクスの一人舞台が成功してしまう都合の良さで押し切るし。
ちなみに、カート・ヘンドリクスはクレムリンでのイーサン・ハント達の作戦をどうやって知っていたのか?とか、イーサン・ハント達があれだけ手間暇かけて潜入していたのにカート・ヘンドリクスはどうやって上手い事先回りしていて邪魔出来たのか?とか、起爆コードを手に入れる時にカート・ヘンドリクスが変装して自分で来た理由とかも一切描かれず、カート・ヘンドリクスの行動は謎と言うよりも都合の良い描かれず仕舞い。

ジェレミー・レナー演じる分析官のウィリアム・ブラントも、どう見たって筋肉付いていてガタイが良く、イーサン・ハントよりもぶ厚い体しているのに、イーサン・ハントやチームのメンバーは分析官のウィリアム・ブラントのその体を一切触れる事も無く、暫くしてウィリアム・ブラントの格闘能力が高いのを見て「お前、現場諜報員だったろう!」と突っ込む始末。
わたしでさえ、ジェレミー・レナーが出て来て分析官と言われた時に分析官が全然似合っていないのを突っ込んでしまったぞ。
しかも、このウィリアム・ブラントは登場し始めは人の顔見ただけでその人物を特定出来るという、世界中の主なテロリストや危険人物を全て暗記しているのかという超能力的な能力を見せて、あくまで記号的な凄い分析官能力を見せるのだけれど、ウィリアム・ブラントが元現場諜報員だったと分かった以降はその分析官能力を一切発揮せず、普通の現場諜報員になってしまい、分析官という設定もどっか行ってしまうぶん投げっぷり。

それに気になったのは最終盤の核兵器の扱い。
核ミサイルが打ち上がってそのまま何も無くアメリカ本土に到達してしまっているけれど、アメリカのミサイル防衛システムってこんな緩々なんだろうか?
それにカート・ヘンドリクスも目的は核戦争なのに何故かまず手始めに一発だけ核ミサイルを発射させようとしたけれど、逆に一発だけなら「何で一発?どっかのテロリストのしわざ?」とアメリカも疑う行動になるし、とにかくロシアの核ミサイルを搭載した潜水艦や施設に撃てるだけ撃てと命令出しまくれば核戦争も確実なのに何故かそれはしない。
それは核ミサイルが撃ち上がったけれどイーサン・ハントが止めるだけの為の都合だからという展開なだけ。

あと、ドバイのサーバールームが簡単に割れるガラス張りで侵入し放題だし、後半で別の施設のサーバールームの熱が凄いと言う話だったのにドバイのサーバールームは太陽光を浴びるガラス張りの部屋にあるとか、逆に後半のサーバールームの通風孔と換気扇が馬鹿でかくて、換気扇の先が何故か尖がっているとか、最後の駐車場に留めてある自動車は何故か鍵がかかっておらず簡単に乗り込んで発車させる事が出来るとか、展開を優先させた都合の良さが一杯で白けまくり。

この映画の監督ブラッド・バードって、「アイアン・ジャイアントhttp://wwws.warnerbros.co.jp/iron-giant/」とか「Mr.インクレディブル」とか「レミーのおいしいレストラン」の監督・脚本をしていて評価も高いはずなのに、初の実写映画というだけでこれだけグズグズになってしまうのは何?
製作のトム・クルーズや、わたしが現世代の壮大な張りぼて映画の大家だと思っているJ・J・エイブラムスの何だかんだの横やりでこうなったとしか思えないんだけれど、どうなんだろうか?

何より一番のこの映画の悪い部分はオープニング・クレジット。
映画本編の中からのカットをスパイ大作戦のテーマと共に見せるのは「スパイ大作戦」らしいけれど、そのスパイ大作戦のテーマが全然駄目。
余計な編曲で皆が期待している何時もの始まりの「♪テレレレレ~ジャン、ジャン、ジャンジャン、ジャン~」という気持ち良い部分が無く、ぬるっと始まってしまい肩透かし感が半端無い。その後も妙に間を伸ばしており、「これぞ『ミッション:インポッシブル』!!」という爽快さが無い。
主人公がトム・クルーズのイーサン・ハントの時点でこれじゃない感が強いけれど、今回のオープニング・クレジットのこれじゃない感も相当強い。

わたしの一番の見所だったのは、一番始めに登場した諜報員ハナウェイを演じていたジョシュ・ホロウェイ
ジョシュ・ホロウェイと言えばテレビドラマ「LOST」のソーヤー役でお馴染みで、その後が全然パッとしないでもお馴染みだけれど、そのジョシュ・ホロウェイが登場してカッコ良くアクションしたと思ったら、どう考えても若い女性が歩いていないはずの裏路地に現れた女性に気を取られて、その女性に速攻で殺されたという場面で笑ってしまった。
このカッコ付けていたのに間抜けな感じで殺されてしまった「何じゃ、そりゃ…」感と、このすぐさまの退場がテレビドラマ俳優と映画俳優の格差をまざまざと見せ付ける様な噛ませ犬的仕打ちに笑ってしまった。
「折角良い感じで登場したこのジョシュ・ホロウェイの諜報員の活躍もっと見たかったのに…」と思ったけれど、この諜報員がハイテク・コンタクトレンズで沢山の人の中から顔認識で標的を見付けるという事やっていて、「これ何処かで見た事あるな…?」と思ったら、これって正にジョシュ・ホロウェイが主演していたテレビドラマ「サイバー諜報員~インテリジェンス~」。
このドラマ「サイバー諜報員~インテリジェンス~」はおもしろくなかったけれど、この映画見てからドラマ見たら勝手にスピンオフに出来ておもしろかったかも。

そう言えば、何故かミッション:インポッシブルシリーズの全作に登場しているヴィング・レイムス演じるルーサー・スティッケルも最後に登場するのだけれど、この登場は別に要らない。
ルーサー・スティッケルが全作に登場しているという事実を作るだけの登場で、まあおまけ。

この映画、「ミッション:インポッシブル」と銘打ち、「スパイ大作戦」っぽさもあるけれど、見終われば何十年も延々と作られ続けているハリウッドのアクション映画という分類分けに納まる映画。
始めからトム・クルーズの「007」っぽいアクション映画と分かっちゃいるけれど、「ミッション:インポッシブル」ならもっと「スパイ大作戦」的爽快さを期待するのは間違いなのかなぁ?
「スパイ大作戦」的なモノを期待するなら、それこそテレビドラマ版の「スパイ大作戦」を見れば良いし、最近の「スパイ大作戦」に近い感じならテレビドラマの「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」を見れば良いか…。

☆☆★★★
 
 
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