サイバー諜報員~インテリジェンス~

2014年10月02日 木曜日

サイバー諜報員~インテリジェンス~Intelligence)」は、ドラマ「Lost」でソーヤー役を演じていたジョシュ・ホロウェイが主演のドラマという事で見てみた。
2014年1月にCBSで開始されたドラマなのに、意外と早く日本でもDlifeで放送している。

頭に特殊なマイクロチップを埋め込み、インターネットや周辺の電波を出しているデジタル機器に無線で接続し、様々な情報を目の前で見る事が出来る元軍人のガブリエル・ヴォーン。彼はアメリカ政府のサイバー軍下のサイバー諜報員として活動していたが、CIA捜査官でテロ組織に潜入していた妻がテロリスト側に寝返り、テロを起こして死亡した事が信じられず、妻の行方を追っていた。暴走気味になるガブリエル・ヴォーンに対して上層部はシークレット・サービスから引き抜いたライリー・ニールをお目付役として付けた。

一話目を見た時から思ったのは「あんまりと言うか、大分おもしろくない…」だった。マイクロチップを埋め込まれ、色んな情報にアクセス出来、それをモニターなども使わず眼前に出すという映像的なおもしろさや派手さの意図はよく分かるけれど、これが余りにその企画意図が先行し過ぎ、SFし過ぎ、やり過ぎていて、ただ話を早く展開する為の都合良過ぎるだけのガジェットになってしまっているのが痛い。マイクロチップの設計段階で無かった機能なのに、何故か犯罪現場の情報と自分の脳内の想像を映像化して目の前に出す事が出来るなんて、小さなマイクロチップだけで出来てしまうのはやり過ぎとか、様々な電波を拾ったり、情報にアクセスするけれど、それを送受信するアンテナや装置は一切見えないけれどどこ?とか、このマイクロチップが万能過ぎて、SFなはずが合理的な説明もしないのでSFっぽく見えて実は魔法に近い。無線ネットワーク接続されていないだろと思う様な物まで便利に無線ネットワークに繋がれており、そこからハッキング出来たり、どの場所でも全てのカメラの異常な程の解像度とか、話を早く進める為にドンドンと嘘を放り込んでしまっていて、どれもやり過ぎで逆につまんなくなってしまう。Xbox360キネクトのカメラに入って、カメラから10m以上離れた所のノートパソコンの文字を読むとか、マイクロソフトの技術の称賛じゃあないだろうけれど、ほとんど脳内補正でしかない情報があっているなんてご都合主義の極まりも酷い。サーバー軍が「現地のIPアドレスからしかアクセス出来ない!」と言うけれど、政府関係のコンピューターにワームを送り込めるハッカーがIPアドレスを偽装もせず、そのまま接続しているってどんだけ間抜けで、脚本が都合良いんだよ。一方で、電磁波によって一時的な記憶喪失になってしまうという弱点も便利に出て来るけれど、これも博士が「大丈夫なようにしといたから。」で解決してしまうお手軽さ。チップにしろ、コンピューター関係にしろ、本当に展開を早く進めるだけの為の脚本家に都合良いモノばかりで酷い出来。

しかも、マイクロチップの説明はとか設定を第一話で一気に見せて、説明も不十分なまま行くのでSFがずさんにしか思えない。
この第一話目、これらの設定に加え、サイバー軍、ライリー・ニールの登場、シェナンドア・キャシディ博士の事件等も詰め込んでいるけれどどれも描きが足らないので、てっきり第一話はパイロット版で放送時間が一時間以上あったのを日本独自編集で45分弱にしているのかと思ったら、始めから45分弱。それ位ぶっ飛ばしていた。この第一話で「ああ、これ、駄目だな…。」と思ってしまい、それ以降もおもしろくならないまま。
二話目を見たら、一話目で勝手にマイクロチップを作って犯罪に巻き込まれていたキャシディ博士とその息子が何食わぬ顔でサイバー軍で働いていて、説明ぶっ飛ばしで意味不明。

登場人物達、特にレギュラー陣は皆どこかで見た事のある人ばかり。主演のジョシュ・ホロウェイもそうだけれど、ライリー・ニール役のミーガン・オリーはドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム」で赤ずきん役とルビー役(わたしは序盤で見るの止めたのでよく分からない)。
サイバー軍の長官リリアン・ストランド役は、「CSI」のキャサリン・ウィロウズ役でお馴染みマーグ・ヘルゲンバーガー
シェナンドア・キャシディ役は「スタートレック:エンタープライズ」のフロックス役だったジョン・ビリングズリー(またドクター)。
アメリア・ヴォーン役は「Lost」のイラーナ役だったズレイカ・ロビンソン
何だか色んなドラマからの寄せ集め感があり、特にマーグ・ヘルゲンバーガーの吹き替えはキャサリン・ウィロウズと同じ高島雅羅なので「キャサリン、CSI辞めて何してんの?」と思ってしまう。それなのに、ジョシュ・ホロウェイの吹き替えは藤原啓治ではなく宮内敦士なので違和感しかない。
またCIA長官役でランス・レディックが出てるのだけれど、この人「LOST」や「フリンジ」でも怪しく得体の知れない役で出ていたのに、このドラマでも中々情報を出さない、情報を隠すCIAの長官と、また似た様な感じの役。
このガブリエルの仲間の人々は皆個性が強いのに、その個性があんまり前に出て来ない感じがする。皆仲間意識が強い様に描かれているけれど、ガブリエルとライリーは現場で戦っているのに他の仲間との距離感の近付け具合は詳しく描かれないので、「そういう事なんです!」感ばかり。特に、設計以上の能力を発揮してしまって、ガブリエル自身が制御出来ていない事もあるマイクロチップ関連の問題に対して、普通だったら「ガブリエル自身だけでなく、周りにも問題が波及する恐れがあるから、問題が解決するまでここでじっとしていなさい。」となるはずが、「ガブリエルは絶対に正しい!問題は彼じゃない!」と結構ガブリエルを野放しにしてしまう対応も何か違和感。これも話の展開を先行させて人物の反応を作っているからなんだなろうなぁ。

目の前に出す映像は何だかゲームの「ウォッチドッグス」みたい。引き出した個人情報を空中に出したり、簡単にハッキングしたりとか、「ウォッチドッグス」で携帯電話でやっている事そのまま。映像処理も所々細かく四角のデジタルノイズが入ったり、中央以外は線画、フレームワーク的な映像になったりも似ているし。謎の便利過ぎるマイクロチップよりも、「ウォッチドッグス」の方が携帯電話と完全情報ネットワーク化された都市という部分では近未来SFとしては現実味がある。それに、携帯電話を操作してという手間がある分、全能性の無い一人の人間として生きている感があるのに、何でも一瞬でマイクロチップで出来てしまうと見ていても「あ?、はいはい。それもチップでするんでしょ。」と仕掛けの攻略のおもしろさが全然無いし、お手軽捜査でつまらなくなってしまう事に気付かなかったのだろうか。このドラマ見るよりは「ウォッチドッグス」で遊んだ方が楽しそう…と思ってしまったのだけれど…。
それにガブリエルが建物に侵入する時、建物中に見張りが歩き回っていても、各所に設置された監視カメラの映像を読み込み、それを目の前に投影して、まるで壁を透視しているかの様な演出って、近年のFPSでよくある様な映像だし。

ジョシュ・ホロウェイは製作でも入っているけれど、ちょっと自分をカッコ良く見せ過ぎ、全能の神的な役柄にし過ぎで、そこでもおもしろくなくなっているんじゃないの?とも穿ってしまう。

第一話から感じていた、展開を早くするだけで物語的な浮き沈みや盛り上げに全然なっていないマイクロチップの存在と、マイクロチップが無くても都合の良い展開の脚本のつまらなさは、アメリカでも後半の視聴者数が減って、13話のシーズン1を放送した時点で打ち切りが決まってしまった。
何だかアメリカのTVドラマで長期間同じ役を演じたり、強烈な印象を残した役を演じたりして、その後違うドラマをやっても全然当たらないという印象があるけれど、このドラマはまさにそれだし、結局脚本がおもしろいかどうかなんだと思う。
 
 
関連:今期のドラマはCSI 3

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