ニッポン無責任野郎

2015年11月28日 土曜日

古澤憲吾監督、植木等主演の1962年の映画「ニッポン無責任野郎」。
無責任シリーズ二作目。

全てにおいて調子の良い源均は道端で偶然出会った長谷川から彼の勤める明音楽器の社長が引退する事になり、その後任の社長の座を専務と常務が争っている事を聞き出す。これに目を付けた源均は両者をなだめすかして明音楽器に入社。更には社員と早くも結婚したりと、その調子の良さで生きて行く。

一作目の「ニッポン無責任時代」もおもしろかったけれど、その続編だけれど一作目とは関係無い話ではあっても調子の良過ぎる男が調子の良い事言って出世して行くという部分は同じで、これまたおもしろかった。
前作もそうだけれど、何と言っても植木等のこの明るい適当な生き方がことごとく上手く行く様が爽快。出来過ぎのコメディではあるけれど、植木等のあっけらかんとした自由さが嫌味無く猪突猛進するので、役も植木等自身の魅力も総出で笑いながら一気に見切ってしまう。
調子の良さは主人公だけでなく映画の流れも調子が良く、始まりから最後までダレる事無く展開する。次々と出会う事物に源均の明るさと、常に前向きな姿勢、おだてたり弱みを掴んだり、全くの出まかせで巧みに相手を自分の元に引き入れてしまい、それを止めどなく見せ続ける。この次々と来る展開はおもしろかった。

ただ、序盤から源均がその日の酒をただで飲みたいからや単に就職する為に行動しているのか、明音楽器の人事を聞いてこれを利用して伸し上がろうとしているのかがはっきりしない部分があって、いまいち主人公の意図が見えて来ないので疑問には感じていたけれど、終盤になってからの源均の行動は疑問だし、その展開はどうなの?と思ってしまう。
源均はそれまで面倒を見ていた谷啓夫妻の奥さんに水商売を紹介して夫婦間は酷い事になってしまうし、谷啓の母親の家に源均夫婦で住んでしまい、他人の年老いた母親がいるのに文句も言わない源均の奥さんも不思議だけれど、その他人の家の庭を勝手に全て破壊し母親に駐車場経営させたり、最終的には会社の金を悪びれもせず横領していたりと、終盤に来て源均の調子の良さが暴走し、単に自分勝手な無茶苦茶する奴に堕ちてしまい結構引いた。
首になってからの最終的に何が何だか分からないままの結末も口あんぐりだったし。最後のオチが意味不明だったので調べてみたら、登場した新社長って一作目の主人公だった平均なのか。そこで両作を繋げたのだろうけれど、それでも意味はよく分かんない。それまで良い流れで非常におもしろく来たのに、終盤のグダグダした適当な感じは全然良くない。

この映画でおもしろかったのは源均と丸山英子の恋愛結婚話。強引過ぎる源均に翻弄されながらも、その明るさに惹かれる丸山英子という関係性はおもしろかったし、その二人も好きではあるけれどお金を持っているからとはっきりと言い合うし、結婚しても共働きで全てのお金は割り勘で、家事は丸山英子がするけれどその分のお金を源均から取り、始めから別れるという訳ではないけれど、その可能性も考えて付き合った方が楽という、当時の考え方では無責任野郎ではあるのだろうけれど、今見ると非常に現代的である意味合理的、平等な考え方を二人共がしている。意外とこの二人はコメディでもない。
それに、新婚旅行は遊園地で丸山英子は当然文句を言うけれど最終的には二人で楽しんでいて、実は物凄く上手く行くピッタリな二人と言うのも微笑ましい。
その分、家を出て行った源均がバーのマダムに走ったり、最終的に夫婦関係がどうなったのかを描かないまま終わってしまったのが残念。
加えて、普通なら美人役である石沢厚子と源均の出会いが先だった事もあるけれど、この二人がくっ付くのかと思ったら、そんなに美人ではないけれど性格がお互い合う源均と丸山英子がくっ付くのもおもしろい部分。

あとは、やっぱり当時の街並みや風俗には目が行く。
街の建物は今みたいに特徴がある様で何処にでも同じ様な複製の複製的な面白味の無い建物ではなく、それぞれが存在感が強いし、東京なのに垣根で分けられた日本家屋が立ち並んでいる事が不思議な感じがするし、ただ単に曇っているだけなのか、これが交通戦争やら工業廃棄物の産物であるスモッグなのか終始外は靄がかかった感じだったり、まだアスファルトの舗装がなかったり、歩道も無く白線も無い道路だったり、今から見ると50年でこの変わり様はおもしろく見れてしまう。確かに現実なのにSFっぽさも感じてしまう。

町並みは相当変わった事が分かるけれど変わらないのが草笛光子。50年以上前なのに今の草笛光子とそんなに変わらない。いや、女優としても人としてもこの維持は凄い。
クレージーキャッツの面々も非常に良くて、植木等はもちろん、堅物で怒りっぽいハナ肇や小物感が凄い谷啓とか、皆活き活きと演じていて、見ていて楽しい。
それに急に植木等のミュージカルになるのだけれど、わたしは全然ミュージカルは駄目なのに、それが植木等だと楽しく見れてしまう。歌も上手いし、やっぱり植木等は凄い。

この映画、今から50年前以上の映画なのに非常に調子良く展開し、常にケラケラ、ニコニコしながら見れる楽しい映画。終盤の「何じゃこりゃ?」な展開はあるものの、それまでのおもしろさで一気に見れるし、何よりも植木等の魅力や脇役達の活き活きとした楽しさが溢れている。

☆☆☆☆★
 
 
関連:ニッポン無責任時代

« | »

Trackback URL

Leave a Reply