ニッポン無責任時代

2012年10月20日 土曜日

クレージーキャッツが出演しヒットし、10年間に30本も関連作が作られたクレージー映画シリーズの第一作目の1962年の「ニッポン無責任時代」。

会社を首になった植木等が、口八丁だけで社長の相談役になり、接待や相手を上手く乗せ仕事を成功させ、どんどん出世して行く。調子の良さと口先だけで上手く立ち回る植木等がはしゃぎまくるコメディ。

まあ、有り得ない話でもあるのだけれど、植木等がちゃんと相手の嬉しい所や痛い所を突き、非常に交渉が上手く、しかも植木等が全然憎めないお茶目な人なので、成程と納得出来る説得力。植木等の魅力爆発で、笑かしの部分でも役者的にも良いし、植木等って素晴らしいコメディアンだったのだと改めて感心。
植木等が突然歌歌いまくる、ミュージカル映画的な映画なのだけれど、ミュージカルが苦手、大嫌いなわたしでも植木等なら照れなく見れるし、歌っても踊っても全く違和感が無いし、ニコニコしながらおもしろく見れる不思議な魅力がある。それに何でか知らないけれど「ハイそれまでョ」や「無責任一代男」といった歌を聞いた事ある。

映像的にもカメラは結構周り込んだり、前に人や何かが被ったり、編集も短く繋いだり、全然違う場面転換を急に入れたりと、今のドラマや映画よりも映像的演出が先鋭的。映像的にも飽きさせない。オープニング・クレジットが陽気な吹奏楽に色とりどりの背景で、1960年代のヨーロッパコメディ映画みたいだし。

60年代の、50年も前の映画なので、時代性がおもいろい。何度か会社の屋上が出て来るけれど、その周りの風景が曇り空なのかスモッグなのかの空に、灰色のビル、建設中ばかりのビルが囲み、今見るとSFの世界。しかし流行語のC調とか、トランジスタ・グラマーなんて今じゃあ意味不明。
ちゃんと社会性も取り入れ、会社の社員で組合を作って社長と対立とか、株式売買での会社の乗っ取りとか、結構真面目な内容も入れている。植木等自体がすぐさま首になったり、出世欲が強い割りにあっさり辞めてしまったりと、無責任な割りに責任感があるのか無いのか不思議な人物でもあるけれど、当時のサラリーマンの悲哀を象徴しているし。

クレージーキャッツメンバーが主役級だけれど、ハナ肇の息子役で峰岸徹が出ていてまだ18歳で、やっぱり演技派の役者でも若い時の演技は酷い。

トントン拍子で上手く行く展開的にもおもしろいコメディだし、何と言っても植木等の軽さ、調子の良さが前面に出まくりで、非常に楽しいし、非常に良く出来たコメディ。30作も映画が出来たのは成程だし、これ以外も是非とも見てみたい。

☆☆☆☆★
 
 
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