エネミー・オブ・アメリカ

2012年07月21日 土曜日

ウィル・スミスのサスペンス映画「エネミー・オブ・アメリカ(Enemy of the State)」。

サスペンスのはずだけれど、都合の良い展開と、頭の悪い、何がしたいのかさっぱり分からない政府関係者が敵でグッタグタに酷い映画。
初っ端から、暗殺現場がきっちりビデオで撮られているなんて、まあ偶然の都合良さだし、そこから彼らの間抜けさが始まっている。その録画データを持って逃げた人物が、たまたま飛び込んだ店で、これまた偶然に大学の時の同級生のウィル・スミスに出会ったので、何故か彼にこっそりその記録メディアを渡し、ウィル・スミスがその陰謀に巻き込まれて行く偶然。しかもウィル・スミスは、自分の弁護の仕事でテープ関連の問題を抱えていて、そっちのテープと相手が勘違いするという偶然。
展開が都合良過ぎなのに加えて、敵側の政府関係者が間抜け過ぎて、更にしょっぱい事に。初っ端で暗殺現場を撮影されている間抜けさから、ウィル・スミスがその撮影データを渡されたと考えているのに、彼の家に侵入してもそれを探す事もせず、隠しカメラや盗聴器を付けて監視を始めるし、その映像の奪還が目的なはずなのにウィル・スミスの社会的な信用の墜落、社会的に抹殺する事に全力注いでいるし、それが目的だったはずなのにいつの間にか彼を追っかけ回して、何時でも殺せたはずなのに命を狙っているという、何がしたいのかさっぱり行動ばかりで、訳が分からなくなって来る。
この政府の人間達を前半で「こいつら馬鹿だ!」と思わせるのは、馬鹿が権力持ったら危険過ぎるという事を描きたいのだと思うけれど、偶然が関連する展開と、間抜けな敵の間抜けな行動でそんな事も思う事も無く、ただしょっぱさ満開。

一番良く分からないのは、訳の分からない事が周りで起こり、旦那が不倫してると怒っていたのに、彼の買って来たクリスマス用のプレゼントの下着を勝手に着けて盛り上がっている奥さんだったりする。

コンピューターを操るのは、ガリかデブかだらしない格好をした若い男性という、典型的ギークって、今じゃあ使い古されて、もはやコメディ。

ジーン・ハックマンは全く政府を信じていない、自分で何でもしてしまう人でカッコ良いけれど、別に関係無い人。いなくても十分成り立ってしまう。
ジョン・ヴォイトはやっぱり悪役が似合う。
今や「Hawaii Five-0」のダノでお馴染みのスコット・カーンが出ている。まだ役者初期の22歳で、本当に若々しい。
あと、ミスター・ウーの奥さんが面白い程不細工。

アメリカって国家としてまとまりがある様には見えるけれど、個人の自由を求める方向性が強く、「合衆国」という名前からも分かる個の集まりだからこそ、個人の自由の阻害はいけないと言う話になる。この映画がそこを描き切っているとは全く思わないけれど。
ただ、これが日本だと「監視は安心・安全だから寧ろ推奨」で、監視カメラや携帯電話の普及だけでなく、昔からの村社会による近所の目の監視こそが素晴らしかった論で、安心感さえ得られれば個人なんて抑え込まれても当然と言う、気持ち悪さ。それなのに逃亡犯は何十年も捕まる事の無い、意味無いじゃんな何じゃそりゃ感タップリの間抜けさもあったりする。監視社会はアメリカだとサスペンスだし、古くからのSFなのに、日本だとファンタジーのコメディになってしまう。

硬派な陰謀サスペンスのはずが、偶然で出来過ぎた展開と、間抜けな敵のせいで、終始やりたい事を見せる為だけに意味不明な力技で持って行き、何だかなぁとしか感じない駄作。

☆★★★★

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