88ミニッツ
2012年07月22日 日曜日アル・パチーノ主演のサスペンス映画「88ミニッツ(88 Minutes)」。
連続殺人犯の死刑を決定付けたFBIの精神分析医だが、同じ手口の犯行が自分の教え子に再び起こり、更に「お前の命は後88分。」と言う電話がかかって来る。
アル・パチーノが過去の裁判で公正な判断を下していたのかが話の起点であり、事件の原因であり、アル・パチーノの横柄な態度もあって、彼は正しいのか見ている側を揺さぶる設定でもある。そこに過去の裁判の事を知っている周りの人物や、謎の人物が次々と登場し、誰もが怪しく、何がどうでどうなるのか惑わす話になる。
ただ、アル・パチーノは出来る博士という設定ではあるけれど、基本的に最後まで何が何だか分からないまま翻弄されまくるだけの展開ではあるのが、どうにも物足りない。展開が何か巧妙な仕掛けで翻弄する訳でなく、誰もが怪しいという部分だけで翻弄するだけ。誰もが意味有り気に怪しいけれど、そう見えるだけというのが多くて、結構何だかなぁ感は強い。主人公のアル・パチーノも精神分析医というその設定を活かし、何か策を凝らして相手を出し抜いたり…とかも無く、一切攻める事無くそのままてんやわんやに巻き込まれたままで進み、活躍する見せ場が極端に少なく、特ににんまりする事無く終わってしまい、折角のアル・パチーノなんだからもっと見せる場面があり、見せる映画でも良いのにと強く思ってしまう。
この映画、何で88分という中途半端な時間が期限で、題名にもなっているのかが良く分からない。一応話上は昔の事件に関連する88分だけれど、多分この88分の宣言から、この映画の終りまで自体が88分で、映画内の時間も88分が同時間で流れるという事なんだろうけれど、しかし映画はリアルタイムで進んでいる様でちょこちょこ編集してあり、常に作品内時間と実際の時間が一緒という訳でも無いし、88分と言う中途半端な時間の必要性とは一体何なのだろうと考えてしまう。
この映画で好きな場面は、アル・パチーノが乗っていた自動車が爆破され移動の足が無くなると、良くある刑事モノだとそこいらを走っている自動車の運転手に銃向け強奪したり、、警察手帳を見せて無理矢理自動車を借りて走りまくるけれど、この映画ではタクシーの運転手にお金渡して運転させてもらうという、至って普通な対応をする。だから、タクシー移動中、車内は重苦しい雰囲気なのだけれど、後部座席に見知らぬタクシー運転手がいるので変にほのぼのして、おもしろ感があって好きな場面。
アル・パチーノは何時もの笑わない、常に人を疑う様な眼差しで覗き込む様な演技で、きっちり演じている。確かに渋くてカッコ良いけれど、若い子にモテるのはどうなんだ。60過ぎのおじいちゃんだぞ。それに、もうすでにこの映画の時点で67歳なのに、良く走る。歳行った役者の良く走る映画って、がんばったで賞感が出て来てしまって、変にわたしの中の評価が高くなってしまう。
この映画のアル・パチーノは、髪の毛ボサボサで髭面なので、見た目がちょっとティム・バートンっぽい。
多分本当の若い時のであろう写真が部屋に飾ってあるけれど、若い時から厳しい顔していて、変わりはしていないアル・パチーノがちょっとおもしろかった。
周りの俳優は男性で目立つのはウィリアム・フォーサイス位で、女性の登場人物ばかり。しかも皆可愛らしかったり、色っぽかったりで、設定以上にアル・パチーノがモテ男に見えて来てしまう。
アル・パチーノの演技と存在感で持ってはいるモノの、話としては翻弄で流れて行くばかりで、不燃焼感が強い。悪くは無いけれど、展開の物足りなさはアリアリ。もうちょっと楽しませてくれれば良かったのにな映画。
☆☆☆★★