ザ・シークレット・サービス

2012年07月20日 金曜日

クリント・イーストウッド主演の映画「ザ・シークレット・サービス(In the Line of Fire)」。

ケネディ大統領暗殺を阻止出来なかったシークレットサービスの老年警護官が過去の事件を引きずりながらも、それを再び起こさない為に探り出した大統領暗殺計画を阻止しようと老体に鞭打つ話。

相手は偏執狂で、精神的に揺さぶりをかけて来るストーカーなジョン・マルコビッチで、その分かり易い敵は今見ると非常にベタな設定。徐々にイーストウッドを揺さぶるマルコビッチは良いのだけれど、マルコビッチが電話をかけて来てイーストウッドが居場所に急行、取り逃がすというのが何度も繰り返され、盛り上げが単調で、中盤辺りからはそれで引っ張り過ぎの感は強くなって来る。終盤の直接対決までが長く、もうちょっと別の展開を見せたり、小気味良くもっとまとめてもと思い始めてしまった。全体的に、監督ウォルフガング・ペーターゼンの1990年代の他の作品と似た様な、ちょっと大味、至って平均点な映画になってしまっている。
一方で、ちゃんとシークレットサービス設立時の本来の任務、偽造通貨の捜査・取り締まりを始まりのネタとして持って来たりしていて、手堅い作りと言えばそうだけれど、しかし突き抜けない感じは否めない。
見所は、やっぱり老体でも必死に走るクリント・イーストウッド。自動車の脇に立って警護しながら走ったり、自動車が向かって来る道路を逆走したり、屋上伝いに飛んだり跳ねたりと、とにかく彼が必死になって走る場面が良く出て来る。なので、どうしても、「クリント・イーストウッド、がんばったね!」と言う、映画の内容ではない感想が出てしまう。それは、わざわざ風邪気味な弱さを出す場面まで入れ、完全無欠のヒーローではない、年取って肉体的にしんどいし、過去とも決着を付けたくもあり、それでも必死にやっているクリント・イーストウッド自信をも表現している。

クリント・イーストウッドは何時もの渋いおっさん、おじいさんだけれど、レネ・ルッソといるとニコッと笑い、結構お茶目な部分も。警護する時にサングラスをかけない理由を「異常者に目を見せておきたいからだ。」というけれど、彼がサングラスするとハリー・キャラハンになるからなんじゃ?
やっぱりブレない、強いイーストウッドは見ていても良い。若い部下に対して「ウジウジ泣くな!アホらしい!」と言い放つ彼は、ヒーロー像として欲しい所をちゃんと突いて来る。
ジョン・マルコビッチはまだ若い、と言っても40歳だけれど、今よりもシュッとしていて顔はより怖い。役柄的にに容赦無い犯人だけれど、鬼みたいな顔してる。それに彼の七変化も見所。カツラを被り、キッチリしたビジネスマンから、だらしない若者風まで、色んな変装をする。
1990年代アクション・サスペンスでお馴染みのレネ・ルッソは何時ものレネ・ルッソ。
最早「ソウ(SAW)」の人になったトビン・ベルが、やっぱり悪人役で始めに出ていて「おっ。」と思ったり。

これ字幕だと思ったら吹き替えでガックリ来たら、クリント・イーストウッドの声が山田康雄だったのでガッツポーズ。

シークレット・サービスに焦点を当て、実際の事件を使いサスペンスを作り上げたのは1993年当時としては中々おもしろかったのだろうけれど、今見てしまうと90年代のベタなサスペンスで、話的にもっと使い切れる所を引っ張った割に余す感じで、話がイーストウッドに寄り掛かる部分が大きく、結局話や演出が平均点を抜け出ない感じを強く感じてしまう映画になってしまっている。

☆☆☆★★

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