エンド・オブ・ホワイトハウス

2021年09月23日 木曜日

アントワーン・フークア監督、ジェラルド・バトラー製作・主演の2013年のアメリカ映画「エンド・オブ・ホワイトハウス(Olympus Has Fallen)」

マイク・バニングはベンジャミン・アッシャー大統領の下でシークレット・サービスの隊長として働いていたが、大統領一家の移動時に起きた事故で大統領夫人を助け出せずに死なせてしまった。
それから18カ月後。マイク・バニングは財務省で働いていたが、ワシントンD.C.の上空に現れた飛行機が無差別に攻撃をしているのを目撃する。
その飛行機がホワイトハウスに向かったのでマイク・バニングもホワイトハウスへと向かうと武装集団が襲撃しており警備官達と共に応戦するがホワイトハウスの警備官達は全滅しマイク・バニングだけが生き残った。
武装集団が大統領や官僚を人質に取った事を知ったマイク・バニングは一人で武装集団と戦い大統領を救い出そうとする。

映画「ホワイトハウス・ダウン」を見たので、「ホワイトハウス・ダウン」よりも少し前に公開された似た様な映画の「エンド・オブ・ホワイトハウス」も見てみた。

ハリウッド映画では設定や内容がほとんど同じ映画が近い時期に公開されるという事が時々起こるけれど、この「エンド・オブ・ホワイトハウス」と「ホワイトハウス・ダウン」も正にそれ。
ただ、この「エンド・オブ・ホワイトハウス」は雰囲気として深刻と言うか、やたらと人が死に過ぎで、「ホワイトハウス・ダウン」はもっと娯楽大作の派手な爆発とアクションで方向性の違いはある。
違いはあるけれど、短時間でホワイトハウスが掌握されて、従軍経験のある警備官が無敵に一人で行動し、子供を助け出す事と大統領を助け出す事が目的で、敵は核兵器を使って世界を滅茶苦茶にしようとしていて、最後に大統領が敵に撃たれるけれど無事で助かるというほぼ同じ要素で構成されている。
これって、どっちかの製作者がどっちかの脚本を盗み見したのかでしか思えないんだけれど、そうではなくてホワイトハウスが陥落するという基本設定が同じで、脚本作りの時にハリウッド的定型にはめて行くとこうなってしまうという事なんだろうか?

内容は「ホワイトハウス・ダウン」と同じく、ホワイトハウスが占拠されないといけないのでアメリカも韓国も安全保障がとにかくざる過ぎで、精鋭が揃っているはずの警備官達は圧倒的に弱く、政府の情報機関はあれだけの大規模な攻撃の計画の情報を全く収集出来ておらず、外の人達は後手後手で何もせず、外からは核兵器の使用を中止にも出来ずに終わりを待つだけで、そんな中で主人公一人だけが活躍する、主人公最強。後の人は皆無能という形で、先に「ホワイトハウス・ダウン」を見てしまったのでこれが既視感しか感じなく、内容的にも如何にもハリウッドのアクション映画で大しておもしろくない。

不思議だったのが、「ホワイトハウス・ダウン」では主人公の娘だからと言う部分はあるけれど、娘が活躍したり、娘を人質に取られて困るという娘の存在意義があったのに、この「エンド・オブ・ホワイトハウス」での大統領の息子は序盤で助けてお終いであんまり存在意義が無かった事。
大統領の息子は序盤にホワイトハウスの中の知識をひけらかす場面があったので、それを活かして主人公を助けたりするのかと思ったけれど、そんな事も無く、内部を良く知っていたので助かりました位の意味しかないので、やっぱり大統領の息子の存在意義が疑問。

あと、敵がヤバい奴という設定はあるものの頭の悪さのヤバさの方が気になり、この作戦が成功しようが失敗しようがこんな事すれば北朝鮮はアメリカに焼土にされるか占領されるか、中国やロシアが絡んで来て世界大戦で世界中が焼土と化す可能性もあるのに、北朝鮮が韓国に侵攻して朝鮮半島を統一してめでたしめでたしになる訳ないじゃん。
「ホワイトハウス・ダウン」の犯人も相当ないかれた人物だったけれど、こっちの方が脚本的に酷い様に思えてしまった。

気になったので脚本家を調べてみると、クレイトン・ローテンベルガーカトリン・ベネディクトの二人が脚本を書いたのだけれど、この二人はこの時夫婦で後に離婚。
クレイトン・ローテンベルガーは元々は金融サービス会社の副社長で、その時にこの脚本を書き、脚本家としてはこの映画が初めてという何だかよく分からない経歴。
素人のこんな脚本が企画通って実際に映画になるって、アメリカの映画界ってよく分からないよなぁ。

それと、この「エンド・オブ・ホワイトハウス」と「ホワイトハウス・ダウン」を見比べて思ったのは製作費って画面上に出るモンなんだなぁと。
「エンド・オブ・ホワイトハウス」の製作費は7000万ドル。
「ホワイトハウス・ダウン」の製作費は1億5000万ドルと倍以上かけているだけあって、「ホワイトハウス・ダウン」の方がセットも作り込まれているし、爆発も派手。

あと「ホワイトハウス・ダウン」の方の大統領は望ましい大統領像を押し出しているけれど、この「エンド・オブ・ホワイトハウス」の大統領はほぼ政治的な姿勢も分からずで個性が薄い。
始めに主人公とボクシングをしていたので、絶対に何処かで犯人の攻撃をかわして殴り倒すとかの場面があると思ったのに、それは無く、結局初めの大統領の性格付けは何だったのだろう?と疑問。
この映画は今後何かある様な感じのネタ振り的な場面を入れる割に何も無いというのが多かった様に思えた。

「ホワイトハウス・ダウン」の方が派手でアクション映画の楽しさがあったけれど、監督がローランド・エメリッヒと言う事でローランド・エメリッヒ映画にしかなっていなかった事もあってか、製作費は1億5000万ドルに対して全世界興行収入は2億ドルと、多分宣伝費等を入れると結構な赤字で続編はないままで、この「エンド・オブ・ホワイトハウス」は1億6000万ドルを稼いで続編が「エンド・オブ・キングダム」と「エンド・オブ・ステイツ」の二作が作られていて、こちらのそこそこの製作費で深刻気味にやった方に軍配が上がっている。
わたしの感覚的には「ホワイトハウス・ダウン」の方が続編作られそうな感じではあったから意外。

この映画、シリアスな雰囲気ではあるものの、色々と都合の良い部分があって、昔からのハリウッドのアクション映画の延長線上にある一人のヒーローが活躍する為の映画で、そんなにおもしろくはない。
「ホワイトハウス・ダウン」を先に見たので二番煎じ感でおもしろさが半減している部分はあるだろうけれど、娯楽映画としては振り切ったローランド・エメリッヒ感の「ホワイトハウス・ダウン」の方がまだおもしろかったかな?
それにしても、やっぱりどっちも見ても何故同じ様な設定で似た様な映画を同時期に公開する必要があるのか?とは思った。

☆☆★★★

ドニー・ダーコ

2021年09月20日 月曜日

リチャード・ケリー監督・脚本、ジェイク・ジレンホール主演の2001年のアメリカ映画「ドニー・ダーコ(Donnie Darko)」

高校生のドニー・ダーコは精神に問題があったので精神科医に通い薬を飲んでいたが夜になると夢遊病で自分の意思の無いまま外に出て行ってしまっていた。
ある夜、現実なのか夢の中なのかにウサギの着ぐるみを着た人物が現れ、世界の終わりまで28日6時間42分12秒しかないと告げる。
ゴルフ場で目が覚めたドニー・ダーコが家に帰ると家に飛行機のエンジンが墜落してドニー・ダーコの部屋が壊れており、ドニー・ダーコは家にいなかったので助かった事を知る。
しかし、ドニー・ダーコに見える幻覚は更に増えていた。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうで、粗筋が意味深で不思議だったので見てみた。
終始捕み所も捕まれ所も無く退屈で、最後の落ちが分かってもおもしろくはなかった。

幻覚が見えて夢遊病で、普段の言動が少しだけ変な高校生の日常が延々と続き、これが全然おもしろくなく、結構序盤から集中力が切れてしまった。
ウサギにそそのかされて破壊し出すけれど、それは描かれていないので主人公の異常さが余り分からず、幻覚を見る精神的なきつさも表情には無くて、終始何を見せられているのやら?で全然興味は持てず。

最終的に主人公の妄想でした…と理解すると簡単だけれど、謎の竜巻でのタイムトラベルになると説明不足で訳が分からなくて、こっちから積極的に理解しに行くというのも面倒で、そこまで分析するだけの映画か?というのもあるし。

わたしの一応の理解は、主人公が見ていた幻覚は全て最後の夜から朝にかけての出来事だったので、主人公は一度か何度か、この出来事を経験していて見た事をはっきりとしない記憶の様なモノとして見ていて、その結末が恋人が死んで自分が殺人者になるという最悪な結末だったので、それを断ち切る為に飛行機のエンジンが落ちる時に自分の部屋にいたという事かなと思った。
だから展開的な都合の良さで全ての事が最後に収束する訳ではなくタイムトラベルがあったからなんだろうけれど、それでも謎のタイムトラベルは都合が良いだけで何のこっちゃ?だし、あの胸から出て来る映画「アビス」みたいな透明のあれは何で、いる必要あったの?だし、自分が死んでめでたしめでたしもいまいち意味が分からない。

話は全然興味が湧かなかったけれど、興味が湧いたのが役者。
主人公はずっと何処かで見た事ある様な?と気がしていて、エンド・クレジットでジェイク・ジレンホールだと分かって、そうかとなった。

学校の教師役でノア・ワイリードリュー・バリモアが急に出て来て、おっ!となったけれど、何故のこの二人なんだろう?
この二人が演じる事で必要以上に変に役の意味が出て、凄く思わせ振りな役になってしまっているけれど、特にドリュー・バリモアはドリュー・バリモアである必要も無い様に思えたし。
ドリュー・バリモアはこの映画の製作総指揮だからなんだろうけれど。

それに自己啓発家役はパトリック・スウェイジだし、精神科医役は「卒業」や「明日に向って撃て!」のキャサリン・ロスだったり、主人公の姉役はジェイク・ジレンホールの実の姉マギー・ジレンホールだし、主人公の母親役メアリー・マクドネルはノア・ワイリーが演じていたテレビドラマ「ER緊急救命室」のジョン・カーターの母親エレノア・カーター役だったり、配役の方がおもしろいじゃん。

この映画、話のほとんどを占める高校生の日常がどうでもいいし、退屈だしで、幻覚やウサギの謎で引っ張れる程興味が湧かないままなので最後のタイムトラベルとかどうでもよくなってしまった。
重要な部分を詳しく説明しないというのも興味を沸かせる手ではあるけれど、それはそこまで興味が持てるかどうかが大事なのに、そこまでがつまらないので、はいはい…で終わってしまった。

☆★★★★

ホワイトハウス・ダウン

2021年09月16日 木曜日

ローランド・エメリッヒ製作・監督、チャニング・テイタムジェイミー・フォックス共演の2013年のアメリカ映画「ホワイトハウス・ダウン(White House Down)」

下院議長の議会警察官ジョン・ケイルはジェームズ・ソイヤー大統領を尊敬している娘の為にシークレットサービスの面接を受けたが採用にはならなかった。
面接後にジョン・ケイルと娘はホワイトハウスの見学ツアーに参加していたが、ホワイトハウスが爆破され謎の武装集団がホワイトハウスにいた人々を人質に取り立て籠もった。
娘がいない事に気付いたジョン・ケイルは娘を探す為に武装集団と戦うが、ジェームズ・ソイヤー大統領も捕まってしまった事を知り、大統領を助け出してホワイトハウスからの脱出を図ろうとする。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので見てみた映画。

正に題名通りのホワイトハウスを舞台にしたアクション映画で、派手な爆発や次から次へとの銃撃や格闘場面の連続で中々おもしろくはあったけれど、所々で出て来る古臭い滑っている演出で覚めてしまい、見終わるとその悪い部分ばかりが引っ掛かってしまった。

アクションでは、主人公が一人で頑張って大統領を助けるのかと思いきや、大統領も結構戦いに参加して主人公と大統領のバディ・ムービーっぽい雰囲気で、戦闘には詳しい主人公とホワイトハウスに詳しい大統領が助け合いながら頑張る展開は楽しいし、格闘や銃撃戦もおもしろく見せていてワクワク感は結構ある。

ただ、その他諸々が何十年前のハリウッドのアクション映画の典型なんだ感が一杯で、まるでパロディ映画の様。

設定は閉鎖されて隔離された場所で犯人は人質を取り、敵は多数の中で主人公が頑張り、外の人と情報をやり取りするって、映画「ダイ・ハード」のナカトミ・プラザをホワイトハウスに変えただけの発想。

主人公は元軍人で離婚して自分に興味を示してくれない思春期の娘との仲が上手く行かず何とか振り向かそうという時点でベタ過ぎな人物設定で、初めの時点で娘は主人公をおびき出す為に犯人に利用されるというのが丸分かり。
しかも、主人公は自分の名前と娘の名前が書かれたチケットをキッチリと持ち歩き、終盤でキッチリと敵が気付く様に落とし、それを見て敵が娘の存在に気付く都合良さ。

ホワイトハウスが爆破されているのに気を抜き過ぎな警備官達は次々と殺され、様々な情報機関はあれだけ人がいるのに何も出来ずにやられ放題。

警護隊長は息子の復讐が目的で事件を起こしたけれど、自分の余命も無いから戦争起こして大勢死んでしまえ!と何だか分かる様で分からない理屈にして最終盤で話をデカくして、調べたら幾らでも分かるだろうと思う穴だらけな作戦で大丈夫だと思っている黒幕の議長で更にどんでん返ししたり、終盤になると脚本が雑に思えた。

敵も未だにこんな感じの悪役にする?と思ってしまう如何にもな設定だったり、頻繁に登場して個性の強かった髭の犯人は特に何もせずに退場するし。
その髭の犯人を倒した見学ツアーの案内人は傷付けないで欲しかった大事な美術品で敵を倒すとか、これが一番寒かったかも。

本当にこれを今やってしまうの!?と思ったのは、大統領が撃たれて死んだと思ったでしょ!でも懐中時計が銃弾を防いでいたので生きてました!というの。
これ、笑いでやっているかと思ったらそうでもなく、結構本気の「どうよ!」感を感じられて戸惑ったのだけれど、見終わった後にこの映画の監督がローランド・エメリッヒだと知って、だからか…と納得。
脚本はローランド・エメリッヒじゃないのに、この映画の「ん?」とつまづく部分は「ローランド・エメリッヒだから」で凄い納得出来てしまう不思議。

この映画、見た目は派手で、中身が詰まっている様でスカスカ感を感じる正にローランド・エメリッヒ映画。
ローランド・エメリッヒ映画は引っ掛かったり、つまづいたり、突っ込んだりした方が悪いのだろうなと思う程、常にローランド・エメリッヒだし、ローランド・エメリッヒを貫いているのでいいのだろうけれど、興行収入的には製作費1億5000万ドルに対し、全世界興行収入が2億ドルだったので、多分宣伝費を含めると結構な赤字だったはずで、2013年でも既にローランド・エメリッヒを貫かれてもなぁ…にはなっていたんじゃないだろか。

☆☆★★★

エリジウム

2021年09月09日 木曜日

ニール・ブロムカンプ製作・監督・脚本、マット・デイモン主演の2013年のアメリカ映画「エリジウムElysium)」

2154年。地球は人口増加や環境汚染によって荒廃しており、一部の富裕層は地球の衛星軌道上に作られたスペース・コロニー「エリジウム」に脱出し、病気や老化の無い満ち足りた生活を送っていた。
ロサンゼルスの工場で働くマックス・ダ・コスタは工場での事故で大量の放射線を浴びて余命五日と宣告されてしまう。
エリジウムに行けば健康な体を取り戻せるので、マックスは闇商人にエリジウムへの非正規脱出を頼むと、闇商人はエリジウムの市民の頭の中にあるアクセス権や財産等のデータを奪い出す事を条件にマックスのエリジウム行きを承諾した。
マックスは工場を経営するジョン・カーライルを標的にするが、ジョン・カーライルはエリジウムをコントロールしているプログラムを設計しており、彼はエリジウムの防衛庁長官ジェシカ・デラコートの政治クーデーターに加わり、エリジウムのプログラムを再起動出来るプログラムを頭に収めていた。
ジョン・カーライルからデータを奪い取ったマックスはエリジウムからの刺客に狙われながらもエリジウムを目指した。

一番の目的はSFだったからで、マット・デイモンも出ているので見てみたけれど、始めはおもしろそうな雰囲気があったのに見ているうちに徐々に典型的なハリウッド映画に収束して行ってしまい、見終わると物足りなさばかりを感じてしまった。

始めの、荒廃した地球の低層の粗末な住宅がびっしりと並んでいる町にドロイドや飛行機が飛んでいる様子は物凄く映画「第9地区」っぽさがあったけれど、近未来荒廃SFとしては良い雰囲気だし、その上空にはまるでビデオゲーム「HALO」の様なコロニーがあり、設定として中々良い感じ。
(後から調べて知ったけれど、監督のニール・ブロムカンプって「第9地区」の監督で、実現しなかった「HALO」の実写映画の監督に採用されたそうだけれど、正にそれらがそのまま)
ただ、後から思うとエリジウムの設定が別に宇宙コロニーである必要性がそれ程でもなく、地球の海上都市とか、隔離地域とかでも良さそうな感じ。
あれだけデカくて目立ち、結構簡単に衛星軌道上まで行ける技術や機器があるのでエリジウムへの憎しみでエリジウムへの攻撃やテロが簡単に行えそうなのに、エリジウム側にはほぼ防衛兵器は無く、地球上からの人力による攻撃で違法船を攻撃したりとか非常に手薄。
宇宙船に鉄屑とか大量に積んで何隻もの宇宙船でエリジウムに攻撃を仕掛けたら、撃ち落されても鉄屑がエリジウムに降り注いで簡単にエリジウムを壊せる様な気がしないでもない。
エリジウム側でも初めの違法移民の船が来た時には迅速にドロイドが動いていたのに、主人公や傭兵がエリジウムで暴れてもドロイドの警備も無いし、そもそもドロイドが全然出て来ないという都合の良さもあって、エリジウムの警備や防備がスッカスカ。

で、話はマット・デイモンが強化外骨格を付けての傭兵との戦いになる辺りからアクション映画になっておもしろくなるのだけれど、結果最後までこの傭兵との戦いだけで終わってしまい、ひとネタで引っ張っている感じが強くて、終盤では「まだやるの?」と感じてしまった。

主人公がずっと付け回して来る敵と最終的に殴り合って勝負をする。
元々気が短いのに文句に耐えかねた手下に黒幕は裏切られて殺されて、あっさりと退場。
主人公が自分の命を失って世界を救う。
等々、終盤の如何にもなハリウッド映画の展開の連続でしょうもなくなってしまい、盛り上がりの尻すぼみが物凄い。

最終的にエリジウムが解放されてめでたしめでたしみたいになっているけれど、どう考えてもエリジウムの医療を世界中に行き渡らせるとしたらエネルギーや資源的に考えて恩恵を受けれない人が続出だし、皆が健康で死ななくなったら地球での食料やエネルギーは絶対に足りなくなるだろうしで地球各地で紛争や戦争で更に荒廃が進むだろうし、エリジウムの人々も自分達の生活を守る為に攻撃に出るだろうしで悲惨な未来しか見えなかったのだけれど。

それにこの映画の設定となっている極端な貧富の差とそれによる待遇の差ってSFで極端に現実の比喩をしているけれど、最後の主人公の行動で世界が救われるって「現実でもそうなるはずだ!」って言いたのかしらん?
単に映画として英雄譚のハッピーエンドにしただけだとは思うけれど、そうだとこの世界の設定が現実の比喩として薄くなるだけだしなぁ。

あと気になったのは、時代が約140年後の結構な未来で、そのまま大気圏外まで行ける飛行機や何でも治せる超技術のカプセルがあるのに、UAVが現在のドローンと変わらずで時代遅れ感というか骨董品感が凄かった。
何でUAVはもっとSFを出さなかったのだろう?

この映画、雰囲気や設定はおもしろいのにそれらを活かしている気が余りせず、終盤に行けば行く程在り来たりなハリウッド映画になってしまって、なんだかなぁ…と勿体なさと残念感ばかりが募った。

☆☆★★★

サイレンサー/沈黙部隊

2021年09月02日 木曜日

フィル・カールソン監督、ディーン・マーティン主演の1966年のアメリカ映画「サイレンサー/沈黙部隊(The Silencers)」
サイレンサーシリーズの一作目。
ドナルド・ハミルトンの小説「The Silencers」が原作。

アメリカの諜報機関ICEのエージェントのマット・ヘルムはエージェントを引退したつもりでカメラマンをしていた。
しかしICEはビッグOという組織がアメリカでの原子爆弾の爆発を企んでいる事を知り、マット・ヘルムへビッグOを止める指令を出した。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうな映画の中でもサムネイル画像がポップで色鮮やかな感じだったので1960年代のコメディ・スパイ映画の楽しい感じを期待して見たのだけれど、終始間延びしているわ、台詞がおもしろい訳でもないわ、コメディとしてもアクション映画としても退屈だわで全然おもしろくなかった。

ディーン・マーティンが終始女性のけつを追っかけていて世界征服の阻止の話はどっか行ったままで、一人の女性がスパイで何もかも知っている、いや知らないの繰り返しで話を引っ張るのだから、ずっと何を見せられているのだろう?状態。
この会話劇がおもしろければまだしも、おもしろいジョークを言う訳でもないし、ドタバタ喜劇になる訳でもないし、ずっとこれはコメディなのか?と曖昧なままで笑える様な所も無し。

五十前のディーン・マーティンにアクションは期待出来ないし、スパイ映画としても騙し騙されのサスペンスは無く、ずっと退屈。

主演がディーン・マーティンなので突然ディーン・マーティンの歌う挿入歌が何度も入るのだけれど、その場でディーン・マーティンが歌う訳ではないのでミュージカルでもないし、その場の気持ちを歌った歌が流れるという演出が何処を狙っての演出なのかもいまいち分からず。

この映画、雰囲気だけは1960年代のポップでキッチュな楽しさがあるのに終始間延びしまくり、コメディとしては弾け切らずにのっぺりとしていて、スパイアクションモノとしてもおもしろくもないという映画。
この一作目のこの内容で既に終わりに次回作の予告が入っていたのは驚いたけれど、この当時のディーン・マーティンと映画会社との契約とかの問題で続編ありきだったのかなぁ?
続編もプライムビデオにあったけれど流石に見る気はしなかった。

☆★★★★