ポセイドン

2015年12月17日 木曜日

ウォルフガング・ペーターゼン製作・監督、カート・ラッセル主演の2006年の映画「ポセイドンPoseidon)」。
映画「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイク映画。

新年を迎えようとしていた大型客船ポセイドン号に突如高波が襲い、船が転覆。多くの人が船内で留まっている中、数人の人々が外へ出ようと船底へと向かい始めた。

確か、元の『ポセイドン・アドベンチャー』を見たはずで、「巨大なジーン・ハックマンによって引き起こされた高波によって船が引っくり返り、ジーン・ハックマン達が上の船底へと向かう」という話だった位しか覚えておらず、このブログでの感想を見て、「ジーン・ハックマンの役って、牧師だったのか。」位を確認して見たこのリメイク映画。

ウォルフガング・ペーターゼンと言えば、ドイツで「U・ボート」という傑作映画を撮った印象が強いのだけれど、アメリカに行ってからの「ザ・シークレット・サービス」とか、「エアフォース・ワン」とかの物凄い平均点的在り来たりなハリウッド映画、もしくはまとまっている風だけれど平均点以下の駄作を撮る様になってしまった監督という印象が強く、そのウォルフガング・ペーターゼンの船モノと言うのは「U・ボート」から期待はしていたけれど、この映画はまとまっている風だけれど平均点以下の方の映画だった。

映像的には、高波を受けて引っくり返り、一旦船の明かりが消えて再び明かりが付く様な場面や、ドンドン水が迫ったり、水位が上がって来る所等、緊迫して良い場面もあるけれど、脚本が酷過ぎる。
始まりでキッチリ人物紹介した人々だけが脱出班として活躍する分かり易さの時点でしょっぱさを感じていたけれど、その人物紹介が何にも繋がって来ないので全く必要の無い設定。
例えば、カート・ラッセル演じる役は元消防士で元ニューヨーク市の市長と言う非常に特殊な設定を付けているから、普通は消防士時代に培った技術や能力でこの危機を乗り切るのかと思うのに、それを発揮していますと言う様な場面や活躍を見せないし、市長だからどうのこうのという重要なやり取りがあるのかと思いきやそれも無し。これって、カート・ラッセルと言えば「ニューヨーク1997」でニューヨークで暴れたスネーク・プリスキンや、「バックドラフト」で消防士を演じたと言う様に、彼の代表作から取った、カート・ラッセル好きに向けてのくすぐりだけの為に入れたんじゃないの?
カート・ラッセルの娘と付き合っている彼氏の話も見せた割に、この新たに父親になるのかどうかの二人の関係を大して描かずおざなりのまま、娘の父親に対する気持ちもはっきりしないままで終わらせるし、この関係性も全くの無意味。
この彼氏も、鉄柱に足を挟まれて動けなかったはずなのに次の場面では元気に瓦礫を渡っていて、怪我はどうしたの?状態だし。

それに、歳を取ったゲイの設計士が出て来るんだけれど、設計士ならこの窮地で「何処に何があるかを知っていて、実はここが道になる」とか、「ここは通れるはずなのに、手抜きや建築費を浮かした為に通る事が出来ない!」とかの展開の為に出して来たかと思ったら、そんな設計士の設定を活かす展開が一切無い。この設計士ではなく、何故か船の構造を良く知っているジョシュ・ルーカスが船にある船内図を見て皆を導くと言う展開にしているし。
この設計士、弟に会いに行く女性の密航を手引きした船員を蹴り落として見捨てて自分が助かるという展開があるので、後半でこの女性とのこの出来事の話があるのかと思いきやそれもないし、彼と別れて自殺しようとしていた振りも何にも発展しないし、この役の存在意義、出して来た意味が全然分からない。

他の登場人物はそれなりに人物紹介を見せるのに、ほぼ主役であるジョシュ・ルーカスに関してはギャンブラー?っぽいと言うだけで何者なのかは分からず、何で船に詳しいのか?どうして一人超人的に活躍するのか?等の理由が全然見えて来ない。

登場する女性の描き方も結構酷く、ほぼ文句を言って泣き叫ぶだけで活躍らしい活躍も見せない。
閉所恐怖症なのか、水が怖いのかも分からないままパニック状態になる人物設定って何だ?いる?

それに新年を迎える設定は必要?「新たな年なのにこんな目に…」等の台詞も一切無いし。
結局何であれだけの高波を全然感知出来なかったのか?地震とかが原因だったら情報入らない?そんな情報が入らない船なのに、船が沈没したら速攻ヘリコプターが飛んで来るって、何処の陸の近場航行してたの?とかは一切無視だし。

展開もこれだけ序盤で各人物の背景を見せておきながら、それに関する関係性や物語を見せずに次から次に問題に襲われるというだけのアクション映画で、それがまた「上から落ちてきそうなエレベーター。下は尖った金属。後ろは火」という極端な窮地や、「泳いでいて分かり易く出っ張った障害物に当然の様に引っ掛かる」とか、次から次へと安っぽく、見え見えな展開を見せるので非常にしょうもない。
映画だとしょうもないけれど、これがゲームだったら非常におもしろそう。かつてスーパーファミコンのゲームで転覆した船から生存者を探し脱出する2D横スクロールゲーム「セプテントリオン」があったけれど、今の技術で一人称視点のこの映画の様な設定のゲームがあったらおもしろそうなのに。脱出方法も幾つもあり、プレイする度に開いたり開かなかったりの扉やハッチ等のランダム要素があれば、行けそう。

あと、ポセイドンと名の付いた船は必ず沈むもんなんだから乗っちゃダメ。
「ポセイドン号」「タイタニック号」「アルゴノーティカ号(ザ・グリード【Deep Rising】)」は世界三大乗ったら駄目な豪華客船。

この映画、やっぱり及第点以下のウォルフガング・ペーターゼンのハリウッド映画。脚本家のマーク・プロトセヴィッチが駄目だったのかもしれないけれど、人間ドラマを見せますよ!と言う風な人物紹介から全然人間ドラマが無く、単に都合良く窮地が迫るだけの映画で、本当は各人のドラマも見せていて撮影していて元は二時間半から三時間あった所から、その人間ドラマ部分を全て編集で落としてしまったかの様な、まるで地上波で流れている酷い悪編集の短縮版を見たかの様な映画。映像的には大作風なのに、人間ドラマを全然描かないので何だか非常にこじんまりしたままで終わってしまうし、セットや映像は力入っているのに監督・脚本・編集が適当に仕事熟したかの様な感を受けてしまった。

☆★★★★
 
 
関連:ポセイドン・アドベンチャー

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