エアフォース・ワン

2013年04月25日 木曜日

ハリソン・フォード主演、ゲイリー・オールドマングレン・クローズ共演の1997年の映画「エアフォース・ワン(Air Force One)」。

ロシアからの帰り道、大統領専用旅客機エアフォース・ワンがテロリストによって乗っ取られた。人質を取られ、外から手出しが出来ない中、飛行機から脱出したと思われた大統領がまだ機内に残っていて、敵に知られず行動しテロリストと対決する。

まあ、基本的に無理が通ってしまう話。あっさり警備や身元調査を潜り抜け大統領専用機に乗り込めてしまうテロリストとか、常に訓練しているはずの選び抜かれた大統領護衛官が六人のテロリストにやられまくって、あっさり飛行機乗っ取られるし、護衛官が活躍せずに大統領が銃をぶっ放してテロリストやっつけるしで、無茶苦茶やり放題。
何と言っても、このハリソン・フォードのしょっぱさよ。大統領なのに何故か一人で銃を持って戦い始めた時点で笑けて来るのだけれど、政治家の彼が一人で行動せずに、まず飛行機の他の護衛官と連絡付けて行動を起こさせようとしたりもしない、一人勝手の目立ちたがり屋が問題で、更に仲間が殺されそうになっても見殺しにするけれど、自分の家族が殺されそうになると「交渉はしない!」と言っていたはずなのに、あっさりテロリストの言う事を聞いてしまう、映画のヒーローとしても、人としても駄目な人物。それに、護衛官や仕事仲間が殺されたり、撃たれたりしても一切気に留める様子は無い最低な人間。一方で、だから強硬派の大統領で、ある意味分かり易い政治家。ずっと見ていたら、こんな大統領の為に自らの命を投げ出す護衛官や兵士が可哀そうになって来た。
こんな大統領だったらアメリカ人は不安過ぎてたまらないだろうなと思っていたら、海外の映画情報サイトの「The Credits」の「映画やTVドラマに登場した大統領の中で現実にいたらいいな!」というアンケートだと、このハリソン・フォードが演じたジェイムズ・マーシャル大統領が23%の支持を得て一位だそうだ。どう考えても「うそっ!?」なんだけれど、投票総数が501なので100人強の投票でこのハリソン・フォードが一位になってしまっているので、向こうの人達の悪乗りなのか本気なのか分からない。
それにこのゲイリー・オールドマンを筆頭に、悪役達が頭が悪過ぎて見ていられない。飛行中の飛行機内で機体に「穴開いたら危な過ぎなんじゃないの?」とかも関係無く、行き成り銃を撃ちまくっているし、運転中の操縦士をいきなり撃ち殺してしまいテロリストが運転する事になるけれど、その後飛行場で蛇行しまくって危うく飛行機ぶつけて大破しそうになるし、やる事が何故か上手く行っているけれどギリギリな事ばかり。そして、彼らの基本している事は飛行機の人を殺しているだけなので、もう頭悪くて見ていられない。何でゲイリー・オールドマンは、こんな役を引き受けてしまったのだろうか?
そもそも護衛官や軍人が何もしないとかの問題もあるけれど、大統領と合流しても大統領に危険な事を単独でやらせたりして護衛はしないし、携帯電話なのに何故かその人が肌身に持っている訳で無く、貨物室の荷物の中から運良くたまたま携帯電話を発見したり、その携帯電話も重要な会話の途中で電池切れで途絶えてしまうとか、脚本のしょっぱさも相当。無駄に人が死んで行く、殺してしまう展開はもはやコメディに見えてしまう。監督のウォルフガング・ペーターゼンって、おもしろい題材や設定を彼が撮ってしまうと、平均点以下のハリウッド・アクション映画にしかならない感じが物凄く強い。

役者陣は豪華なのに、その豪華さが無駄遣いだし、皆が見事に輝きを消されている。
このハリソン・フォードって、全然大統領に見えない。何だか生活に疲れた中堅企業の社長位の威厳しかない。役柄としては良い所の金持ちなぼんぼんな訳でも無く、下院から奥さんと二人三脚で這い上がって来た叩き上げの大統領だそうだけれど、それにしてはアホそうで、情けない感じが強くて、よくこんな政治家が大統領になれたなと思ってしまう位、大統領役が似合っていない。ハリソン・フォードって、映画史にも残る三大ヒーロー、ハン・ソロインディアナ・ジョーンズリック・デッカードを演じているのに、それ以外だと全然輝かない。この大統領役こそアーノルド・シュワルツェネッガーがすべき役。この大統領の言動や政策「対話はせず、ぶっ潰せ!」の姿勢を見ていると共和党員っぽいし、実際この映画の小説版では共和党の大統領だそうで、本当に共和党の政治家になったアーノルド・シュワルツェネッガーが、とにかくテロリストを殴り殺して行く方が分かりやすいし、絶対におもしろい。ハリソン・フォードは実際に当時大統領だったビル・クリントンと仲が良かったらしいく、民主党の政治家にも献金しているようなので、そこでも彼のこの役は似合っていないのかもしれない。
敵役のゲイリー・オールドマンは力入り過ぎ。大統領の問答無用で敵を殺してしまう政策や、ハリソン・フォードの立ち回る行動を正当化するという意図はあるけれど、ゲイリー・オールドマンは兎に角人を殺しまくる悪いテロリストで単に人殺しのサイコ野郎なのに、ゲイリー・オールドマンが張り切ってその役を演じているので空回っている感じ。
グレン・クローズは地上の司令部で判断、命令をしているので、ハリソン・フォード達とは雰囲気が違い、一人真面目な社会派サスペンス的演技をしているので、彼女もこの映画からは浮いている感じ。

それ以外にも脇役で、「CSI」のジム・ブラス役でお馴染みポール・ギルフォイルが護衛官で、「ER」のデヴィッド・モーゲンスタン役でお馴染みウィリアム・H・メイシーが将官役、「24」のジョージ・メイソン支部長役でお馴染みザンダー・バークレーが裏切り者の護衛官、「24」のシークレットサービスのアーロン・ピアース役でお馴染みグレン・モーシャワーが護衛官役で登場。特にグレン・モーシャワーが、大統領を守っている時点で笑ってしまい、その後あっさり死んでしまった事にも笑ってしまった。

この映画見る前に「NCIS 〜ネイビー犯罪捜査班」の第一話見たら、同じく大統領専用機内での死亡事件の調査で、登場人物の台詞にも「ハリソン・フォードの映画で見たぞ!」と言う物があり、この映画を相当意識している。「NCIS」はこの映画と比べたら地味で、予備機はデジタルロックではなく普通の鍵だったので簡単にテロリストが武器庫を開けましたとか、敵がマシンガンぶっ放しているのにギブスは避ける事無く相手だけを撃ち殺すとか、この映画と同じ「エアフォース・ワンに乗り込んだ記者が飛行機の武器庫から銃を持ち出し攻撃」という同じネタを地味にやっていて、何だかなぁ…な感じ。

この映画って、良く考えたら映画「ダイ・ハード」のナカトミビルを、大統領専用機にしてやってみたら見事に失敗してしまった映画。「ダイ・ハード」では外への要求と本来の目的が違い、見ている方も惑わしていた敵が、この映画では単に人質を殺して「釈放しろ!」と怒鳴るだけ。外にいて補佐する副大統領と連絡を取り合って敵に攻撃を仕掛けたりとかの配置の上手さもないし、会話劇のおもしろさも無い。何より、乗っ取られた飛行機内で気付かれずに一人だけが隠密行動をしているジョン・マクレーン的なおもしろさが無く、単に貨物室でグダグダとしているだけ。この主人公を大統領にしてしまったのが敗因。本来必死に頑張って何か行動すべき護衛官は何もしないままだし。これだったらハリソン・フォードの大統領そのままで、彼は交渉役として、若い護衛官が隠密実動員として戦えばまだましな話にはなると思うのだけれど。
これ共和党支持者が見たら燃えるアクション映画で、B級映画好きのリベラリストが見たら終始ニヤニヤしながら見る映画なんじゃなかろうか。

☆★★★★

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