ジュラシック・ワールド/炎の王国

2022年11月11日 金曜日

J・A・バヨナ監督、クリス・プラット主演の2018年のアメリカ映画「ジュラシック・ワールド/炎の王国(Jurassic World: Fallen Kingdom)」
シリーズ五作目で、ジュラシック・ワールドシリーズとしては二作目。

ジュラシック・ワールドが恐竜の暴走で崩壊してから三年後。
ジュラシック・ワールドがあったイスラ・ヌブラル島は噴火をし始め、残された恐竜達をどうするかが問題となっていた。
恐竜を保護しようとしていたクレア・ディアリングはロックウッド財団から恐竜達を別の島に移して人間のいない状態で保護する計画に参加して欲しいと依頼を受け、オーウェン・グレイディも誘ってイスラ・ヌブラル島へと赴いた。
しかし、ロックウッド財団の一団は恐竜を売りに出す為に捕獲し移送しようとしている事をオーウェン・グレイディ達は知ってしまった。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので改めて一作目から見始めて五作目。
一作目は非常におもしろく、その後二作目三作目と続いて行く度に尻すぼみ感一杯だったけれど、そこから十数年経っての続編「ジュラシック・ワールド」が余りにつまらなく、その続編のこの映画を見るのが結構億劫だったのだけれど見てみたら、やっぱり「ジュラシック・ワールド」よりもつまらなく、終始飽き飽きしていた。
前作の監督・脚本のコリン・トレヴォロウが今回は製作総指揮に回って脚本だけだけれど、やっぱり脚本はつまらないし、人物が薄いし魅力が無い。

「ジュラシック・ワールド」は恐竜テーマパークの開園と恐竜によって崩壊という一作目の「ジュラシック・パーク」のほぼ焼き直し感は、まあ新シリーズ一作目としてはそれしかないのだろうと思ったけれど、今回の「ジュラシック・ワールド/炎の王国」もテーマパークが崩壊して恐竜が自由に暮らしている島から外へと連れ出すという二作目の「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」のほぼ焼き直しになっている時点で既に発想が枯渇している感じがして乗って行けず。
初めから前作の登場人物達をかつてのジュラシック・ワールドに戻し、そこで恐竜に襲われ、一方財団は多くの人と物量で恐竜を捕獲して…って「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」と同じ設定で、なのでやっぱり財団が儲けようとする悪い人々で、アメリカに連れ帰った恐竜が暴れるという展開もほぼ同じで、その展開が初めから見え見えでワクワクも意外性も何も無い。
「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」で恐竜を運び出して制御が効かずに殺戮が起こった事も気にせず今回も恐竜が逃げ出し暴れるって、前作に続き、わざわざ同じ事して、また同じ失敗に陥るってジュラシック・ワールドシリーズの人達って馬鹿しかいないの?
「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」が結構いまいちだったのにそこに乗っかっている時点でおもしろくなる気はしないし、せっかく「ジュラシック・ワールド」として新起動させたのに同じ様な事をしていて新鮮味が無く、ジュラシック・ワールドシリーズに新たな何かを期待するのって間違っているのかと思ってしまった。

登場人物も魅力が無い。
オーウェン・グレイディは相変わらず背景も感情も見えて来ない。
前作からのヴェロキラプトルを操る事が出来るという設定が実はヴェロキラプトルを子供の時から育てていたからと前作で全然説明がなかった理由を後付けで描いてはいるけれど、そもそも何で元海軍軍人だったオーウェン・グレイディがまるで動物学者や飼育員みたいな事をしているのか、出来ているのかの説明は無いし、子供の時から恐竜が好きだったみたいな話も無く、恐竜との接点がまるで見えて来ない。
時々の行動もブルーを心配しているのか、していないのか分かりにくいし、そもそもオーウェン・グレイディの行動原理が分からないので主人公なのに気持ちが乗って行かない。
ブルーの事が行動原理の一つにあるっぽいけれど、最後にブルーとの会話らしきモノがあった以外はそもそものブルーとオーウェン・グレイディの接触自体が少ないってお座なりな脚本。

前作から変わらずクレア・ディアリングは只々うざい。
前作ジュラシック・ワールドの管理責任者で、責任者なのにインドミナス・レックスの管理が緩々でインドミナス・レックスが逃げ出し、それなのにお客を避難もさせずにどれだけの死傷者を出したのか分からない位間違いなく惨劇の原因の責任者なのに島に戻って来てもそれの悔いやトラウマは見せない人間的感情が欠落した人物で全くついて行けず。
始めの時点で特に責任を取ったりしていない様だし、かつての惨劇を周りから非難もされておらず、恐竜を保護しようと活動している時点でクレア・ディアリングって悲劇のヒロインなの…?とゲッソリしてしまった。
常に恐竜を助けようとしているけれど前作で死んだり怪我をして苦しんでいる人の事は一切頭に浮かんでいないの?とクレア・ディアリングの自分酔いに辟易していた。

クレア・ディアリングのやった事とか責任とかを描かない事もそうなんだけれど、前作も今作でも悪そうな人が恐竜に殺される所は描くけれど、それ以外の人が恐竜に殺された所を描かない狡さが嫌い。
普通の人々が襲われる部分を描かずに「恐竜との共存」とか言われても汚い部分や嫌な部分を隠して綺麗事を行っているだけにしか思えなかった。
恐竜でなくとも「動物との共存だ!」と言って動物園から草食動物や肉食動物を逃げ出させた所で警察等が全部捕獲するのが当たり前で、「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」でティラノサウルスが町中で暴れて人を殺しまくったから逃げ出した恐竜は警察だけでなく軍隊も派遣して全部捕獲か銃殺にしかならないでしょ。

そう思ったら、これってもしかして過激な環境テロリストを皮肉ったコメディなんだろうか?と思えて来た。
クレア・ディアリングなんかほぼそうだし、クローンだけれど命だ!は分かるけれど、恐竜なんて制御出来ずに本能のまま人間を襲い続けて来たのを描いているのだから外に出た恐竜が見境無く子供でも引きちぎって喰うのは当たり前で、それでも「恐竜との共存万歳!」ってやるんだろうか?
そこまでしてくれたらコメディ映画として分かりやすいと思うけれど。

恐竜保護グループの男女も、若い男性の方はギャーギャー騒ぐ昔からのホラー映画やパニック映画の典型的なウザい奴だし、若い女性はやたら高圧的で挑発的で、どちらも登場人物としての共感性や面白味も無くて、この二人もそういう典型をそのまましたパロディという事なんだろうか。
序盤ではこの二人は重要な登場人物っぽかったけれど中盤ではほぼ登場しないとか、やっぱりお座なりな脚本。

あと、前作に続きクレア・ディアリングを演じているブライス・ダラス・ハワードの演技が大袈裟と言うか、わざとらしいと言うか、凄く大根に見えて仕方なかった。
この人の演技も古い安いホラー映画に登場する女性を演じている無名な大根役者のパロディかと思えてしまった。

役者ではジェームズ・クロムウェルが出ていて、ジェームズ・クロムウェルって昔の映画でもおじいちゃんだったけれど流石に2018年では大分おじいちゃん。
でも、昔からおじいちゃんなので老け速度が非常に遅いとも思ってしまった。

ジュラシック・パークシリーズに出ていたジェフ・ゴールドブラムも出ていたけれど、ジェフ・ゴールドブラムもおじいちゃんになっていたなぁ。
ジェフ・ゴールドブラムは逆に1997年の「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」から二十年だから老け速度が早い気がした。

今回の目玉の恐竜インドラプトルも弱過ぎた。
前作のインドミナス・レックスはまだ「デカい」「凶暴」と分かりやすい敵恐竜だったけれど、今回のインドラプトルは中型位で、ティラノサウルスがいたりインドミナス・レックスを出しての次がこれでは見た目の強さが全く無い上にインドラプトルが暴れるのが洋館って最早何を見させられているのか意味不明。
演出も酷く、既にインドラプトルの全体像を見せているのに、その後にインドラプトル本体を見せずに雷に照らされた影だけが歩いて来るって何の意味があるんだろう?
これもホラー映画でのあるある演出をパロディ化した演出なんだろうか?

この映画、特に意外性も新鮮味もない展開に、共感性も面白味も無い人物達と見ていてもつまらなく、恐竜は本能のままに人間を襲うという部分をあえて見せずに恐竜は被害者で主人公達の行動は絶対的に正しいみたいな事をずっと見せられて、これは何かの洗脳映画か何かと思ってしまった。
これが「恐竜も生きている」とか「恐竜との共存」とかではなく、反省もしない馬鹿や無能に好き勝手させると大勢の人が死ぬだけという戦争や疫病に対する皮肉だとしたら分かるんだけれど、それは絶対にないんだろうなぁ。
恐竜映画としても一作目にあった恐竜が襲って来る恐怖やドキドキ感が全然無くてつまらないし、前作から製作側が好き勝手に遺伝子を弄った僕の考えた強い怪獣!が暴れる恐竜映画ではない怪獣映画になってしまって微妙さ満開。
もう、好き勝手に出来るのだから恐竜が火を噴いたり、サイボーグ化して制御したりとかまでやっても大して変わらない気がして来た。

☆★★★★
 
 
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