ジュラシック・ワールド

2022年10月31日 月曜日

スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、コリン・トレヴォロウ監督・脚本、クリス・プラット主演の2015年のアメリカ映画「ジュラシック・ワールド(Jurassic World)」
シリーズ四作目。

かつて開設しようとしていたが恐竜達の暴走で失敗し閉鎖されたジュラシック・パークだったが、二十数年後には同じ島にジュラシック・ワールドとして開設され大勢の人が訪れるテーマパークとして人気を集めていた。
ジュラシック・パークでは新たな恐竜インドミナス・レックスの公開を控えていたがインドミナス・レックスが檻から逃亡。
檻内だけで育てられたインドミナス・レックスは外部の環境に興奮して他の恐竜を殺し続けながらジュラシック・ワールドへと近づいていた。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので一作目から順番に見て行き、三作目まではかつて見た事があったけれど、この四作目、新三部作以降は見た事が無く、しかも製作費も旧シリーズから大分増え、興行的にも大ヒットしたというので期待して見てみたけれど、これがまあつまらなく、これまでのシリーズの映画よりも遥に落ちるつまらなさだった。

まず始まりから恐竜が現代に生きているテーマパークのワクワク感が無い。
何でまず最初に恐竜を見せて掴まずに、テーマパークにこんなに大勢の人が来てますよを出して来るのかが分からない。
恐竜のテーマパークで見たいのってそこじゃないじゃん。
一作目では登場人物達が色々お喋りしている所に恐竜を出し、そこから科学的説明をして行くって上手い展開だったけれど、この映画では折角の掴みでは上手い見せ方も無く、何だかよく分からないけれど子供達がジュラシック・ワールドに行く所から始まって、結局子供達がジュラシック・ワールドに行った動機とか理由もよく分からないままだったし掴みが全然だった。

今回の目玉のインドミナス・レックスも全然よくなかった。
これまであくまで恐竜を扱って来たのに、インドミナス・レックスは遺伝子を弄りまくって便利な怪獣でしかなくて、これじゃあない感が物凄い。
檻の外に出たと思わせる為に爪痕残したり、覚えていたからだという理由で体内のGPS装置を肉ごと取り出したりとほぼ人間的な発想をする賢過ぎで、赤外線を見るとか擬態までするとか最早怪獣になっており白けまくり。
わたしの感覚では、謎の異星生物の遺伝子組み込んで変な触手が出るとか、トランスフォーマーの遺伝子組み込んで恐竜から人型に変身するとかと変わらない位の恐竜じゃない感になっていた。

これまでのシリーズのレギュラー的なヴェロキラプトルも何だかなぁ…。
人間に育てられたら人間の言う事を聞くというのは、まあ遺伝子操作されているからもあるんだろうと何となくは理解したけれど、終盤でヴェロキラプトル達が放たれた時には周囲で光を照らしまくり轟音を発しながら高速移動するバイクや自動車に囲まれてもヴェロキラプトル達は全く気にせずインドミナス・レックスに直進する素直さな上、いざインドミナス・レックスに出会ったらインドミナス・レックスにヴェロキラプトルの遺伝子が足されているからという理由でヴェロキラプトルとインドミナス・レックスが会話し、ヴェロキラプトルはインドミナス・レックス側に付くとか馬鹿みたいな展開。
なのに最後にはヴェロキラプトルはインドミナス・レックスを襲ったり、でもティラノサウルスは襲わないとか、もう只々脚本に都合の良いヴェロキラプトルで、このヴェロキラプトルに感情移入させよう感が見え透いてしまって白けてしまった。

どの登場人物達もこれまでのB級アクション映画やディザスター映画等で散々見て来た様な薄っぺらい人物ばかりで興味を引かない。
主人公のオーウェン・グレイディはとにかく強くて賢くて、だけれど背景が全然見えて来ないという便利な主人公で、元海軍の軍人だったとは出て来るけれど、その海軍仕込みの何かが発揮される訳でも無く、知識や行動原理は動物学者や飼育員的で、ヴェロキラプトルを手名付けているまでになっているけれどそれはどうして?には一切説明はなく、元海軍軍人設定って必要だった?

管理者のクレア・ディアリングはこの手のアクションパニック映画に有り勝ちな危険察知能力が低く、より騒ぎを大きくしたりする人物で、しかも2010年代の映画で恐竜が来たらギャーギャー騒ぐという古典的なホラー映画に有り勝ちなうざい人物をやってしまっていて興ざめしかない。
しかも、初めは恐竜は数字として見てなかったのに死にかけた恐竜を見たら突然泣き出し、でも翼竜が襲って来たらためらわず銃で撃つし、自分達で作り出したインドミナス・レックスは凶暴で襲って来るのでティラノサウルスをぶつけて殺し合いさせても特に何も思わないって、この描き方何?
こういうその場の一時的な気持ちであっちこっちにぶれる人への皮肉?…でもないのか。
結局クレア・ディアリングの姉である子供達の母親との関係性や子供達との関係性も何だか分からないままで、こういう何の決着も見せない入れておいただけの話って酷い脚本。
それに加え、演じているブライス・ダラス・ハワードが下手と言うか大袈裟と言うかで見てられなかった。
普段海外映画の役者って演技が下手なのかはいまいち分からないけれど、このブライス・ダラス・ハワードの演技ってパニック映画だからなのか、わざとなのかいちいち大袈裟、わざとらしい演技ばかりで大根にしか見えなかった。

それにこの主人公二人の恋愛劇も見てられない。
オーウェン・グレイディが翼竜に襲われている所をクレア・ディアリングが助け、そこからキスとかゲロ吐きそうになった。
これって、この手の映画でのあるあるやクリシェとして笑いの演出として入れている訳ではなく、これを本気でやっているんだよね?
最後も「一緒にいよう!」ではなく、「これ見ろよ!これが俺達のやった事だぞ!お前が真面な管理も出来ず、あんな怪獣を作り出したからどれだけ人が死んだんだ!?」でオーウェン・グレイディがクレア・ディアリングを一発ぶん殴って爽快に終わって欲しかった。

あと、ヘリコプターが操縦出来るCEOが出て来た時点でこのCEOはヘリコプターで死ぬんだろうなぁ…と思ったし、ヴェロキラプトルを手懐けられて兵器化しようとしていた人はそういう話が出て来た所でヴェロキラプトルに喰われて死ぬんだろうなぁ…と思ったし、ここまでそのままな安っぽい展開に辟易してしまった。

CGに関しても、やっぱり動物や生き物のCGって動かし過ぎ。
他の映画でも生き物のCGはそうなんだけれど、やたらと全身のあちこちが常にヌメヌメと動き、巨大な恐竜でも有り得ない素早さで動きまくるから如何にもCGアニメーターが作った感ばかりで現実味が無い。

この映画、これまでのシリーズよりも稼いでいるけれどシリーズ最低作。
やっぱり脚本がつまらない。
これまでのシリーズのおもしろそうな所を集めているけれど、それがこれまでよりもおもしろくなっていないし、恐竜はただの襲って来る怪獣でしかないし、これまでのシリーズで散々恐竜は危険で現代に蘇らす事の問題を描いていたのにそれが何にも役に立っておらず、そこの教訓的なモノも全く無いし、特に三作目ではアメリカ本土でティラノサウルスが暴れて人が死にまくったのにジュラシック・ワールドが開設出来ている訳は都合良く一切無視しているしで、ジュラシック・パークシリーズの遺産を使って予算をかけてC級パニック怪獣映画作りました位にしか思わなかった。
SFや恐竜のワクワク感や恐怖を描いたのがジュラシック・パークシリーズだったけれど、最早ジュラシック・ワールドなのでジュラシック・パークシリーズとは別のパニック怪獣映画として、そういう映画として振り切ったとしたから問題は無いのかもしれないけれど、それでもこれまでの典型やクリシェに面白味を感じなかった。

☆★★★★
 
 
関連:ジュラシック・パーク
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   ジュラシック・ワールド/炎の王国

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