ボーダー

2016年07月23日 土曜日

ジョン・アヴネット製作・監督、ロバート・デ・ニーロアル・パチーノ共演の2008年のアメリカ映画「ボーダー(Righteous Kill)」。

三十年間ニューヨーク市警で働き、コンビを組んで来た刑事トム・コワンとデイブ・フィスク。その二人が関わって来たこれまでの事件で容疑者が裁判で無罪になり釈放されたその容疑者達が次々と何者かによって殺害される事件が起こった。
しかし、トム・コワンがその事件について自白するビデオが存在しており、本当にトム・コワンが犯人であるのかどうか、その事件を捜査する二人を見せて行く。

ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノという名優二人が、「ゴッドファーザー PART II」「ヒート」に次いで三回目の共演という事で期待をして見たけれど、その期待を全く裏切る酷くつまらない映画だった。

つまらない理由としては二つ。二人の配役であり、人物設定が間違っているのと、展開が余りにも見え透いてしまっている事。

ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノがベテラン刑事を演じているのだけれど、この時ロバート・デ・ニーロは65歳、アル・パチーノは68歳と、どうみてもおじいちゃんで現場の刑事としては歳を取り過ぎて、物凄く違和感ばかり。
カレン・コレッリを演じるカーラ・グギノは当時37歳で、この物凄く若い相手とおじいちゃんのロバート・デ・ニーロが付き合っているのには嘘っぽさしかないし、ロバート・デ・ニーロが警察署の若手と同等に野球をしている時点で無茶が有り過ぎなのに、その若手と途中で揉めだすとか、下品な冗談を言い合ったり、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノは高校生や大学生の「俺達親友!」的なノリでイチャイチャしている感じとか、60歳過ぎのおじいさんがやる役じゃあない。
定年間近っぽいのに射撃は百発百中という冗談みたいな人物で体力の衰えとかは全然無いし、30代か40代辺りの設定だったら、まだ分かる人物設定なのに、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが演じる役じゃあない。これまでの刑事人生を顧みての話も無く、この二人の人生が全然見えて来ず、作り物の老年刑事を無理矢理ねじ込んだ感しかしない。
これって、配役担当がどうかしていたか、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノに合わせて役を作る気が全く見られない脚本家がどうかしているかのどっちなんだ?

映画の始まりから、快活な音楽と短い編集でカッコ良い感じにしてはいるんだけれど、そこに映っているのは射撃場でロバート・デ・ニーロとアル・パチーノのおじいさん二人が棒立ちで銃を撃ち続けているだけというしょうもないという時点で、「あれ?これ何なん?」と疑問に思ったけれど、それがやっぱり映画自体の駄目さを表していたのか…。

話は謎の人物が犯罪者と思われる人物を次々と殺して行くので見付け出す話なのに、もう早い段階で犯人が分かってしまうという、どうしようもない脚本・演出・編集のせいで全くサスペンスにも推理モノにもなっていない。
ロバート・デ・ニーロが「自分がやった。」と自白しているビデオを早い段階で挟んで来るけれど、実際の捜査ではそんな素振りや想いは全く見せておらず、しかもこの連続殺人事件については潔白なロバート・デ・ニーロ視点で話が進んで行くので、見ていたら「じゃあ、ビデオの自白は誰かを庇っているか、無理矢理言わせられているかのどちらかでしょ。」と思い始め、早い段階で誰が犯人なのかが分かってしまう。
しかも、色んな登場人物に「こいつは怪しい…」という分かり易いミスリードがあるのに、その真犯人には大して怪しみを入れて来ないのだから、見え透きっぱなし。
余りに見え透いた展開なので、「これは何かどんでん返しが来るぞ…?」と期待もするのに、そんなどんでん返しも無いまま、非常に真っ直ぐに話は結末を迎えてしまう。
しかも、見ていたら序盤で犯人が誰かなのかは気付くのに、そこから延々とその真犯人は怪しくない…こっちの人物が怪しい…と引っ張りまくるのだから、まあ話が退屈。

ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの演技は役が全然60代じゃあないので、おじいさんが20歳位若ぶった演技になってしまっていて変な感じ。
50セントとか、ジョン・レグイザモとかも出ていて、周りの登場人物達も個性が強いのに役が大して立って来ないというのも脚本が駄目だからなんだろうか?
ジョン・レグイザモの相棒の刑事が、登場した時一瞬「あれ?マーク・ウォルバーグ?」と思ったのだけれど、その役を演じているドニー・ウォルバーグはマーク・ウォルバーグの兄なのか。マーク・ウォルバーグの兄さんも役者とは知らなかった。

監督のジョン・アヴネットの映画「88ミニッツ」もアル・パチーノが主演だったけれど、「88ミニッツ」も周囲の人物達がやたらと怪しく、主人公が翻弄されるだけという部分で似ているし、この映画の脚本家ラッセル・ジェウィルス?ジェワーツ?(Russell Gewirtz)が脚本を担当した映画「インサイド・マン」も重要な部分が結構見え透いているのに引っ張るのは同じだったしで、この二人の組み合わせはマイナスとマイナスでかけてプラスになる訳はなく、単にマイナスとマイナスを足して更にマイナスが増えただけだったか…。

そう言えば、この映画で一番気になった所が、オープニング・クレジッツを見ていたらやたらとproducerが表示された事。「producer」と付く製作関連の人14人もいる。この多さって、何の理由なんだろうか?単にロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの共演という美味しい部分でワラワラと集まって来ただけ?

この映画、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの共演という大きな看板があるのに、それさえも活かさない酷い人物設定に加え、捻りがある風で何の捻りも無いままの酷い脚本に演出。まさに名優二人の無駄使い。
ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノって、この映画の脚本を一切読まずに「良し!共演しましょ!」ってなったんだろうか?

☆★★★★

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