スタートレックV 新たなる未知へ
2025年12月25日 木曜日ウィリアム・シャトナー監督・原作・主演の1989年のアメリカ映画「スタートレックV 新たなる未知へ(Star Trek V: The Final Frontier)」
テレビドラマ「宇宙大作戦」のその後を描いた映画五作目。
前作で大佐に降格となり、新たなU.S.S.エンタープライズAを与えられたジェームズ・T・カークだったが、旧式の船を改装した為に修理に入ったエンタープライズが乗れないのでスポックとレナード・マッコイと三人で休暇を取っていた。
そこに司令部からニンバス3号星で惑星連邦、クリンゴン、ロミュランの大使が人質に取られたので助けに行けとの命令が入りエンタープライズAで発進した。
ニンバス3号星に行くと大使達を人質に取ったのはヴァルカン人のサイボックで、サイボックはスポックの異母兄弟だった。
サイボックはカーク達も人質に取り、エンタープライズを乗っ取り、彼が神がいると信じる惑星シャ・カ・リーへと向かった。
インターネットで色々調べていたらYoutubeで「宇宙大作戦(TOS)」の映画が無料で公開しているという情報を見つけ、一作目から順番に見始めての五作目。
この映画シリーズの中では四作目の「スタートレックIV 故郷への長い道」だけは以前に見た事があったけれど、一応再確認と思って見直してからの五作目。
序盤や中盤までは結構おもしろく見ていたのに終盤になると急激につまらなくなってしまった。
始まりの休暇での特に何かが起こる訳でもなく、真面目過ぎでボケになっているスポックに激しく突っ込むマッコイと、間を取り持ちつつ二人に乗っかったり突っ込んだりするカークの会話劇が抜群におもしろく、今までの映画を見て来て思っていたこの三人のトリオ漫才がもっと見たいというのをやってくれて嬉しくなって見ていた。
その後も、ポンコツなエンタープライズAに色々と文句も言いつつ、交渉もせずにサイボックの所に自ら乗り込んで行って力で解決しようとするカークは歳を取っても変わらないやっぱりのカークだし、そこでの派手な銃撃戦やもっちゃりではあるけれどのカークのアクションを見せたり、三人が捕まってからもまたトリオ漫才が始まったりと、見せ場もあるし王道なハリウッド映画になっていてウィリアム・シャトナー結構やるじゃんと思って楽しく見ていた。
ただ、流石にウラの裸踊りは何だこれ?とは思ったけれど。
そこからサイボックの話になって行くとここからが急激に何じゃそりゃ?が多くなって覚めて行った。
サイボックの話を聞くと洗脳?解放?されてサイボックの言う事を聞く様になったけれど、この特殊能力については詳しい説明も無く、これが何なのかよく分からず、一人一人結構時間をかけてカウンセリングをやって行ったの?だし、その間他の人達は黙って待っていたの?だし、同じ様にしたスポックとマッコイは何でサイボックに従わなかったの?これが友情の力?だし、この力で皆を従わせないとエンタープライズをサイボックの思う通りに動かせないので他の人は強制的に支配下に置くという事で悪役になっていたのに、船の支配で一番重要だろうカークは何故か除外して妙に話が分かる人でもあったりと、サイボックが敵役としても、そんなに悪い人でもなくて単に自分の考えで突っ走っているという人物だとしても立ち位置が中途半端で身が入って行かない。
突如出て来た銀河の中心だと言うシャ・カ・リーとか、それを取り巻く通行不可能なグレートバリアとかそれ何?だし。
この超えた人がいない未知のグレートバリアの様なモノが「宇宙大作戦」にも出て来た様な気がしたので調べてみたら、このグレートバリアってこの映画が初出だった。
だったらもっと説明が必要なのにそこら辺は結構適当。
サイボックが言うシャ・カ・リーに神がいるからで皆が納得している感じだけれど、ほとんどの人はサイボックの洗脳?解放?能力で従っているはずで、ここら辺の描写が中途半端なので皆が急にシャ・カ・リーに興味を持っている説明が弱い。
それに銀河の中心だと言っていたけれど、ロミュランとの中立地帯近所にある銀河の中心って何?だし、誰も越えられなかったグレートバリアをポンコツエンタープライズがどうやって超えたの?だし。
シャ・カ・リーにいた謎の生命体も当然神や創造主でないのは分かっている事なんだけれど、この神の様な圧倒的な存在に翻弄されるって「宇宙大作戦」で何度も出て来たし、映画の一作目「スター・トレック(1979年)」やこの前作の四作目でも宇宙を航行する巨大な何かではあったけれど太刀打ち出来ない様な存在は映画でも既にしているのにまた?という既視感ばかり。
「宇宙大作戦」で何度もしていたのでてっきりジーン・ロッデンベリーがこういうのがお好きだったのかと思ったら、この映画での発案はウィリアム・シャトナーだったそう。
逆にジーン・ロッデンベリーはこの話に反発したそうで、それは実現しなかった映画の企画と似ていたという事もあったらしい。
この神の様な存在(名前としては「God」になっている)も、神の様な存在の割には最後にサイボックと掴み合いの取っ組み合いになったり、そんなに大きくはないクリンゴンのバード・オブ・プレイの銃撃で消滅したりと、まあしょっぱい。
カークを追って来ていたバード・オブ・プレイのクリンゴン艦長もクリンゴンの大使による説得でエンタープライズとの戦いにならないのは良いのだけれど、どうやって、何の理由で説得出来たのかを全く描かないので急にクリンゴンと仲良くしているのも全然納得出来なかった。
結局、この映画はカーク、スポック、マッコイや他の乗組員達を描く割にそれ以外がおざなりなので何じゃこりゃ?になっていた様な気がしてしまった。
それならいっその事、事件らしい事件が起こらずにトリオ漫才と乗組員達の日常コメディでも良かったのにと思ってしまった。
良かった部分では、これまでの映画でもまだエンタープライズの装置がオンオフスイッチだったのが後のLCARSっぽいデザインになっていて複雑な大型艦の機器として現実感が出ていた所。
これはこの映画が1989年公開で、既に「新スタートレック」が始まっていて、そっちのデザインが気に入ったウィリアム・シャトナーが「新スタートレック」のプロダクション・デザイナーだったハーマン・ジマーマンを連れて来たからだそう。
そう思うとスタートレックと言えばのデザインを作ったハーマン・ジマーマンは凄いし偉い。
更にこの映画のエンタープライズAの通路は「新スタートレック」のエンタープライズDの通路をそのまま使っていたそう。
「新スタートレック」からと言えばこの映画での曲も。
元々は一作目の映画の新たなメインタイトルとして作られ、何故かその曲をそのまま「新スタートレック」のメインタイトルにして、「新スタートレック」がもうシーズン2に入っていて、毎週放送される「新スタートレック」の曲として馴染んだ時に一作目以降使っていなかったのにこの映画で再びメインタイトルとして持って来る意味がよく分からなかった。
一作目でこの曲を作曲したジェリー・ゴールドスミスが戻って来たからという理由なんだろうけれど、それにしても多分この映画公開時のスタートレックファンもこの曲は既に「新スタートレック」のメインタイトルになっていたと思うのに、「宇宙大作戦」の映画の五作目で復活させるってどう思ったのだろう?
ウィリアム・シャトナーが連れて来たであろうで言えば、カークに航海日誌を持って来た下士官(役名は無く「Yeoman(アメリカ海軍の事務係下士官)」が結構目立つ様な所にいたので調べてみたら、この女性はウィリアム・シャトナーの娘のメラニー・シャトナーだった。
あと気になったのは、この映画シリーズでのクリンゴンは「宇宙大作戦」のクリンゴンから変わった額に突起のある方のクリンゴンで、この映画でもそうなのに、ロミュラン人の大使のケイスリン・ダーには額に突起があるロミュラン人では無かった事。
ロミュランは後のロミュランの見た目には合わせずに「宇宙大作戦」のままにしたのねん。
それでも何故かロミュラン人の特徴の尖った耳は何かで隠し続けたままだし、妙に明るい感じで全然ロミュラン人っぽくなかった。
この映画、カークとスポックとマッコイのトリオ漫才が楽しめると言う点で凄く良いし、おもしろかったのだけれど、SFの部分ではまるで「宇宙大作戦」かの様に映画でも何度も繰り返される同じ様な設定の話で飽きたし、唐突だったり説明が少なかったりと出来が良くなく、何とか最後に三人のキャンプで終わらせはしていたけれど、最初はあんなに楽しかったのになぁ…で終わってしまった映画でした。
☆☆★★★
関連:宇宙大作戦 シーズン1・2・3
スター・トレック(1979年)
スタートレックII カーンの逆襲
スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!
スタートレックIV 故郷への長い道