スローターハウス5

2017年08月08日 火曜日

ジョージ・ロイ・ヒル監督、マイケル・サックス主演の1972年の映画「スローターハウス5(Slaughterhouse-Five)」。
カート・ヴォネガットの小説「スローターハウス5」が原作。

ビリー・ビルグリムは老年を迎えていたが、過去・未来へと時間旅行をしていた。
過去に経験した第二次世界大戦でのドレスデン爆撃やアメリカ帰国後の結婚生活。そして、突如トラルファマドール星人に誘拐されてのトラルファマドール星での暮らしに自分の意識だけが飛んでいた。

わたしの事前知識としては、「カート・ヴォネガットのSF小説が原作」「時間に関係するSF」位しかなく見てみたのだけれど、全然SFじゃあなく、ドレスデン爆撃を思い出す記憶や意識に障害のある老人の妄想で、全く乗って行けず。

SF要素としてはトラルファマドール星人による誘拐なんだけれど、これが唐突な取って付けた話で、ジョークかと思う程戦争話とは乖離し、大分ポカーン…。
素直にそのまま理解するなら、戦争体験での自閉症的PTSDと、それを解決しようとする電気ショックによる酷い治療。飛行機墜落とそれに発狂した妻の死等、記憶や意識が混沌としてしまう程の経験を重ねた老人が衰えもあって、以前見たポルノ的な映画の女優とどっかの星で暮らすという自分が気持ち良い妄想の世界に行ってしまい、妄想が自分を捕らえる中で過去を走馬灯の様に思い出しているだけにしか思えないんだけれど。
特にトラルファマドール星のあの能天気な景色見ると、より妄想にしか思えないし。
あの飛行機を墜落させたテロリストも結局何だか分からないし、多分四十年以上経ってからの急な復讐も何で今更なのかも分からないし、ドレスデン爆撃以外の話の取って付けた感が物凄い。

トラルファマドールの登場で相当ズッコケてしまうのだけれど、本来の主軸であるドレスデン爆撃の話もいまいち弱い。
この映画を見てから知ったのだけれど、原作の「スローターハウス5」が書かれた1969年頃はまだドレスデン爆撃が知られておらず、実際にドレスデン爆撃を体験したカート・ヴォネガットが書いたという事で非常に重要な意味がある事を知った。
ただ、今にこれを見ても、散々映画等で見て来た第二次世界大戦のヨーロッパでの出来事を、特に盛り上がる話ではなく、自分の意志が見えず何を考えているのか分からない主人公の翻弄を淡々とずっと見せられても全然おもしろくもなかった。

この映画が基本的につまらないのは、やっぱり主人公の意志が見えて来ないからだと思う。
この主人公が何を考え、何をしたいのかが見えて来ないので、終始「だから何?」状態。
戦争に巻き込まれた人を描くにしても、主人公なのにその他大勢程度の薄さしかないし。
むしろ主人公の周りの人々の方が個性が立ち、活き活きとしているので、「主人公の話はいいから周りの人間の話の方が見たい」と思ってしまい、「そもそも話を引っ張るだけの主人公に対する共感性ってあるのかしらん?」と思ってしまった。
トラルファマドール星人は自由意志がどうのこうの言うけれど、一番自由意志が感じられないのがこの主人公で、この主人公を選んでいるのって何かの皮肉なのか、それとも超人的存在のトラルファマドール星人を宗教的な神とする比喩で、神って結局間抜けじゃん!という皮肉なんだろうか?
主人公の意志や感情が見えるのは最後の周りに面倒臭い人間がおらず、自分が憧れてた若いポルノ女優とセックス出来て「ウヒョー!」の非常にしょうも無い部分だし。

ずっと主人公の世話を焼き、何とかアメリカに帰ろうとしていた先生は人形一つ取ってしまい、それを素直に見せてしまった為に簡単に殺されたしまったけれど、大きな家具を盗もうとした主人公は身動き取れないのに助かったとか、何かよく分からない内に主人公は社会的地位を上げていたり、トラルファマドール星人に偶然誘拐されて楽しい理想の老後を過ごせたりと、主人公ってドレスデン爆撃に巻き込まれて壮絶な体験はしているけれど、ただただ偶然に運が良いだけという非常にしょうも無い展開。

それにこの主人公、死を悟った感じで過去も未来もどうのこうの言うのだけれど、この映画の最後の場面って、面倒臭い問題が一切無いトラルファマドール星で若いポルノ女優とセックスして子供が出来て「やっほーい!」でお終いなので、まあ言っている事と見せているこのチグハグ感たらない。

全ての時間軸が前後する編集や見せ方は良いのだけれど、編集を時間軸通りにならべると物凄くしょうもない。

この映画、今見ると退屈な戦争映画だし、SFとして見ると老人の妄想世界しか思えずSFには思えないし、非常にしょうもなかった。
原作小説だともっと丁寧に書いているのかなぁ?

☆★★★★

サイレント・ランニング

2017年08月07日 月曜日

ダグラス・トランブル監督、ブルース・ダーン主演の1972年のアメリカ映画「サイレント・ランニング(Silent Running)」。

地球上の植物が絶滅した為に宇宙船内で動植物を繁殖させる「再緑化計画」が八年間進められていた。
しかし、本部から突然の中止命令が発せられ、宇宙船のドームを爆破しろとの命令が下った。
宇宙船バレー・フォージで植物を育てていたフリーマン・ローウェルはその命令に納得がいかず、乗組員を殺害し、一人で宇宙船を航行させてしまう。

1970年代の低予算SF映画なので仕方が無いのではあろうけれど、それにしても主人公の心と行動の揺れ動きについて行けない上に、設定の色んな部分がお座なりなので、一々「?」と疑問ばかり出てしまって全然話に乗っては行けず、非常につまらなかった。

主人公は言わば自然回帰主義者で、自然と共に生きる事が望みなのに突然の計画中で頭に来てしまい次々と仲間を殺してしまう環境テロリストへと変貌。
ここら辺までは、まあそういう人物を描くという事は分かるのだけれど、ここから一人での生活の中でドローン達と遊びだし、ドローンが楽しくて仕方なくなり、気が付いたらあれだけ信奉して人殺しまでした動植物の世話をせずに荒れ放題状態になってからやっと足を運ぶ状態になってしまうのが訳が分からない。
この主人公、狂信的信念がある風で実は全く無く、仲間よりも動植物の方が心地良いので動植物を守り、動植物よりも自分に懐く様にプログラムしたドローンが心地良ければ動植物はほったらかしでドローンにはまり、ドローンの様な機械が気持ち良いのであれだけ否定していた合成食品に手を出そうとしとする非常に日和見主義的な自分の気持ち良い方にばかり傾く人物で、常に自分勝手。
あれだけ喧嘩して意見が合わなかった仲間なのに、殺した後に「嫌いじゃなかった」とか、自然を自分が守ろうとしていたのに最後はドローンに自然の管理を任せて、自分は他の人に自分のした事を知られたくない為にまだ動いているドローンと共に自爆とか、常に自分の都合だけしかないので、ちょっと哀しげな感じに見せてはいるけれど自業自得感と自分に酔うのが鼻に付いて仕方ない。

それに、始めは「科学は人を幸せにしない!自然こそが生きる道!」的な、1972年のアメリカの中にあった如何にもなヒッピー・ムーブメント的な説教臭さしかないけれど、それはまだ分かりやすい主張ではあったのに、否定していた科学の結晶であるドローンに心酔し、ドローンに自然を託して自然を科学技術で存続させて自分は死んでしまうという選択をしたら、結局この映画は何処に向けて何を言っているのかがよく分からない事になっている気がしてならないんだけれど。
最後を見たら、自然は科学によって保存され完全自動化されたら人間はそこには必要無い存在って事?

それにSFの設定が一々引っ掛かる。
この世界では地球は動植物等の自然が壊滅し、一方人間社会は病気や貧困や失業が無くなっているというのだけれど、植物が無いと地球の環境は激変しているのに貧困が無いと言う事は食べ物は一体何から作っているのだろうか?合成食品が出て来るけれど、その素は何なのさ?フード・ディスペンサーの様な分子を操作してあらゆる食品を作り出すレプリケーターの様な技術があるの?
「再緑化計画」を進めているのは何故宇宙空間?地球で隔離ドーム作ってやればいいじゃん。
しかも、わざわざ太陽光線の少ない土星辺りでやっているので案の定太陽光が足りていないし、宇宙船に問題が起きた時に救出とか時間かかるんだから、もっと地球に近い所でやればいいのに…。
「再緑化計画」をあれだけの規模でお金かけて八年も研究しているのに突然何の理由も無く中止って、何をする気でお金かけていたの?
中止でドームを爆破させていたけれど、つまり木端微塵に、跡形無く消し去らなければならない程動植物は危険視されていたのに逆に繁殖させようとしていた計画って、何?
主人公は八年も研究していたのに記録さえ付けていない様だし、植物が枯れたのは太陽光が無いのが原因という初歩の初歩さえ知らないとか、絶対本気で研究していた訳じゃないでしょ。
主人公以外の乗組員もまるで頭の悪い大学生みたいな軽いノリで、何が起こるか分からない宇宙での長期航行に何でこんな人選なの?見事に研究者である主人公とそりが合わず問題起こっているし。

この映画で話題に挙がるのはドローンの可愛らしさらしいのだけれど、わたしは逆にこのドローンが怖かった。
基盤によるプログラムで動いているのに、どうやら自己学習能力があって人間的というフランケンシュタイン・コンプレックス的な部分ではなく、その動き。
人型アンドロイドが人間的動きをするのは何とも思わないけれど、このドローンはでっかい箱型なのにユッサユッサと人間的な動きをすると言うか、どう見ても人間が入っている動きがに恐怖を感じてしまった。
あの足の幅から小さい人が入って足で歩いている感じにも見えたけれどドローンの高さが人間の身長よりも大分低いし…と思ったので調べてみたら、中には下半身を失った人が入っていたそう。

映像は1972年の映画なので、良く出来ている部分と安っぽい部分は混在している。
人工重力がある程の科学技術なのに、ドローンのプログラミングは基盤を直接溶接しないといけないと言うのはちょっと驚いた。当時の感覚ではコードを打ち込んでのプログラミングとか、何かを簡単に入れての行動命令とかの発想は無かったのか。
特に驚いたのが、主人公が薄い全身タイツだけで船外に出て、しかも靴に磁力があって船体に引っ付いているとかの様子も無くそのまま歩いているのは酷かった。

宇宙船の造形は良かったけれど、動く映像で見ると非常にミニチュアっぽい。これって、カメラの問題なのか、撮影方法なのか?
この映画のSFX担当のジョン・ダイクストラは、この映画の五年後に「スター・ウォーズ」のSFXを担当するけれど、「スター・ウォーズ」だとそんなにミニチュアっぽさは感じないのは、やっぱりコンピュータによるモーション・コントロールカメラとかの理由なんだろうか?

この映画、SFとしては突っ込み所多過ぎて、自然回帰や一人での宇宙での暮らしとかの発想が先行し過ぎの都合の良さだし、説教臭さや教訓的な話風にしているのに主人公はただ自分が気持ち良い方に行くだけという身勝手さしかないので全然付いて行けずで全然おもしろくなかった。
この主人公って、当時のヒッピーに対する皮肉なんだろうか?

☆★★★★

コラテラル

2017年08月06日 日曜日

マイケル・マン製作・監督、トム・クルーズジェイミー・フォックス共演の2004年のアメリカ映画「コラテラル(Collateral)」。

タクシードライバーのマックスが偶然乗せた男が暗殺者で、彼に強引にタクシーを運転させられながら彼の暗殺の手助けさせられる事になる。

マイケル・マン、トム・クルーズ、ジェイミー・フォックスと有名所が並び、トム・クルーズが悪役を演じた事でも話題となり、夜のロサンゼルスのお洒落な雰囲気や殺伐とした二人の会話劇等、話題性があったり、見せる映画でもあるけれど話は非常に凡庸なサスペンス。

始まりは怪しいトム・クルーズの行動を少し見せ、ジェイミー・フォックスの気だるさがありつつも女性客との小粋な会話で掴みは非常に良い。
タクシーでの移動も「緊迫感を出すべきサスペンスでどうなの?」とは思うけれど、落ち着いた雰囲気で見ていられるし、ジャズだのでイケている感じをゴリゴリと押し出して来ていて、その雰囲気の狙いは当たっている。

ただ、展開は関係無い人が無理矢理巻き込まれてしまう型のサスペンスの典型そのものでしかないし、微妙な部分も多し、設定先行のご都合的強引さが目立つ。
トム・クルーズは最初の行先で行き成り失敗をしてジェイミー・フォックスを巻き込んでしまうのだけれど、このトム・クルーズの役は非常に手慣れて慎重な暗殺者のはずなのに初っ端から大間抜けを披露。
その後も凄腕の暗殺者なはずなのに殺害した相手がいる机のグラスの指紋をふき取る訳でもないし、病院にしろ、ジャズ・クラブにしろ、クラブにしろ、監視カメラも目撃者も多数いる場所も特に気にせず堂々と入って行くし、あれだけ目撃者がいるクラブで銃撃戦を行なって自分の顔を公然としても構わず逃げ切れると思っていたりと、何処が凄腕なのか終始疑問に思えてしまう。
単に確実に標的を殺害出来るというだけで自分の正体を守る様な素振りが見られない。
しかし、自分の雇い主には絶対直接会わず、雇い主も顔を知らないという状況で、雇い主には顔バレしてはいけないけれど、町中の監視カメラや目撃者には顔バレして警察やFBIに正体を知られても全然構わないって、意味不明。

偶然乗せたトム・クルーズが暗殺者というのはそもそもの導入なので、これを「都合良過ぎ!」と否定してしまうとどうしようもなくなるのでしょうがないとは言え、トム・クルーズの役の設定として慎重な暗殺者なのに、問題が起きる事が簡単に予想出来るタクシーを何故使っているのかが意味不明。
自分でもいいし、雇い主でもいいから自分が自由に使える自動車を用意した方が全然良いじゃん。

それに初めに乗せた女性が検事で、その後直ぐに乗せたのが暗殺者で、その暗殺者が検事も標的にしていたとか、展開としては早い段階でネタがばれるし、これも都合良過ぎな展開。
真面目な人が強制的に人殺しの手伝いをさせられ、逃げ出そうとすると関係無い人が殺され、何とか敵に一矢報いようと行動しても遠回りをしただけで計画は続行し、自暴自棄になって無茶をすると敵をやっと翻弄させる事が出来、最終的に一対一の対決になるという展開なんて、これまで散々使い擦られて来た展開じゃない。

一番都合良過ぎな上、「本当に凄腕の暗殺者なの?」と疑問に思ったのが、最後の二人の銃撃場面。
片や、さっき初めて銃を撃ったタクシー・ドライバーが狙いも定めず目をつぶって無暗に銃を撃ちまくり、片や、これまで何度も銃を撃ち、正確無比な狙いの凄腕の暗殺者が銃を撃ったら、素人のタクシー・ドライバーには一発も弾が当たらず、暗殺者が致命傷を受けるとか馬鹿馬鹿しい。
これまでのトム・クルーズの銃撃は何だったの?これまでの振りを一切無視した都合だけの銃撃。

トム・クルーズは髪を白髪交じりにし、髭も生やして何時もの雰囲気とは違う悪役を演じているとは言え、やっぱり何時もの正義のヒーローのトム・クルーズ顔なので、「ああ、トム・クルーズが悪役やってんな…」以上の深みは出て来ない。
役柄も、暗殺者は色々偉そうな事を言ってジェイミー・フォックスを揺さぶって、「俺を否定出来るか?」なんて言ってはいるけれど、面倒臭くもありながら毎日母親を見舞って真面目にタクシー運転手として働いている人間なら、金の為のなのか、単に快楽殺人者なのかもそこら辺が描いていないのでさっぱり分からないけれど、どっちにしろ頭のおかしい大量殺人犯なんだから簡単に否定出来るだろう…という、これまでのハリウッド映画でよく見て来た、自分に都合の良いだけで何の共感性も無い悪役でしかない。
凄腕暗殺者なはずなのに次々と間抜けを見せびらかす上に背景が全然見えて来ないので、やっぱり深みは無い。
一方のジェイミー・フォックスは流石に一小市民をきちんと見せているなぁと。
トム・クルーズの場合は本人の演技力どうのこうのじゃあなくて、脚本の描かなさ、突っ込まなさなんだろうけれど。

この映画、監督や出ている役者、雰囲気で持ってはいるけれど、話にご都合主義がそこかしこにあり、至って普通のハリウッドのサスペンス映画でしかなかった。
この映画の雰囲気だと、こんな凡庸なハリウッド型に落とし込まずに、もっと悶々と憂鬱とした、今の自分を抜け出そうとして抜け出せないタクシー・ドライバーだけに絞り、そこに少し暗殺者が絡む位だったらば結構おもしろかったと思うのに。
そう言えば、始めにほんの少しだけ登場したジェイソン・ステイサムは何だったの?てっきり、その後で絡んで来ると思ったのに。

☆☆★★★

オブリビオン

2017年08月05日 土曜日

ジョセフ・コシンスキー製作・監督・脚本・原作、トム・クルーズ主演の2013年のアメリカ映画「オブリビオン(Oblivion)」。
ジョセフ・コシンスキーが出版しなかったグラフィック・ノベルが原作というよく企画が通ったなという映画。

六十年前に異星人スカヴが地球を侵略し、地球側は戦争に勝ったが地球は核兵器で荒廃し放射能に汚染されて地球に住む事が不可能になった西暦2077年。
僅かに生き残った人間達は土星の衛星タイタンへの移住を行なっていたが、地球では海水を吸い上げエネルギーにしている施設を守る武装飛行ドローンの管理と修繕を行なう為、ジャック・ハーパーとヴィクトリア・オルセンが地球に残っていた。
ジャック・ハーパーは地上に残るスカヴ達と戦う生活だったが、ある日スカヴ達が地球外に通信を行なっている事を知り、その通信が示す座標に近付くと宇宙から謎の物体が落ちて来る所を目撃する。その物体にはジャック・ハーパーが夢で見る女性が乗っていた。

この映画、全編CGで作らず、実際の屋外での撮影で荒廃した近未来の地球を見せていて雰囲気が非常に良く出来ていて見た目には抜群に見せるし、「戦争に勝ったは勝ったが、地球から出て行かなくてはならない」という皮肉的な設定はおもしろく、そこで進んで行く前半部分は「これからどうなるの?!」で非常に引き付けられてワクワクして見ていた。
ただそれもジャック・ハーパーには何故か六十年前の侵略前の記憶らしきモノがあるとか、何故か未だに地上に残っているスカヴ達はジャック・ハーパーを襲っても殺そうとしないとかの謎を見ているけれど、それが大分早い段階からジャック・ハーパーの世界が嘘や虚構だという事は分かってしまい話的にはいまいち過ぎるし、その後は今まで何処かで見た事ある様な展開の寄せ集め感が一杯になり、ドンドンと興味は失せてしまった。

特に映画「マトリックス」的な展開が強く、「影響を受けた」と言えば聞こえは良いけれど、ほとんど「マトリックス」の二番煎じ的な展開と映像では今更感や既視感は拭えない。
主人公が夢で見る黒髪の女性と出会い、何者かも分からない敵っぽい黒人男性に真実を教えられて主人公が自分は特別な存在で機械に支配された世界を救うのだと黒人男性から言われるとか、ほぼ「マトリックス」。
テット内の無数のクローンは「マトリックス」での囚われた人間だし、生き残った地球人の基地に飛行ドローンが攻撃を仕掛け、それをガトリング砲で反撃し返す場面なんて「マトリックス レボリューションズ」でのザイオンでのセンチネルの攻撃を思い出したし。
その他にも、始めは主人公の味方だった飛行ドローンから攻撃されるとか、その飛行ドローンの形からも「2001年宇宙の旅」のスペースポッドっぽいし、この映画での宇宙船はディスカバリー号と「2001年宇宙の旅」と同じだし、最後のテット内部への飛行は「インデペンデンス・デイ」っぽく、動機も分からず攻撃して来て内部から攻撃したらあっけなく破壊出来る母船とかも「インデペンデンス・デイ」。

SFの設定も緩く、今更異星人による地球侵略は古過ぎるだろ…と思っていたら、それがミスリードにはなっているものの、テットによる攻撃は説明が無いままで、よくある異星人による地球侵略と大して変わらない。
わざわざ攻撃して来る相手がいる星にやって来てまで宇宙のあちこちに氷の形であったり宇宙に豊富にある水素と酸素とを化学反応で水を作り出すとかもしない恒星間航行も出来る科学技術を持った機械は何しているの?と言う話だし、地球人は2017年時点でコールドスリープやタイタンへ行けるだけの相当な技術があるにも関わらず、確かに脅威ではあるけれど人が扱う銃で破壊出来る飛行ドローンを戦争中には何故全然倒せなかったの?とか、ジャック・ハーパーはトム・クルーズだから最強であって、一般的な宇宙飛行士千人程度が襲って来ただけで地球が滅んじゃうの?とか思ってしまったし。
トム・クルーズよりも一歳若い宇宙飛行士の若田光一のクローンを千体作って銃持たせたら、地球は簡単に滅亡しちゃうって事?
テットも母船には物凄い数の飛行ドローンが残っているのに何でそれを送り出さないの?だし、既に全てを気付いているジャック・ハーパーをあっさり信用してしまい、ジャック・ハーパーの乗っている船を一切調べもせずに母船内の入れちゃって案の定やられてしまう間抜けっぷりで、テットがこんなアホなのによく地球を滅ぼせたなぁ…と思ってしまったし。
地球人側も60年も何してたの?だし。
あと、マンハッタンのビル群が覆われる程の土だったけれど、あれって津波や地震であれだけのトンデモない量の土砂で覆われるの?破壊された月が落ちて来たのなら、何でビルが結構綺麗に残ったままなの?だし。

それにこの主人公のトム・クルーズの配役は合っていないと思う。
見ていると、ジャック・ハーパーは記憶が消されているとは言え、少年的な好奇心旺盛さや素直さがあり、見ていると20代から30代位の若さがある役だと思ったけれど、トム・クルーズこの時51歳。見た目が若いとは言え、流石に50過ぎたおっさんがやる役ではないだろうと。
相手役のアンドレア・ライズボローオルガ・キュリレンコも30代前半だし。
トム・クルーズって、何時までも30代位の役しかしない印象。

そう言えば、この主人公のジャック・ハーパーと言う名前、直ぐにウィスキーの「ジャック・ダニエルズ」と「I.W.ハーパー」を思い浮かべてしまい、偽名、もしくは本名が無いので取って付けた様な名前かと思いきや別に全くそんな事なかった。
それにトム・クルーズはこの「オブリビオン」の前年に映画「アウトロー」でジャック・リーチャーを演じているのに直ぐ次の映画でジャック・ハーパーって、「ジャック」と呼ばれると「ジャック・リーチャー…」って思ったし。

この映画、始めは在り来たりではあるものの、二人だけで生きて、そこに謎が散りばめられ、荒廃した映像と二人が住む綺麗な住処の対比とかでおもしろく見ていたのに、中盤辺りからのネタバラシの展開が非常に在り来たりな、これまで描かれて来たSFを寄せ集めてお手軽に落とし込んだ感じしかしなくて物凄く微妙。
たった一人の自己犠牲で世界を救っちゃうとか、愛こそ全てな如何にも欧米的、ハリウッド的映画の仕様にも落とし込んだ感じもおもしろく感じなかった。

☆☆★★★

スター・トレック イントゥ・ダークネス

2017年08月04日 金曜日

J・J・エイブラムス製作・監督、クリス・パイン主演の2013年のアメリカ映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス(Star Trek Into Darkness)」。
元々連続テレビドラマだったスタートレックシリーズの一作目「宇宙大作戦(Star Trek)」の登場人物達とは同じ名前だが並行世界の別シリーズの一作目である2009年の映画「スター・トレック」の続編。

イギリスの惑星連邦の宇宙艦隊の施設が爆破された。
そのテロ事件の首謀者であるジョン・ハリソン中佐の対策をする為、艦隊本部に士官達が集まるが、そこをジョン・ハリソンが襲撃。
ジェームズ・T・カークはジョン・ハリソンを追う為にプロトタイプの魚雷を提督から預かり、U.S.S.エンタープライズでジョン・ハリソンが逃げたクリンゴン帝国のクロノスへと向かう。

わたしはテレビドラマの「宇宙大作戦(TOS)」は余り見ておらず、スーパー!ドラマTVでCS無料放送の時に見た位なので強い思い入れは無いけれど、その後の「新スタートレック(TNG)」「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン(DS9)」「スタートレック:ヴォイジャー(VOY)」は地上波で深夜に放送していた時にほぼ全て見ていて、24世紀のスタートレックは好きで、特に「DS9」好き。
だから、スタートレックと言えばSFのセンス・オブ・ワンダーや人間ドラマの側面の印象が強い分、前作の映画「スター・トレック」から「これじゃあ、ない…」は強く、しかもわたしはJ・J・エイブラムスが嫌いと言うか、J・J・エイブラムスの見る映画見る映画、どれもまあつまらないという感想で、一作目の「スター・トレック」も全然つまらなかった。
なので、この「スター・トレック イントゥ・ダークネス」も必然的につまんない。クソつまんなかった。

J・J・エイブラムスって、まるで次世代のスティーヴン・スピルバーグジョージ・ルーカスみたいな扱われ方している様に思うのだけれど、いや、J・J・エイブラムスの映画って、どれも映像的には派手だけれど中身スッカスカの張りぼて映画ばかりで、レニー・ハーリンマイケル・ベイの様な監督の後継者としか思っていないけれど、この「スター・トレック イントゥ・ダークネス」も正にそれ。
映像的には派手だし、派手な見せ場もあるけれど、人間ドラマはしょうもないし、話も見終わると残らず、展開も何だか全てがいらなかった様な気がしてしまう。

映画として色々疑問な展開ばかり。
始まりの火山を鎮静化する為にスポックがわざわざ火口まで行くけれど、エンタープライズで魚雷を撃ち込めばいいだけじゃん。
この展開でカークが降格。スポックが転属となる伏線ではあるのだけれど、この離れ離れがその後の展開で、例えばピンチになったエンタープライズをスポックが乗る別の船が助けに来るという熱い展開があるなら別れさせた理由もあるけれど、艦隊本部が攻撃された後にカークが「スポック戻して!」で速攻で元通りになるので、この序盤の展開が必要無い。
このカークとスポックの確執で後半の更なる確執や和解が描かれるのかと思ったら、アクションが先行して二人のドラマが薄くて、カークが死んでスポックが見守っても全然悲しみも無かったし。

その他の展開も微妙だし、在り来たり過ぎて緊張感やワクワク感も無い。
カークとウフーラがターボリフト内でスポックの話をしていてターボリフトの扉が開いたらスポックがいるとか、マッコイとキャロル・マーカスが魚雷解体しようとしてマッコイの手が挟まれ、爆発制限時間に間に合いそうになくなりキャロル・マーカスが無暗に部品を引き千切ると魚雷が止まるとか、カークが死んでもそれより前にカーンの血液取っている時点で復活する事分かり切っているし、そもそも主人公が死んでそのままなんてある訳無い事も分かり切っているとか、ここら辺の展開や演出は「2010年代の大作映画で今更そんな事する?」という位のベタと言ったら良く言い過ぎな、余りに見飽きたつまらないモノばかりで白けまくり。

カーンの復活も微妙。
単に優生人類の話に絞ればいいのに、アレクサンダー・マーカス提督の陰謀も交じるので話が散漫。
映画だけを見ていると分からないのだけれど、カーンが300年前に優生人類として誕生し、人間が冷凍させて追放したという事は、ドラマのスタートレックの世界の並行世界「ケルヴィン・タイムライン」となったこの世界でも、優生人類が支配の為に起こした優生戦争があったという事だよね。
なのにカークは「お前があのカーンか!」という反応は無く、結構ポカーン状態。
まだ、カークは物を知らない馬鹿だから知らないというなら分かるけれど、艦隊本部を任されているマーカス提督が過去に地球の数分の一を支配した事もある危な過ぎる優生人類のリーダーのカーンを蘇らせるとか馬鹿じゃいないかと思える。
実際マーカス提督もカーク並みに無謀で馬鹿で、カーンを蘇らせてまんまと宇宙艦隊だけでなく地球の民間人も攻撃されてしまい、マーカス提督自身もカーンに殺されているし。
それにマーカス提督はクリンゴンに対する攻撃をすべき派で新型戦艦U.S.S.ヴェンジェンスを作っていたけれど、この一艦だけでクリンゴン帝国の全艦隊と戦うつもりで勝てるつもりだったんだろうか?
と言うか、あれだけの巨大艦を製造しているのだから関わっている人も大勢いるのに情報が漏れないというのも都合が良過ぎる。
この映画の宇宙艦隊って色々緩過ぎで、マーカス提督の娘のキャロル・マーカスが偽名使って簡単にエンタープライズに転属するわ、スコッティは簡単に秘密裏に製作しているU.S.S.ヴェンジェンスの施設に潜入出来、U.S.S.ヴェンジェンスに乗り込める程情報の管理や人間の管理が緩いのに、よく秘密が漏れていないよなぁ。

U.S.S.ヴェンジェンスも微妙。
最新鋭艦のエンタープライズなのに直ぐにそれよりも最新の船が出て来てエンタープライズの最新鋭感台無しだし、エンタープライズよりも強い船だからエンタープライズも大きいとか分かりやす過ぎる見せ方もしょっぱいし、何より敵が宇宙艦隊の船で、結局内輪揉めでしかなくて、宇宙での戦闘が盛り上がって来ない。

この映画の一番の宇宙での見せ所って、この内輪揉めなので、まあ盛り上がらない。
まだ何作も使って惑星連邦や宇宙艦隊を見せてからの実は内部に敵がいた!なら衝撃的などんでん返しになるけれど、1作目でまだ士官候補生だったカークを行き成り最新鋭艦の艦長にしたり、この2作目でも情報管理が緩々だし、提督に直訴したら人事が簡単に通ってしまう位の適当な組織で、本部を襲撃されても防御態勢が何も無い様な危機管理の無い様な宇宙艦隊を見せられたら、そりゃあこんな提督はいて当然と思ってしまい、何も意外性も無いし。

そもそも「スターをトレックする」はずのスタートレックなのに地球周辺での話な上、この内輪揉めに納まるという前作同様のこじんまりし過ぎた展開もいらない。
前作も未来からの復讐による地球襲撃だったけれど、今回は過去からの復活で復讐劇と似た様な事を連続でしていて、いい加減深宇宙で未知の現象や他の勢力との話にせいよ。
それに、何でエンタープライズの五年間の調査の前の話ばかりしているのだろう?とも、思ってしまう。
本来のドラマのジェームズ・T・カークって、優秀ではあったけれどちゃんと徐々に昇進し、ちゃんと経験を積んで実績上げてのエンタープライズの船長就任で、それからの五年間の調査あっての伝説の男としての評価なのに、この映画シリーズでは初めからやたらと特別扱いで簡単にエンタープライズの船長就任するわ、我がままな子供的なのに信頼が高かったりと、何でこんな奴が英雄的扱いなのかが分からない。速攻で降格、謹慎モノの事ばかりやらかしているじゃん。
さっさと五年間の調査をやって、様々な経験を積んでいるとしないと、このカークの置かれている立場に違和感しかないし、このカークが全然魅力的ではなく、主人公として話を引っ張って行くだけの求心力が無いし。

あと、微妙なのはクリンゴンも。
カーン一人で大勢のクリンゴンが簡単に全滅って、これまで負けた事も何度もあるとは言え、あの戦闘民族クリンゴンが形無しじゃん。
ドラマではあのモッチャリとしたバトラフでの格闘で、どう見てもアルファ宇宙域最強とは思えないクリンゴンであっても、これだけ弱過ぎるのはやり過ぎ。
一番の改悪でイライラしたのはここの部分。
それに加え、まだこの時代のクリンゴン人って、「TOS」の時の様に額に何も無い地球人と同じ様なクリンゴン人なはずなのに、何で額にトゲトゲがあるのだろう?と疑問。
それにそれに何でクリンゴンが仮面被っているの?
クリンゴンって、自分の武勇を語りたがる戦闘民族だから、仮面被っていたら誰が敵を倒したか判断つかないじゃん。
これって、クリンゴンの顔を見せずにじわじわとした間を作ってから見せるという演出の為だけの仮面じゃん。いらないよなぁ。

今回のゲストとしてはベネディクト・カンバーバッチなんだけれど、そのままのベネディクト・カンバーバッチなので、出て来て瞬間に「あ、シャーロック。」と思ってしまった。
カーンって、ドラマだと本名カーン・ノニエン・シンでアジア系や中東系の設定なのに、何故イギリス人のベネディクト・カンバーバッチがキャスティングされたのかがよく分からない。
この映画でのカーンは主流派から疎外された人として復讐や支配欲にかられてテロを起こしているのでイスラム過激派の比喩的存在だと思うのだけれど、だったら尚更元々アジア・中東系だった人物からわざわざイギリス人役者を配役したのか意味不明。
単にベネディクト・カンバーバッチ人気にあやかっての配役にしか思えない。

1作目でも思ったけれど、J・J・エイブラムスがスタートレックに興味無く、スター・ウォーズが好きなのをわざわざスタートレックで出して来るのには辟易。
クロノスへ向かう丸っこく平ら型のシャトルと、羽が生えた様なクリンゴンのD4クラスの船との追っ駆け合いでシャトルが細いすき間を抜けて行くとか、完全にスター・ウォーズのミレニアム・ファルコンがデス・スターに突っ込んで行く場面の再現じゃん。
宇宙艦隊の制服もスター・ウォーズの帝国軍っぽい暗くて軍服みたいな感じだったし。
J・J・エイブラムスに製作と監督させた事で本来のスタートレックの方向性とは違うアクション映画にしてしまい、まあ見事にこの新たなスタートレックシリーズを踏み台に大好きなスター・ウォーズへと行った訳で、J・J・エイブラムスに監督させるべきじゃあなかったと強く思ってしまう。

この映画、と言うか、このシリーズは完全別時間軸の並行世界の完全別シリーズではあるものの、題名に「スター・トレック」と付けているのだからスタートレック的なモノを期待するは当然なのに、スタートレック的なモノが抜け落ち、スタートレックの人物を使った全く別物のハリウッド的B級アクション映画になってしまえば、そりゃわたしはつまらない。
まだ救いはこの次作の「スター・トレック BEYOND」ではJ・J・エイブラムスが監督ではない事なんだけれど、それでも製作には入っているし、その監督ジャスティン・リンはわたしが非常につまらないと思い、人気シリーズなのにシリーズでも大コケだった「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」を監督した人なんだよなぁ。
救いはやっぱり、このどうでもいい映画シリーズではなく、これまでのドラマと同じ時間軸で製作される予定で、今年の9月から開始予定の新ドラマシリーズ「スタートレック:ディスカバリー」かぁ。
でも、この「スタートレック:ディスカバリー」は作品内時系列としては「スタートレック:エンタープライズ」以降の「TOS」の十年前の設定らしく、いまいちその23世紀設定に興味が無く、どっちかと言うと24世紀の積み上げた歴史のその後を見たいし、何よりU.S.S.ディスカバリーがダサいというのが…。
あの三角形の胴体部分はダサ過ぎじゃあない?

★★★★★
 
 
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