デモリションマン

2022年03月06日 日曜日

マルコ・ブランビラ監督、シルヴェスター・スタローンウェズリー・スナイプス共演の1993年のアメリカ映画「デモリションマン(Demolition Man)」

1996年のロサンゼルスでは犯罪が蔓延っており、刑事のジョン・スパルタンは凶悪な犯罪者サイモン・フェニックスを追っていた。
人質を取ったサイモン・フェニックスを追い詰めたジョン・スパルタンだったが建物が爆発。
ジョン・スパルタンはサイモン・フェニックスを生きて連れ出して逮捕したが人質は全員死体で見つかった。
ジョン・スパルタンは人質を見殺しにしたとされ、サイモン・フェニックスと同じく数十年の刑を受けて冷凍睡眠にされた。
その後2032年は犯罪が撲滅され平和な世界となっていたが、仮釈放審査で冷凍睡眠から目覚めたサイモン・フェニックスが脱走。
数十年間凶悪な犯罪が無かった為に警察はサイモン・フェニックスを捕まえる事が出来ず、ジョン・スパルタンを冷凍睡眠から目覚めさせてサイモン・フェニックスを捕まえようとさせる。

ブレイド三作を見たので、続けてウェズリー・スナイプスが出演しているこの「デモリションマン」を見てみた。
「デモリションマン」は昔に地上波のテレビ放送でしていた時に見た記憶があり、シルヴェスター・スタローンとウェズリー・スナイプスが変わり過ぎた未来で暴れる近未来SFでそこそこおもしろかったと覚えている位だったけれど、今改めて見ると当時とは見方が違ったり、新たな発見がありで違う意味で非常に楽しかった。

荒れまくった1990年代から未来で目覚めたら、その未来はキレイキレイになっており、犯罪は無い。汚い言葉は罰金。煙草はダメ。性的な事も禁止という、当時から見たユートピアだけれどディストピアという皮肉的な未来を描いていて、これは確か多分1990年代に見た頃はシルヴェスター・スタローン側の「こんな世界何だよ!」という目線で見ていたと思うけれど、今見るとこの未来は2032年なのでまだ十年後ではあるけれど意外と現実の2022年とあんまり変わらない様な部分があり、驚き。
この未来は今の現実の世界から更に行き過ぎた世界ではあるけれど、日本のテレビの中だと犯罪者でもシートベルト締めないといけないとか、自主規制で言葉を制限したり、煙草は既に悪役のアイコンだし、エロも自主規制と、この映画の中の未来と変わらない気がしないでもなく、この未来を今見ると結構ちゃんとした未来予想と社会批判になってしまっているのが多分この映画の製作陣も思っていなかった未来の結果のはず。
この映画の当時は、それこそ部屋に貼ってあった「リーサル・ウェポン」みたいな舞台が現代での様々なアクション映画が作られていたので、多分それを更に発展させて平和な未来でシルヴェスター・スタローンとウェズリー・スナイプスが暴れたらおもしろいだろうなぁ…という乗りで作ったのかもしれないけれど、当時は笑って見れたこの未来が今見ると余り笑えなくなっている事が凄い映画になってしまっている。
ただ、映画の最初に出て来た1996年のロサンゼルスの方が良いかと言うと全然良くなく、ジョン・スパルタンも相当ヤバい奴。
ジョン・スパルタンはやり過ぎなアクション映画の主人公をパロディ化している部分もあるけれど、1980年代から1990年代のアクション映画って、とにかく大爆発。とにかく銃をぶっ放して肉弾戦に持って行くという時代だったからの主人公か。

それにこの映画での未来観は既に現実が追い越している部分があり、自動車の自動運転や映像通信やリモート会議は普通にあるし、モニターの薄さとか解像度は現実が超えてしまっているし、多分この当時は未来っぽかった流線型の自動車は古い流線型に見えたしで、やっぱり30年近く前の映画ではあった。

あと、この未来ではアーノルド・シュワルツェネッガーが大統領になっていると言う話が出て来るけれど、十年後の2003年にはカリフォルニア州知事になっていて、当時はスタローンに対するライバル的存在だったシュワルツェネッガーをいじるネタではあったのがある意味現実になるとは思っても見なかったと思ったはずで、これも未来予想としては怖いよなぁ。

ちなみにこの映画の登場人物は皆が馬鹿なので、バンバン暴れて破壊するだけというのは1990年代のハリウッド映画の楽しい部分ではある。

そう言えば、未来で目覚めたジョン・スパルタンが妻が死んでいる事を知り、実は娘もいたという話が出て来たけれど、最後までこの娘が生きているのかさえも分からず仕舞いで、この娘の設定は何だったのだろうか?
本当は娘と会う展開も考えていたけれど、脚本が書かれて行く内に皆が忘れてしまっていたの?

役者はシルヴェスター・スタローンは何時ものシルヴェスター・スタローンだけれど、ウェズリー・スナイプスは活き活きしていて良かった。
ブレイドシリーズを見た後だから、ウェズリー・スナイプスの髪は色は違うけれどほとんどブレイドと同じ髪型だったのは何か関係があるのだろうか?
サンドラ・ブロックは「スピード」前で、結構可愛らしい役をしていて、こんな感じのサンドラ・ブロックは結構好き。

あと凄かったのは、字幕で見ていたのに時々シルヴェスター・スタローンの声がささきいさおの声に聞こえ、サンドラ・ブロックの声が松本梨香の声に聞こえてしまう印象に残りまくりの吹き替えの凄さ。

いまいちピンと来なかったのがタコベルの扱い。
ファスト・フードのチェーン店が唯一の外食店だという笑かしは分かるけれど、この当時のタコベルの立ち位置がさっぱり分からないので、まさかタコベルが無いだろ!のツッコミを入れる所なのか、当時勢いがあったのでさもありなん的なジョークなのか、どうなんだろう?

この映画、当時は乗りで考えたであろう未来が今見ると結構当たっている事に驚き、1990年代の人間から見るとユートピアなのかディストピアなのかな今の現実世界に住んでいたと気付かされた事にも驚き、でも内容はシルヴェスター・スタローンとウェズリー・スナイプスが暴れて銃をぶっ放し、爆発して、美女とキスしてお終いという、まさに1990年代のハリウッドのアクション映画のアーカイブで、違う側面から1990年代を見る映画としても結構おもしろい。

☆☆☆★★

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