シンドバッド虎の目大冒険

2014年09月02日 火曜日

サム・ワナメイカー監督、パトリック・ウェイン主演の1977年の映画「シンドバッド虎の目大冒険(Sinbad and the Eye of the Tiger)」。
シンドバッド七回目の冒険」「シンドバッド黄金の航海」に続くシンドバッド三部作の最終作。三部作と言うけれど、毎回シンドバッド役は別人な上、話に繋がりがある訳でも無い。

チャロックの町に着いたシンドバッド一行。シンドバッドはファラー姫に求婚する為にやって来たが、会いに行こうとすると城は邪悪な魔術師が現れる為に閉ざされていた。町で過ごしていると突然謎の魔術師に襲われ、ファラー姫と逃げ出し、兄のカシム王子に呪いがかけられている事を聞く。その呪いを解ける賢者メランシアスを探す旅に出る事になる。

シンドバッド三部作のどれもそうなんだけれど、特に今作は展開がどうにももっちゃりして結構退屈な時間が多い。航海に出るまでは始めにストップモーション・アニメーションで謎の怪物が登場し、そこの合成が結構良かったり、戦いも短く場面を切って細かく顔や手元の寄りを入れる現代的な編集と演出で引き付けられたのに、その後の説明的な場面の連続で飽きて来る。まだ映像での説明ならいいけれど、常に人物達の会話や独り言で説明ばかりする事が続いてしまい退屈する上に、見せ場であるストップモーション・アニメーションもほぼなく、ずっと「何したいの?」状態。中盤の小さくなった継母を尋問し続ける件の退屈さと言ったら、ない。それに中盤以降は周りの人々の話と場面ばかりで、主人公であるはずのシンドバッドの活躍が最終盤までほぼ無いのも問題。
これを見ると、似た感じの不可思議な古代に関わるファンタジー冒険映画としてこの映画の4年後の1981年の映画「レイダース/失われたアーク」とどうしても比べてみたくなるけれど、今でも「レイダース」の展開や演出等をおもしろく、楽しく飽きずに見れる事を思うと、やっぱり監督の力量の差って出るモンなんだなぁ…と気付かされてしまう。

脚本がつまらないので、見所であるレイ・ハリーハウゼンのストップモーション・アニメーションも不発。初めに三体の謎の生物が登場し、合成も動きも非常に良かったけれど、それ以後はヒヒ、少し大きい蜂、巨大なセイウチという何とも地味なモノばかりでどうしようもない。その後、頭に角が生えた巨人が出て来るけれど、これまたパッとしない見映え。この巨人は、激しく動く戦いの場面が見れるのかと思いきや、意思疎通を図ろうとしてグダグダしているので特に目立つストップモーション・アニメーションも無いまま。
何より序盤に登場し、延々と何かやるだろうと思わせ振りに思わせていたミナトンがほぼ活躍無いまま、あんなしょうもな過ぎる終わりってなんだ?このシンドバッドシリーズって、レイ・ハリーハウゼンのストップモーション・アニメーションが一番の見せ場なのに、そこで勝負したくないと思ったのか全然ストップモーション・アニメーションを見せようとしない。むしろ排除しているサム・ワナメイカーは馬鹿なのかと…。ストップモーション・アニメーションを見せない替わりにアクションや冒険や謎解きで見せるならまだ分かるのに、そこがまぁつまらないし。

今回のシンドバッド、パトリック・ウェインは髭モジャで、前作のジョン・フィリップ・ローと同じ感じの汗臭い、男臭いシンドバッドで結構良いけれど、全然活躍しないので主人公なのに脇役感が凄い事。
ヒロイン役のジェーン・セイモアも全然中東感が無く、子供っぽくていまいち。役自体も継母が悪口言うと短刀を抜いて殺そうとしたり、キャーキャー叫ぶこの当時の典型的なヒロインで、人物自体に魅力が無い。

今回は、映画「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」でも登場した、ヨルダンのペトラの遺跡エル・カズネも登場。まあ、古代ファンタジー映画としては、ここはやっぱり見映えが最高で、使いたいんだろうなぁ。

シンドバッド三部作とは言うけれど、この映画は別にシンドバッド的な要素が少なく、シリーズでも最大の制作費をかけたらしい割にシリーズでも一番つまんない。話は間延びしまくり、散漫。ストップモーション・アニメーションの見せ場もほぼ無く、シリーズ最終作にして駄作。
次々と現れる怪物達を見るなら「シンドバッド七回目の冒険」だし、ストップモーション・アニメーションの素晴らしさを見るなら「シンドバッド黄金の航海」のカーリーで、これは本当に話は退屈でつまんなく、ストップモーション・アニメーションは少しで盛り上がらず、良いとこ無し。

☆★★★★
 
 
関連:シンドバッド七回目の冒険
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