シンドバッド黄金の航海
2014年09月01日 月曜日レイ・ハリーハウゼン原案・特撮、ゴードン・ハッセル監督、ジョン・フィリップ・ロー主演の1974年のイギリス映画「シンドバッド黄金の航海(The Golden Voyage of Sinbad)」。
「シンドバッド七回目の冒険」に続くシンドバッド三部作の二作目と言うが、1958年の「シンドバッド七回目の冒険」から16年後の制作だし、シンドバッドも別の役者。
航海中のシンドバッドは、上空を飛ぶ鳥が落とした黄金の銘板を手に入れる。マラビアに着くと黒魔術を使う王子クーラにその銘板を狙われるが逃れ、「奇跡の秘密」を探っているマラビアの首相ビジエルに銘板の断片を見せられる。スパイを使ってそれを知ったクーラに「奇跡の秘密」の力を渡さない為にビジエルと共にシンドバッドは航海に出た。
レイ・ハリーハウゼンのストップモーション・アニメーションは素晴らしいけれど、構成がいまいちだし、やたらと間延びしてしまう。特に序盤がつまらない。延々と航海に出る為の説明で進み、盛り上がる見せ場が無く、この導入で随分と飽きてしまう。やっとおもしろくなるのは船首の木の像が動き出す所だけれど、その後中盤でも説明場面が多く、どうにも間延びしまくる。そもそもシンドバッドが航海に出る動機もいまいち分からないし、何故シンドバッドとクーラが戦う必要があるのか、冒険自体の目的がいまいちはっきりしないし、モヤモヤする説明不足感は終始あるし。
このまったりとした展開だと、非常に王道な冒険モノで次々と展開して行く「シンドバッド七回目の冒険」の方が展開の部分ではまだおもしろかった。「シンドバッド七回目の冒険」ではサイクロプス、怪鳥ロック、ドラゴン、骸骨と怪物達が次々と登場して来たのに、今回はホムンクルス、船首像、カーリー、ケンタウロス、グリフィンと出ては来るけれど、それも場面場面での登場で、登場の意味はストップモーション・アニメーションを見せる為だから以上のモノが無いのも脚本の問題。ケンタウロスとグリフィンの登場や、何でそこにいるのかとか、何故戦うのかとかも分からず、やっぱり話自体の出来は良くない。
それに、前作「シンドバッド七回目の冒険」よりもアラビア世界の雰囲気は出ていて良い感じなんだけれど、辿り着いた島の彫刻は東南アジア風だし、カーリーが出て来てインド風も交じって雰囲気がグチャグチャして台無し。
レイ・ハリーハウゼンのストップモーション・アニメーションは、今回はカーリーが一番良かった。六本の手に刀を持っての戦いは独創的だし、滑らかで見入るけれど、銅像?金属像なのに、アップになると粘土の質感が見えたり、造形が結構あまいのは痛かった。
それと良いのはそれぞれの人間関係。海賊モノを含む多くの船乗りの時代劇映画では、やたらと船員達が船長に対して反乱を起こす事が多いけれど、これでは船員達が船長シンドバッドの無謀さに呆れている所もあるけれどちゃんと信頼していてキッチリ仕事に励んだり、敵方のクーラの召使いアクメッドも主人の体調を気遣う非常に優しい人物で、クーラも制止を跳ねのけて突き進むけれど、自分のしている事をちゃんとアクメッドに説明するという信頼も見せていて、脇役の変な出しゃばりと無理に展開させる為だけに反抗したりしないのは良い所。
ジョン・フィリップ・ローのシンドバッドは結構魅力的な主人公なんだけれど、シンドバッドの背景や人物描写が薄いので彼の目的や考えている事が分かり辛く、折角の役が台無しな感じはある。
マリアンナの胸の露出、エロ過ぎ。よく「船に女性を乗せるのは不吉」と言うけれど、その迷信は荒くれ者の男ばかりの船にこんなエロエロな服装のおねいさんを乗せたら、そりゃあ揉め事が起こるしかないじゃん。
この映画、レイ・ハリーハウゼンの名前は挙がるけれど監督のゴードン・ハッセルの名前が全然出て来ない事を見れば、結局はレイ・ハリーハウゼンの技術を見る映画になってしまう。レイ・ハリーハウゼンの部分は非常に良いのに、それ以外の脚本の展開や見せ方、演出が結構退屈な為に映画としてはつまんない。登場人物や設定、特撮を活かし切れていない監督や脚本の問題が大き過ぎる。
☆☆★★★
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