プレステージ
2014年08月25日 月曜日クリストファー・ノーラン製作・監督・脚本、クリスチャン・ベール、ヒュー・ジャックマン共演の2006年の映画「プレステージ(The Prestige)」。
クリストファー・プリーストの小説「奇術師」が原作。
19世紀末のロンドン。舞台で奇術を披露しているロバート・アンジャーが仕掛けの床から落ちると、舞台下には水槽があり溺れ死んでしまった。それを見ていたアルフレッド・ボーデンは殺人容疑で収監され、牢屋でロバート・アンジャーの日記を読む事になる。かつて二人は奇術師の仕事の同僚であり、お互いを意識するライバルで、ロバート・アンジャーの妻の奇術中の事故の原因がアルフレッド・ボーデンにあると思い憎み始め、やがて二人がお互いに舞台を潰し合い始める。
憎しみ合い、常に相手の一足先を行こうとするバッチバチの二人の奇術師の話。この二人の対立で引っ張って行く話がおもしろい。憎しみと相手の成功に対する嫉妬がそのままぶつかりあって、お互いに潰し合うやり合いが最後まで続き、そこに何も生まれない無残さと無常さが非常に良い。
ただ、終盤になり、物凄く微妙になってしまう。それまで現実的な奇術師の興行の裏側の話だったのに、終わりに近づくとロバート・アンジャー側が急にSFではなくファンタジーになってしまい、「そりゃ無いわ…」と呆れる展開になってしまう。原作がハヤカワ文庫FTから出ていて、それを読んでれば「ファンタジーだしな…」でそれなりには納得出来るかもしれないし、元々ニコラ・テスラがオカルト色の傾向が強いのは分かるけれど、仕掛けを奇術という技術ではなく本当の魔法にしてしまうと、今までの技術で勝負していた展開が全くの無駄でしかなくってしまう。単に初めのロバート・アンジャーの死亡をどう無かった事にするかの稚拙な解決方法だからなぁ…。それに、アルフレッド・ボーデン側のネタのばらしも、散々替え玉でやっていて、しかもほとんど真面に顔を映さず、余り喋らず、何時も側にいるのにほとんど話に絡んで来ないファロンの見せ方で早い段階で気付いてしまうし。ただ、アルフレッド・ボーデン側は奇術師の人生という点では非常に意味のあるネタであり、始めからネタが振られてあり、非常に出来の良い構成になっている。その分、ロバート・アンジャー側の出来の酷さが際立ってしまっている。
話の構成はクリストファー・ノーランらしく、何度も過去と現在が入れ替わり結構ややこしい。今は牢屋にいてロバート・アンジャーの日記を読んでいるアルフレッド・ボーデンだけれど、その日記の時の映像はアルフレッド・ボーデンの日記を読んでいるロバート・アンジャーで、そのロバート・アンジャーも日記に出て来る過去とニコラ・テスラに会いに行っている少し後の過去が混在し、「メメント」的な行ったり来たりの構成。でも、ちゃんと理解し易い様に作っているのが、娯楽大作としてお金の稼げる監督としてのクリストファー・ノーランの力なんだろうな。
クリスチャン・ベールは、他の映画でもそうだけれど、役毎に顔や雰囲気が違い、二重あごになっていたり、笑顔の時は普通のおっさんだし、映画毎の別人感はやっぱり良いし、凄い。
ヒュー・ジャックマンは、常にクリスチャン・ベールに振り回され、マイケル・ケインに言われた通りに動く、意外と賢くない役にぴったり。常に不満を持ち、一部を隠して生きる影のあるクリスチャン・ベールもそうだけれど、上手い配役。
これを見て思うのは、だからナポレオンズやマギー司郎が強いという事。マジックがネタがあって、それを知ったら去って行く…と映画内でも言っている様に、ネタ勝負で驚くけれど、ネタが分かれば他の人でも出来てしまう可能性があり、一気に有名になるけれど一気に落ちる事もあり、結局その人だからのモノが無いとダメって事か。
この映画、結局ニコラ・テスラのファンタジーが全てを駄目にしてしまっている。二人の対立がおもしろいだけに、こんな馬鹿馬鹿しくて、行き成り現実味の無い落ちにしてしまった事が残念過ぎる。クリストファー・ノーランって、この映画もそうだけれど、「インソムニア」とか原作ががっちりしているのの映画ってハズレまくるなぁ…。
☆☆★★★