アンノウン
2014年08月26日 火曜日ジャウム・コレット=セラ監督、リーアム・ニーソン主演の2011年の映画「アンノウン(Unknown)」。
原作はディディエ・ヴァン・コーヴラールの小説「Out of My Head」。
アメリカ人のマーティン・ハリス博士は学会の為、妻と共にベルリンにやって来た。空港に鞄を忘れたので先に妻をホテルに残しタクシーに乗った。しかし途中で事故に合い、昏睡状態となる。四日後目を覚ますが事故少し前の記憶が思い出せずにいた。そんな中、妻の記憶を思い出しホテルに戻り妻を見つけるが、何故か妻は夫である自分の事を知らない。更に妻の側には全く知らない別人のマーティン・ハリスがいた。
言葉も通じない異国の地で事故に合い、記憶が不確かなモノになっている所に、今までの自分が自分では無くなった時の嫌な恐怖が題材で、掴みは非常に良い感じ。その事故による後遺症で自分の記憶が間違っているんじゃないか?いや、記憶は確かで何か変な事が起こっているんじゃないか?で引っ張るのかと思いきや、結構早い段階で何かが起こっている事を出して来て、そこからは結構普通なサスペンス映画に。しかも終盤で話が大きく引っくり返ってからは、「何でリーアム・ニーソンはそうなるの?」と疑問の出て来る展開になってしまう。そして、全ての事実が分かってから始めからを思い返すと、大事な鞄をうっかり忘れてしまったり、誰もリーアム・ニーソンに説明しようともせず、やたらと殺しまくる意味もよく分からないとか、どうにも間抜けと言うか、ミステリーの展開の為に結構無理矢理そうした感のある展開だったり、そもそもリーアム・ニーソンが変になった理由は?何で正義の人に変身したの?とか、展開の為だけに説明しない都合の良さがドンドンと気になって行ってしまった。序盤の記憶が曖昧なままの孤独なサスペンスは結構おもしろいだけに、後半がどうにも不味く、この「今までの自分の世界が一変する」という題材って、やっぱりどう理由を付けるかって相当難しい。
それに途中で元旧東ドイツの秘密警察シュタージだった老人がリーアム・ニーソンを手伝ってくれるのだけれど、この役が全然いらない。展開的にこの老人が突き止めた事はリーアム・ニーソンが一人で突き止められそうだし、何で出して来たのかがよく分からず、この役を出した事によって二度手間感、引き伸ばし感を感じてしまった。しかし、この老人役のブルーノ・ガンツは物凄く存在感があり、良い。この人物の所に問題持って来て、彼が解決して行くミニシリーズのスペシャルTVドラマだったら物凄くおもしろそう…と思ってしまった位の存在感。
映画的な見せ場を設ける為に急にカーチェイスを入れるんだけれど、その場面ではリーアム・ニーソンが恐るべき上手さのシフトチェンジを披露し、老年に近い学者が出来る事としてはトンデモなくなってしまって、途端に覚めてしまう。…のだけれど、これに関しての理由が後々分かるにもしても、このカーチェイスはいらんなぁ。最後も宿敵との決着の為に殴り合いになってしまうという構成も、何でミステリー・サスペンスで変にハリウッドのアクション映画のお馴染みの方式にしなくちゃいけないんだ…と思うし。
それに60前のリーアム・ニーソンと、30代半ばのジャニュアリー・ジョーンズのどうにも年齢差があり過ぎるけれどやたらとイチイチャしている夫婦の不自然さがずっと気になってはいたけれど、実はこれも事実のネタバラシの振りだと分かると納得はするけれど、この配役は映画的な見栄えの問題だけの様な気もするし。
この映画、序盤は孤独な彷徨いで物凄く引きがあり、「もしかしたら、実は事故で寝ている時の、記憶がゴチャゴチャになっている妄想なんじゃないの?…という、夢落ちかも?」も思わせる雰囲気があって、どう展開させるのかがおもしろいのに、タクシー運転手の女性と行動を共にした辺りから徐々に興味が引いて行き、折角人物が立っていた元秘密警察の老人も結局何だか分からないままの使い捨てだし、始まりと終わりでの落差が激し過ぎる。後半が勿体無い映画でした。
☆☆★★★