アンダー・ザ・ドーム

2014年03月31日 月曜日

2009年に発表されたスティーヴン・キングの小説「アンダー・ザ・ドーム」を、2013年からCBSが連続ドラマ化。
日本ではDlifeで「アンダー・ザ・ドーム」を放送。

片田舎の町に突如透明なドームが出現し、外界とは遮断してしまう。その閉鎖され、食料や資源も制限されて行く中で人々は何を思い、どう行動して行くのか?そもそも、このドームは一体何なのかを知ろうとし始める。

近年多い「まず、大きな不思議や謎をぶち上げて、徐々に小出しにその説明を見せながら、群像劇を見せて行く」ドラマ。
死体を埋める余所者のバービー・バーバラ。彼と近づいて行く新聞記者のジュリア・シャムウェイ。町を守ろうとしているが、他の町の人間と何かしらの秘密の事を隠している町政委員のビッグ・ジム。元彼女のアンジー・マカリスターを地下室に監禁するビッグ・ジムの息子ジュニア。卒倒し「ピンクの星が…」とうわ言を言うアンジーの弟ジョー・マカリスター。警官や外から来た人等、多くの人々が登場し、謎や何かしらの伏線になりそうな感じを思わせる作りで、その人々の背景を見せながら、新たな環境での変わって行く人間関係を見せて行く。

始めはこの人々の行方や伏線を張った構成が期待を持たせおもしろく進んで行くのだけれど、しかし序盤から人物描写が結構微妙な感じ。
悪党の取り巻きのビビる小悪党位だった牧師が、何らかの理由も見せず行き成り狂信的な牧師になったり、ビック・ジムは少々悪さも見せていたけれど基本的には町を守ろうとする人だったのに、おかしくなった牧師に脅され簡単に殺人を犯してしまったり、徐々に変わるという事が少なく、突拍子も無さにちょっと置いてけ堀。
それとサイコ野郎のジュニアの話って、散々引っ張っておきながら特に何かになる訳でも無いままで、ずっと「この話いる?」と思っていたし、後半にアンジーとジュニアの二人が普通に会話したりしていて、「前半は必要だったの?」と思える変容ぶりと無かった事感が強くて、非常に微妙。
後半では、閉鎖されたドーム下の小さな町なのに閉鎖後一週間位してから急に新たな女性が現れ、実はその女性がバービーとビッグ・ジムを操っていたとか、何処まで原作にあるのか分からないけれど、この女性の登場はテコ入れ感が凄い。その女性も結局必要か?と思える登場と退場で、やたら撃ち殺して終わりも何だかなぁ…。

それに如何にもアメリカのドラマらしいのは、同じ小さい町に住み、どうにかして乗り切らないといけない状況は分かっているのに、やたらと揉め始めたり、あちこちで犯罪が起こるという頭の悪さ。まあ、日本が舞台だと文句言う人はいるけれど、皆で協力し合って分け合って何とか乗り切りました…じゃあ、面白味に欠けるから、どうしても揉める展開にしないといけないというのはあるけれど。
それにしても、町の人が行き成り顔見知りの人を簡単に襲って暴動になったり、殺し始める、雨が降って来ただけで暴動がぱったりと止んでしまうという、単に話を盛り上げる為だけの個人の意思が全然見えて来ない人々の描き方は、都合良過ぎな単純化で脚本が安っぽいと感じてしまう。
その後、娯楽が無くなったので地下格闘による物資の賭博場を開催して大賑わいという所まで行くと、田舎の人は頭が悪い上に単純な思考しかしないという皮肉よりも悪意や見下した感じしかしない描かれ方だし。毎週放送する連続ドラマとして分かり易さをえがいているのだろうけれど、その単純化は閉じ込めらた人々を描く群像劇としては結構致命傷。

この手の謎で引っ張るドラマって、後半に行くとその謎のが徐々に分かり始め、段々とおもしろくなって来るモノだけれど、このドラマは後半に行く程展開がいまいちになって行く。ドームの謎が謎のままでもいいのに、ミニドームとか出し始め急にファンタジー色が強くなって「あれっ?」感が強くなり始める。話の中心であるバービーとビッグ・ジムの対立とは別に、子供達の所でドームの謎解明をして行くので話の分離感もあるし。
後半はバービーとビッグ・ジムの対立が主軸になるのだけれど、それも説得力が不足している。バービーは「町の為に動いている」と言うけれど、目の前で起こった問題に対処しているか、ジュリアに関する事に対処しているだけだし、一方のビッグ・ジムはバービーに「町の権力の欲しいだけだろ」と言われるのに、ビッグ・ジムは自分がして来た事の尻拭いで人殺しを行なっているので、小悪党感ばかりで町の権力を取ろうとする悪役になるのは終盤だし。
始めは多くの人が色んな事を考え行動していた群像劇だったのに、それらもおざなりになり、終盤はバービーとビッグ・ジムの対立ばかりで済んでしまい、ドンドン話がつまらなくなってしまう。
結局このドラマのおもしろい所はドームの謎じゃあなく、小さく分断された町で起こる様々な問題を解決して行く様。伝染病、食料・水・電力の問題等そこら辺を如何にして確保するかがおもしろい。それにそれらが無くなる後半はドンドンとおもしろさが落ちて行く。

その資源の確保も、このドラマを見ていて思うのは、これが出来るのはアメリカの片田舎だからかぁ…という所。アメリカだと巨大な土地の中にポツンポツンと町が存在しているから、電気・水道・燃料等の供給や備蓄が普段からの問題になっているのだろうけれど、日本だと外界と分断された時点でそこで供給する方法が無くなって持たずに終わってしまい話にならないだろうなぁ。離島なら自家発電とかあるけれど、離島ならドームを持ち出さず気象等の問題で済んでしまい、普通のドラマになるしなぁ。しかし、こういう時こそ太陽光発電か…。

それに、アメリカの片田舎なら、保守的で口喧しい大人と、退屈な町から出て行きたい若者で構成されるはずなのに、やたらと隠し事を暴こうとし、何でも報道したがるジュリア・シャムウェイとか、女性同士で子供を育てる外のからの旅行者とか、アジア系の若者とか、ラテン系の人とか、現代的な色んな人達を入れているは如何にも最近のドラマな感じ。しかし、実際のアメリカの田舎町の人々ってこんな感じなのだろうか?ここら辺を分かっているアメリカ人と、知らない人だと、このドラマの作り物感の感じ方も違うんだろうな。

あと、制作側は真面目なんだろうけれど、微妙な構成や脚本で笑ってしまう所も。
1・2話目のどちらの終わり共、最後に警官の胸がパンッ!ってなって終わるのは笑ってしまった。この最序盤で同じ事を繰り返すって、笑わしにかかっているのだろうか?
それにジョーとノリーがぶっ倒れて「ピンクの星が尾を引いて…」とうなされたのには流石に笑ってしまった。それに、ジョーとノリーが自分達で倒れる所をビデオで撮影した時、ジョーがこっそり起き上がって「シッー!」としたのも笑った。これらって、奇妙さや恐怖を出す所なんだろうけど、見ている限りはコント的で、真面目にやっていても滑稽にしかなっていない。

後は、ドームの直径が大体16kmって言っていたけれど、16kmという中途半端な数字だと思ってもマイルだと10マイルという切りの良い数字になっていて、それだったら完全にアメリカ人の大きさだから、アメリカ人が何かしら関わっているドームじゃないの?って思ってしまう。
このアメリカンなドームの大きさについては、その後に理由付けが一切無い、これまた脚本の適当な設定付けが見え透いてしまうだけだった。

このドラマ、シーズン2の放送がアメリカでは今年の夏に決定しているようだけれど、ドームの謎はよいとしても人間関係の方の話がシーズン1並みだと、「シーズン2大丈夫なの?」と余計な心配。後になるにつれて徐々に盛り上がって行くなら良いけれど、段々と下降して行くと、この手の謎で引っ張るアメリカンドラマでは平気で謎を残したまま打ち切りもあるからなぁ。日本だと来年頭位に放送される?かもなので、そん時は見ようかなぁ?位の乗り気。
 
 
 
ドラマ内容とは直接関係無い話だけど、前々から感じていたDlifeの微妙さがこのドラマではっきりした。登場人物達が出て来ると、その人物の名前と役の説明を字幕で出すという、地上波の民放の映画放送並みのクソ余計な親切が入る。しかも毎回。鎖に繋がれ、地下室で監禁されているのは見ればすぐ分かるのに、ジェニファーに「監禁される」と字幕入れるなんて、完全に視聴者を馬鹿だとしか思っていない。中盤で謎の女性が初登場した時に「?(謎の女性)」と字幕が入り、ヘドつきそうだった。
元々他にも、番組放送中にわざわざ番組名の字幕や次の番組名の字幕入れたりと、やっぱり誰の何向けなのか分からない余計な事していて、新旧海外ドラマを放送しまくる放送局の番組の方向性は良いのに、完全に「視聴者は馬鹿だから馬鹿向けの放送を。俺達親切だろ?」感ばかりを感じてしまうDlifeの編集にはファッキン。
それに日本中の気象警報を入れる意味も分からない。各地の地上波ならまだしも、衛星放送で日本中の気象警報を流してたら切り無いじゃん。
 
 
関連:今期のドラマは「CSI 4」で「アンダー・ザ・ドーム」のシーズン2が…
    前期のドラマは「ザ・ラストシップ」と「CSI 5」

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