未知との遭遇

2013年12月23日 月曜日

スティーヴン・スピルバーグ監督・脚本、リチャード・ドレイファスフランソワ・トリュフォー共演の1977年の映画「未知との遭遇(Close Encounters of the Third Kind)」。

突然、発光する未確認飛行物体が現れ、人々は混乱する。

スティーヴン・スピルバーグって、「激突!」「ジョーズ」から「インディアナ・ジョーンズ」シリーズ含め、過去から現在に至るまで、人々の噂話や都市伝説、トンデモ論を非常に上手く取り入れて娯楽作品を作って、ちゃんと見せる上手さがあるのだけれど、流石にこの映画は時代性ばかりが目立つ水モノ映画で、スティーヴン・スピルバーグ的上手さはそんなに無い。
怪しい謎の飛行物体の登場から地球外知的生命体との友好的遭遇に至るというのは、当時は新鮮な題材だったのだろうけれど、現在では地球外生命体の意図不明の侵略から、友好的な、もしくは厄介者として共存している様な映画が無数作られていると、今更この映画見ても当時の時代性や地球外生命体等に対する考え方しか見て取れず、「ふ~ん…。」以上の感想が出て来ない。これ以降の地球外生命体、所謂宇宙人モノ映画って、大抵彼らは地球以上の科学力・技術力を持っているにも関わらず、それを使っているのはアホばかりだったり、単に物量で攻めて来るとか、回りくどい方法で地球と交流しようとしたり、とにかく頭の悪さばかり目立つけれど、この映画もそう。この映画の地球外知的生命体は、まるでチンピラの改造自動車の様な悪趣味半端無い光を放つ乗り物で他人の町をぶっ飛ばしたり、人ん家の電気を盗んで行ったりして、彼等は何がしたいのか見ていても分からず、結局それらは何だったのかも描かれず仕舞いで、映画を見終えてもその行動は単なる町のゴロツキと大して変わりないとしか思えない。「旅の恥はかき捨て」で、地球にやって来て無茶苦茶して遊んでいるだけかと思ったら、結構本気で地球人と接触しようとしているのだから、この地球外知的生命体の意図不明加減と来たら…。普通相手の星に行き、友好的に接触しようとするのだったら、相手の生態や生理現象を調べて相手に危害を加えない様にするモノなのに、相手の生活を脅かしたり、無駄に勘違いや恐怖を与えたり、日焼けを与えてしまう様な実害も与えている程無計画。あと、「こちらは地球人よりも進んだ科学力があるけれど、お前らがこちらの言葉を理解せい!」って、本当に地球人と交流する気があるのかも不明。こんな役立たずばっかりなのに、良く恒星間航行出来るまでの科学力を開発出来たモノだ。それに、この宇宙人達の行動を見ている限り、全然友好的、対等に接触しようともしておらず、絶対何かの策略があるとしか思えない。
頭の悪さは登場人物達だけでなく、脚本の悪さでもある。この映画では意味不明な事が多い。リチャード・ドレイファスは何で精神的におかしくなって、何で家の中で巨大な山を作ったのか?地球外生命体は何でささっと直接地球人に接触して来ないのか?あんなに目立ち過ぎる宇宙船で町中を飛びまくる意味は?何で宇宙船で曲技飛行会を行なっているのか?子供を含めた地球人の誘拐の意味は?地球人が行き成り宇宙人に連れられて行くのは何?とか、適当に宇宙人要素詰め込んだけれど、それを投げっ放しにしている事が多く、異星人の意図も、脚本の意図も見えて来ない。
何よりこの映画がおもしろくないのは、盛り上がらない展開とのっぺりとした演出。話はじっくりと進むと言えば聞こえは良いけれど、単にギンギラギンに光る謎の飛行物体が現れたけれど、実害と言えば近くで見ると日焼けする位で、侵略とかの様子なんて一切無いのに勝手に人々が騒いで、町の普通の人々が精神的にまいって来るだけの話を延々と見せているだけ。しかも突然登場人物や群衆がパニックを起こしたりして、見ていても全く追い付いて行かない。本当に未知と遭遇するだけの映画で、内容のスカスカ感が酷い。
演出も目を引く様なモノも無く、至って普通だし、光の見せ方も、未確認飛行物体は地球人の手作り感溢れる宇宙船だし、時々出て来る人や家に当てられた光も、如何にも映画・舞台用の照明で安っぽいし、同じスティーヴン・スピルバーグ監督作の「E.T.」では物語に必要な照明でもあり、非常に印象的だった照明と比べると格段に落ちる。
あと、今見ると「突然動き出す機械類」とか、「キャトル・ミューテーション」とか、流石にしょっぱい。今はギャグでもやらない位だし。

スティーヴン・スピルバーグって、絶対に当てて来る娯楽映画界の稀有な存在でもあるのだけれど、時々思いっ切り外してしまう事もあり、この映画は初期のまさにそれ。話は地球人も地球外人も頭の悪さしかないし、地球外人が攻めて来るのか、友好的なのかもほぼ出さず、勝手に人々が騒いでいるだけなので話は全然盛り上がりもしないし、適当な感じの話も…。まるで下品な性風俗のネオンサインの様な宇宙船とか含め、映像的にもおもしろくないし、何でこんな映画がヒットしたのか良く分からない。

☆★★★★

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