E.T. 20周年アニバーサリー特別版

2012年12月29日 土曜日

スティーヴン・スピルバーグ製作・監督の1982年の映画「E.T.」から20年後の2002年にCGでの修正、カットされた場面の復活や逆にカット等を行った「E.T. 20周年アニバーサリー特別版」。

地球外から来た人間より相当科学技術が発展した知的生命体が一人取り残されてしまい、少年の家に御厄介になる事に。そしてその存在が知れ、大騒ぎに。

以前見た事あるはずだし、子供と「E.T.」との交流物語で、子供向け映画、ファミリー・ムービーだと舐めていたけれど、流石はスティーヴン・スピルバーグ。話も映像も上手い。主人公の子供に共感する様な童心が無くとも、ちゃんと演技や演出で説得力を持って飽きさせず見せ、きっちり話を展開されて行くのは流石。不安な出会いから、徐々に交流して行く姿。関係が出来上がった所でE.T.が徐々に弱り始め、そこに追い打ちをかける様に存在が知れてしまい、悲しい別れへ。と思ったら、そこからは一気にアクションへと行き、悲しくもある結末へと、王道だけれどツボを押さえた構成。
それに人物設定もしっかりしている。兄に結構邪険に扱われ、父親がいない家庭の中で見慣れない生き物と仲良くなる少年。兄は弟をいじめたい年頃だけれど良い兄貴でもあり、自動車を運転したい年頃だというのが終盤の脱出劇に繋がる。妹はまだ現実と想像が交差し、事実を話しているのに母親は信じないというコメディ・リリーフ。ちゃんと各登場人物達に説得力と存在感を持たせている。
そしてまた、この子役のヘンリー・トーマスドリュー・バリモアがちゃんと表情で演技して、それも日本の子役の様なわざとらしさやクドさも無いのだから、彼等自身でもあるけれど、彼等をオーディションで選んだ選考眼と演技の付け方の上手さでもある。

20周年特別版という事で、E.T.も基本は元の着ぐるみだけれどCGに変更されている部分もあるが、そこが動き過ぎで逆に良くなかったりする。着ぐるみを後から下手にCGにするのは、そこだけ急にCGアニメーション映画になってしまい、わざとらしく浮いていて、これこそ蛇足。CGよりも機械仕掛けのE.T.の方が表情豊かで現実味があるなんて…。実はこのE.T.が表情豊かで、母親以外の大人は顔自体見せなかったり、全然話さず、周りにいる大人の方が異質で存在が不気味という対比の構造になっている重要な部分でもあるのに。絶対元の「E.T.」の方が良いはず。
ただ、スティーヴン・スピルバーグってこんなに光での画面作りや演出が上手かったのかと改めて思った。「E.T.」と言えば何と言っても「月に重なる自転車に乗った主人公とE.T.の影」だけれども、始めの方の「夜の暗い中、画面中央上部に光る三日月。真ん中のトウモロコシ畑を挟んで納屋の照明と母屋の照明の構図」に結構ゾクゾクする。画的に綺麗なんだけど、月が三日月という時間経過を表しているのと、月に影が重なる場面へのフリでもあり、画作りも展開の構成に含む上手さに感心。他の場面でも、後ろから照明を強く当て姿をはっきり見せなかったり、夜は照明だけで人物を表現したりと、陰影の付け方や照明の当て方が結構白黒映画的でもあったりする。ここら辺は白黒映画時代の宇宙人モノへのオマージュ的要素もあるのだろうか?それに室内での光の入り方や、照明の当て方も非常に印象的にしている。

この友好的な地球外知的生命体って1980年代の時代性が現れている。当時は「エイリアン」シリーズといった理由無き敵としての地球外生物もあったけれど、この友好的な地球外知的生命体モノが爆発的な大ヒットとなったのは、伸び調子の時代の人々の許容範囲の広さでもあるのかもしれない。最近だと、意味も分からず襲って来る地球外生物やゾンビばかりだし。
それにアメリカでの新興住宅の建設ラッシュの時期でもあり、それが直ぐ近くに森があったり、建設現場を自転車で走り追跡をかわすとかの設定にも活かされているし。
ただ、テレパシーなのか何なのか、E.T.の身体への変化や行動が主人公に伝わってしまったり、共生関係になっていたり、一瞬で怪我を治してしまったりと、ファンタジー過ぎる部分はちょっとやり過ぎの感はある。

基本はファミリー映画だけれど、演出や何より照明による光での画面作りといったスティーヴン・スピルバーグの上手さが光り、非常に出来の良い映画に仕上がっている。ただ、この「20周年アニバーサリー特別版」は後から下手にCGで修正してしまったので、そこは興が削がれる部分でもあるけれど。

☆☆☆☆★

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