スーパーマン リターンズ

2022年06月29日 水曜日

ブライアン・シンガー製作・監督、ブランドン・ラウス主演の2006年のアメリカ映画「スーパーマン リターンズ(Superman Returns)」
1978年の映画「スーパーマン」。1980年の映画「スーパーマンII 冒険篇」の続編。

スーパーマンは故郷のクリプトン星の残骸が見つかったという話を知り、宇宙に旅立ってから五年が経ち再び地球へと戻って来た。
スーパーマンは再びクラーク・ケントとして暮らして行く事になり、デイリー・プラネットに復帰。
デイリー・プラネットで同僚であり、クラーク・ケントが恋心を持っていたロイス・レインには子供がおり、パートナーと暮らしていた事を知る。
レックス・ルーサーはスーパーマンが突然いなくなり、レックス・ルーサーの裁判でスーパーマンが証言しなかった為に釈放となっていた。
レックス・ルーサーは北極の孤独の要塞からクリプトンのクリスタルを盗み出し、隕石の中に含まれるクリプトナイトを手に入れ、両方を合わせて海に入れる事により爆発的に鉱物を作り出せる事を知り、それを使って北アメリカを沈めて新たな大陸を作り出そうとしていた。

クリストファー・リーヴのスーパーマンシリーズ四作を見たので続けて「スーパーマン リターンズ」も見てみた。
この映画自体は色々詰め込みながらも見せ場も多くて飽きる事無くおもしろかったけれど、やっぱりこの映画の立ち位置が微妙なので、どうしても映画が微妙な感じになってしまっているのが勿体無いと思ってしまった。

映画自体は題名通りに突然いなくなったスーパーマンの帰還を描いていて、始まりから墜落しそうな飛行機を助けるという見た目的にもアクション的にも抜群な登場で掴みは良く、敵はスーパーヴィランではなく、それまでの映画の宿敵レックス・ルーサーが、これまでの様に土地にこだわって今までの土地を壊して新たな大陸を作り出そうとして、これまでの映画のレックス・ルーサーのやっていた事を更に大きくしたという今までの流れを汲んでいるし、これまで余り活かせていなかったロイス・レインの新聞記者設定も謎の大停電の調査からレックス・ルーサーに辿り着くという展開も見せて活かしているし、そのクラーク・ケントとスーパーマンとロイス・レインの恋愛関係も子供や別の相手という新たな要素を入れて新展開を見せているし、アクションもCGをバリバリ使いながらもブライアン・シンガーっぽい抑え目ながらも見せるアクションで良いし、有名なスーパーマン初登場の1938年の「Action Comics #1」のカバーアートを再現するスーパーマンが自動車を持ち上げている場面を入れたり、有名な台詞の「空を見ろ!鳥だ!飛行機だ!スーパーマンだ!(Look! Up in the sky! It’s a bird! It’s a plane! It’s Superman!)」をジミー・オルセンが撮ったピンボケの写真を見ながら「これ鳥じゃない?飛行機だ。いやこれは…」と笑いの場面にして入れていたりと、結構色んな要素を入れ込んで、それが結構上手い事入っていておもしろかった。

ただ、この映画が何故か完全リブートの新作ではなく「スーパーマンII」の1980年から26年経っての続編映画にしてしまったので、どうしても馴染めない部分や疑問が出て来てしまう。
始まりから「スーパーマンII」にも無かったスーパーマンが突然いなくなった話から始まり、これは後からロイス・レインに子供がいて、その子供がマーロン・ブランドが演じていたスーパーマンの本当の父親のジョー・エルの言葉がスーパーマンに引き継がれるという展開にしたかったからだとは分かるものの、前の映画でも無かった展開を入れていて、何だ?何だ?と序盤でつまずいた。
しかも、このスーパーマンがいなくなった事でロイス・レインも記事を書いていたけれど、神の様なスーパーヒーローは必要なのか?という題材も扱いながら、それに関して何も結論的なモノを見せないまま終わるし、それは今後も人間が考えて行かないといけない事だ…的な教訓めいた結論も無いまま、本当に投げっぱなしで終わってしまうし。

恋愛話も、以前のクリストファー・リーヴのスーパーマンでもスーパーマンを出しに使ってクラーク・ケントの方に振り向いてもらおうとする姑息な感じがあったけれど、今回はロイス・レインは既に子供もいて家庭もあるのにスーパーマンで結構攻めるし、家まで飛んで行って盗み見や盗み聞きしているわで、やっぱりこのシリーズのスーパーマンは前から恋愛部分は全然好きになれない。
一方のロイス・レインも、一緒に暮らしているパートナーにはどうやらスーパーマンの子供だと言っていない感じだし、スーパーマンにも子供の存在を言わないし、スーパーマンが戻って来たらスーパーマンに夢中でパートナーに対する愛情が余り見られず、結局パートナーは自分の息子だと思っていたのがスーパーマンの子供だと知ったのかどうかも描かれていないし、スーパーマンの子供を導入した割に非常に中途半端なままで投げっぱなしになっている。
これは多分当時はこの映画の続編も決まっていたのでそこで描くつもりだったのかもしれないけれど結局続編は作られずだったので非常にモヤモヤしたまま。

あと、「スーパーマンII」の続編となってしまうとどうしてもクリストファー・リーヴのスーパーマンと見比べてしまうのはしょうがなく、特にわたしはクリストファー・リーヴのスーパーマンシリーズ四作を続けて見た後のこの映画なのでクリストファー・リーヴのスーパーマンの印象が強過ぎるというのもあったけれど、ブランドン・ラウスのクラーク・ケントの方は結構良い感じだった。
クリストファー・リーヴのクラーク・ケントはもっとドジっ子だったし、もっとお茶目ではあったけれど、クリストファー・リーヴのクラーク・ケントに似ていて背の高い真面目な青年が良く出ていて良かった。
ただ、ブランドン・ラウスのスーパーマンとなると何か印象が弱く、あのクリストファー・リーヴのスーパーマンの精悍さやカッコ良さに比べると相当物足りなかった。
加えて悪かったのが、スーパーマンが空を飛ぶ場面ではブランドン・ラウスの合成ではなくスーパーマンを丸々CGで作ってしまっていたのも大分良くなかった。
ロイス・レイン役のケイト・ボスワースも印象が弱くて、スーパーマンとロイス・レインが向き合っての場面になると「♪お前~誰だよ!」ロックンロールだった。
一方、レックス・ルーサー役のケヴィン・スペイシーは濃くて良く、しかも時々ジーン・ハックマンに見えて来る位だった。

この映画、映画自体は大分良くおもしろかったけれど、やっぱり「スーパーマンII」の続編にしてしまった事で色んな要素を引き継がなくてはならず、そこに今までとは違う要素を入れるとなると何だかなぁ…と思ってしまう部分が出て来て、これは完全リブートで一から始めた方が良かったと強く思ってしまった映画だった。

☆☆☆★★
 
 
関連:スーパーマン(1978年)
   スーパーマンII 冒険篇
   スーパーマンIII/電子の要塞
   スーパーマンIV/最強の敵
   マン・オブ・スティール

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