タワーリング・インフェルノ

2015年07月29日 水曜日

ジョン・ギラーミン監督、ポール・ニューマンスティーブ・マックイーン共演の1974年の映画「タワーリング・インフェルノ(The Towering Inferno)」。
リチャード・マーチン・スターンの小説「そびえたつ地獄(The Tower)」とトーマス・N・スコーティアとフランク・M・ロビンソンの小説「タワーリング・インフェルノ(The Glass Inferno)」の二作を原作としている。

サンフランシスコに新たに建てられた138階建の高層ビル、グラスタワーの完成式典が行なわれようとしていた。グラスタワーの設計者ダグ・ロバーツは地下室の発電機の故障から、ビルの建設費削減の為に自分の指示とは違う資材が使われている事を知り、ビル中を調べ始める。そんな中、ビルの中程から小火が起こり、発電機の故障や放水施設が起動しない事でドンドンと火は大きくなり、その上階で行われていたパーティの人々は逃げ道を失ってしまった。

この映画過去のパニック映画として有名だけれど、「流石に今見ると、どうなの?」と思いながら見たけれど、今見ても非常におもしろいパニック映画だし、下手に派手にしていないので現実味も非常にタップリとあり、常に緊迫しながら見れた。

始まりは、色んな人々がビルにいる場面を次々と見せる各登場人物の紹介場面の連続で、「あれっ?これは律儀過ぎてあんまりおもしろくないんじゃないのかしらん…?」と不安になったけれど、直ぐにポール・ニューマンは自分は完璧な仕事をしたはずなのにビルのオーナー側の巨大過ぎるビルの建設にあたって流石に経済的に厳しかったらしく、建設費削減を計ってちゃんと建築基準に沿ってはいるけれど、ポール・ニューマンの指示よりも安く上げた資材がビル全体を稼働させる事になった本開館日の過負荷によって徐々に問題発生して、それが小火に繋がり、更にその不備によってドンドンと燃え広がって行き、完成式典だからと避難の判断を遅らせた事によって大惨事になって行くという、奇をてらわない非常に合理的な流れで、現実に起こりうる災害を描いていて、すんなり話に入れる。
その後も、火は一気に燃え広がらずに徐々に延焼して行き、それを何とか食い止めている消防士達の奮闘を描きつつも火を抑え切れずに上階に燃え広がって行き、パーティー会場で何も出来ずにそこで待つだけの人々を描き、変に娯楽の方向へ行き過ぎない緊迫感の出し方も現実味があって上手い。
それに、今の映画だと「地上で会おう。」とか「愛している…。」という様な台詞を言った人物は完全に死亡フラグが立って、実際に死んでしまう事がほとんどだけれど、この映画ではそう言っても死なずに助かる人もいれば、流れ的に助かるんだろうと思ってみていたら意外な所で死んでしまったりするのも緊張感が抜けない様に出来ている。ポール・ニューマンの相棒のおっさんは、ポール・ニューマンが上に上がっていない時にスティーブ・マックイーンと協力して逃げ道を考え出したりするのかと思ったらあっさりいなくなるし、先生だったジェニファー・ジョーンズは危険を冒して家族を助け出そうとしたし、子供達との階段の場面もたっぷりあったし、詐欺師のフレッド・アステアとの話もあったので絶対助かる人だと思っていたら、まるでこれまでの罰かの様なフレッド・アステアの結末を見せる為だったりとか、脚本も中々一筋縄では行かない展開を見せる。
ただ終盤に来て、隣のビルからロープで綱渡りするのは最後に社長の婿の見せ場と追い詰められた人々を見せる為の仕掛けなんだろうけれど、ちょっとやり過ぎな感じはあるし、最後の火を収める手段が巨大な貯水槽の爆破って、最後に火じゃなくて大量の水を流す大仕掛けの見せ場を作る為に結構無茶した感はある。あの貯水槽の場所、どう見てもビルの100階以上にある感じが全くせず、地下室感が凄いし。

このパニック映画をやり過ぎなB級臭さを出させないのは、やっぱり主演のポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンの力。
ポール・ニューマンは初めから軽い感じだったけれど、自分の仕事が人命の安全に関わる事も分かってのきっちりとした熱い人物で、普通の人だけれどヒーローとして輝いていた。
一方のスティーブ・マックイーンは序盤全然登場せず、45分位経ってからの登場で、常に仲間の消防士達を気遣いながら前線で直接指揮し、危ない所も自分で出向くと言う最後まで役的には美味しい所なんだけれど、この時年齢は40半ばで「大脱走」や「華麗なる賭け」に比べて老けて余りカッコ良くないと思ってしまったのに、徐々にスティーブ・マックイーンが汚れて行くと段々とカッコ良くなって行き、やっぱりスティーブ・マックイーンはカッコ良いし、凄い存在感を改めて感じた。
序盤はポール・ニューマンの完全主役だったのが、後半になるとスティーブ・マックイーンの活躍が大きくなり、最後の場面は完全にスティーブ・マックイーンが主役で終わっている。二大スターの共演だからの事なんだろうけれど、不思議な感じの構成。
実際にはポール・ニューマンがスティーブ・マックイーンよりも五歳年上なのに、当然二人の役作りなんだろうけれど、見ているとスティーブ・マックイーンの方がポール・ニューマンよりも随分年上に見えた。これも二人共凄いなぁと感心。
主役二人だけでも十分豪華過ぎだけれど、その脇を固めるのもフェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、ウィリアム・ホールデン、ジェニファー・ジョーンズ、O・J・シンプソン等、有名俳優が揃っている。近年のオールスター映画って逆に安っぽい感じがしてしまうのだけれど、昔のオールスター映画って「良く集めたなぁ」という感心と、「この人って、あの映画のあの人なのか」という発見で非常におもしろく見れる。
わたしはフェイ・ダナウェイが好きなんだけど、やっぱりフェイ・ダナウェイって良い表情するよなぁ。でも、フェイ・ダナウェイ出ている割に活躍する場面は少なかった。ここら辺は、ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンが主演だから!とはっきりしていたんだろうなぁ。

1970年代の映画なので合成の緩さとか、グラスタワーの模型が夜になると安っぽいというのはあるにせよ、火事の場面は本物の火なので迫力が違う。今なら派手さと扱い易さを求めてCGにしてしまうのだろうけれど、それだと作り物感ばかりで安っぽくなってしまう。この映画での火の迫り来る感じは、やっぱり恐怖。撮影相当大変だったろうな。

この映画、パニック映画の最高峰の一つと言われているらしいけれど、確かにそう。現実味のあるビル火災やその原因。抑えながらも緊迫感のある描き方。危機に直面しながらも自分の責任を感じ駆け回るポール・ニューマンと、自分の仕事を黙々と行い人々を助けようとするスティーブ・マックイーン。その二人の存在感で、パニック映画でこんなに真剣に見入ったは久々。見終わった後の「おー…!」という心地良い集中力からの疲れのため息が非常に気持ち良い映画でした。

☆☆☆☆★

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