エクスペンダブルズ2

2014年11月23日 日曜日

サイモン・ウェスト監督、シルヴェスター・スタローン脚本・主演の2012年の映画「エクスペンダブルズ2(The Expendables 2)」。

前作での南米での活動でCIAが手に入れるはずだった金を損なってしまった事を責められ、墜落した輸送機からの荷物の回収を依頼されたエクスペンダブルズ。荷物を手に入れ帰ろうとすると、謎の武装集団が現れ荷物を持って行かれてしまう。その荷物の奪還よりも仲間の復讐の為に彼らを追う事になる。

一作目で20世紀のアクションスター達のオールスター映画を見せ、そこで興奮した分、二作目となるとそのオールスター映画以上のモノが無いと続編の意味も無いのだけれど、この続編は話はまあまあなのに一作目以上の興奮が無いので、見終わっても「う~ん…。」と物足りなさが結構大きい。
今回は前作からのジェイソン・ステイサムドルフ・ラングレンジェット・リーや、前作では顔見せ程度だったブルース・ウィリスアーノルド・シュワルツェネッガーも戦闘に参加し、更に敵はジャン=クロード・ヴァン・ダム、更に更にチャック・ノリスまで登場。
確かにジャン=クロード・ヴァン・ダムやチャック・ノリスが登場したら「おお!」と盛り上がり、特に訳の分からぬ見せ場での登場のチャック・ノリスなんか笑ってしまったのだけれど、彼等が映画での展開として欠かせないかと言うとそんな事は無く、とにかく大物スターを配役したので話の展開とか関係無く、何とか隙間を作って入れ込んでいる感じしかしない。チャック・ノリスは特に振りも何もなく、どう考えても一人じゃ出来ないだろうという敵の大量虐殺でエクスペンダブルズを助けて登場して来て、最早「チャック・ノリス」という映画スターをいじったコントになっており、なんじゃそりゃな登場。この登場の場面、「何がどうなったの?一人じゃ無理でしょ?何でここにいるの?」とチャック・ノリスを知らないと意味不明だと思う。
今回ブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーも銃撃戦に加わるのだけれど、この場面がつまらない。予告編だと、この二人が小型自動車をドリフトで乗り回して銃を撃っていておもしろうそうに思えたのに、そこまではただ銃をぶっ放すと敵が撃ち殺されて行くだけの連続が長い事続き、その流れで自動車での銃撃になるので、流れとして劇的にはなっていなかった。結局ブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーの活躍はほぼここだけなので、スターの撮影日程の関係でこれ位の感じばかり。
ジャン=クロード・ヴァン・ダムも彼にしては珍しい悪役なのに、全然体を張った格闘場面が少なく、あの回し蹴りも中途半端な登場の場面だけ。最後にシルヴェスター・スタローンとの一対一の対決になるのに、アクションもそれ程見せ場も無く、逆にシルヴェスター・スタローンに回し蹴りされて終わってしまうし。
他のスターも、前回は大した見せ場も無く退場したと思ったら結局良い人でした…で残ったドルフ・ラングレンが結構活躍して、常に誰よりも悪役顔なのにお茶目な感じが見えるドルフ・ラングレンが物凄く良いのに、そのドルフ・ラングレンと喧嘩する程仲が良いジェット・リーが入れ替わる様に始めに登場してすぐいなくなってしまい、それ以降一切出て来ないのが違和感。これもジェット・リーの日程の都合でしかないのだろうけれど、始めの場面でジェット・リー一人の気持ち良いアクションが多めにあったと思ったら、要はそれ以降登場すらないのでの見せ場と言う事だったのか…。前回はドルフ・ラングレンとジェット・リーは殺し合いの対立だったので、今回は仲良しの対立で見たかったのに…。
それに今回エクスペンダブルズの新入りとして若手のリアム・ヘムズワースがすでに参加しているのだけれど、早い段階で退場してしまう。彼の為にエクスペンダブルズが戦うという理由になっているにしても、何だかなぁ…な扱い。その代わりの様にユー・ナン演じるCIA工作員が入って来るけれど、活躍するのは前半だけで後半全然いらないし、アジア系ならジェット・リー出せよ!と思うし、何であのマギー・チャンという役者がいるのに役名がマギー・チャンなの?終始「マギー・チャン」と呼ばれると物凄い違和感しかなかった。しかも、ユー・ナンの演技って、何だか上目使いで常にふて腐れた顔していて、微妙にむかつく。それに「エクスペンダブルズ」って男臭さしかなくて十分な映画なのに、一人女性を入れる事によってちょっと違う雰囲気になるし、他の人の出番や見せ場が減るじゃない。

アクションは、前作での細かくカットを割って早く見せているのだけれど結局何しているか分かり辛かったのから改善され、ちゃんと見せてはいるけれど、そもそものアクション場面が少なく、全然に印象に残らず。やたらと銃撃戦が多く、しかも特に工夫も無く仲間が撃ったら敵に当たって死んで行くの繰り返しで余り楽しくも無い。ただ、一番初めのチーム全員で強襲をかける場面は畳み掛ける圧倒的な迫力で非常におもしろかったし、興奮もあったのになぁ。見終わると一番の盛り上がりは、この初めの場面だった。

それと今回は前作であった役者自身の人生や映画をネタにしたパロディやいじりも少なかったのは残念。引っ掛かったのは、ドルフ・ラングレンの本当は賢くて、本当に自身もマサチューセッツ工科大学に行っていたけれど作った爆弾不発とか、ランディ・クートゥアの肘連発とか、黒いベレー帽を被ったシルヴェスター・スタローンは「デモリションマン」でのジョン・スパルタンにしか見えないとか位かな。アーノルド・シュワルツェネッガーの「I’ll Be Back」はもう何年も前からお腹は一杯。

あと気になったのは、日本語吹き替え版。映画は普段は吹き替え版では絶対に見ない事にしているけれど、シルベスター・スタローンはささきいさおだし、アーノルド・シュワルツェネッガーは玄田哲章だし、ドルフ・ラングレンは弟者こと大塚明夫だし、ジャン=クロード・ヴァン・ダムはもじゃめがねこと山寺宏一だしで、こちらも豪華だけれど聴き慣れた中の人で安心なので見たのに、ブルース・ウィリスの吹き替えが綿引勝彦でがっくり…。全くブルース・ウィリスに合っていない。もう、あの野沢那智のブルース・ウィリスが無い事は分かっているけれど、だったら村野武範にすべきだし、樋浦勉じゃないの?
それにユー・ナンの吹き替えの声が微妙に下手糞に感じたのは栗山千明だったからか。声優が本業以外の人が吹き替えると違和感は拭えない。特にこの映画の様に、大ベテランのトッププロが集まっていると、声優としての足りなさが前面に出てしまうし。

この映画、続編という事もあり、前作以上のモノを期待するのは当然なのに、それを全然越えなかったので物足りなさばかりが残ってしまった。銃を撃ったらとにかく敵が死んで行くのは「ホット・ショット」のチャーリー・シーン位やらないと最早おもしろくも無いし、一方で今回のチャック・ノリスみたいのだと訳分からず、見せ場を外してしまっているしで、見たいのは各アクション俳優の殴り合い蹴り合いだったのに…。前作は昔のB級アクション映画的な安っぽさがあったのに結構当てていたけれど、今回はそれなのに外れ感が強いのは監督のサイモン・ウェストのせいなのかなぁ?サイモン・ウェストって、あのつまらなかった「トゥームレイダー」や、そんなにつまらなくもないけれどおもしろい訳でもない「ゲットバック」の監督だったのか。やっぱりそうなのかなぁ…?

☆☆☆★★
 
 
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