エクスペンダブルズ

2014年11月22日 土曜日

シルヴェスター・スタローン製作・監督・脚本・主演の2010年の映画「エクスペンダブルズ(The Expendables)」。

エクスペンダブルズと自称している傭兵部隊は、謎の男から南米の小島を占拠した将軍の暗殺の依頼を受ける事になる。

1970年代から1990年代にかけてのアクション映画好きにはたまらない映画。わたしは、1970年代・1980年代の映画はテレビで見て、1990年代位の映画から映画館で見た様な世代だけれど、登場する役者に一々しびれてしまった。シルヴェスター・スタローン、ミッキー・ロークドルフ・ラングレンジェット・リーブルース・ウィリスアーノルド・シュワルツェネッガースティーブ・オースティン、ノゲイラ兄弟等々、今まで映画でテレビで見て来た人達がわんさか出まくって、21世紀における本当のオールスター映画でワクワクが止まらない。
シルヴェスター・スタローンとミッキー・ロークという、どちらも人気が出てからの低迷期があって、ミッキー・ロークは整形の失敗だけれど、シルヴェスター・スタローンは整形なのかなんなのか顔面が変な感じになってしまっている二人の立ち直ろうとしようとする場面なんて、現実の二人に重ね合せて見てしまい泣きそうになってしまった。この映画では単にオールスター映画だけでなく、そのスター達の現実を重ね合わした自虐ネタが次々と出て来る部分でもおもしろい。ミッキー・ロークの女好き。ドルフ・ラングレンの薬物依存や、行っちゃったヤバい悪役なんだけれど本当は良い奴。ジェット・リーの背が低いとか、金が欲しいと何度も言ったり。アーノルド・シュワルツェネッガーの政治家ネタ等、皆でさらけ出したり、ファンに楽しんでもらおうとする姿勢が素晴らしい。ただ、シルヴェスター・スタローンは監督から脚本まで自分でしているからか、自身の自虐ネタがほとんど無く、そこが残念。「ジャングル好き」位じゃ物足りない。イタリアの種馬ネタとか、無暗にハムを食べているとかして欲しかった所。今までの映画人生で娯楽作に出て人気が出て、それを払拭する為にサスペンスや演技派を目指したけれど、60歳を過ぎて結局はアクション映画、それも「エクスペンダブルズ(消耗品)」とこれまでの娯楽作役者を揶揄するかの様な自虐的な題名まで付けた映画なんだから、もっと自分をいじってよ。必死で走っているのにモタモタして全然走れていない所さえ特にいじらず仕舞いじゃない。
それに、ストーン・コールド・スティーブ・オースチンが出ているのだから絶対シルヴェスター・スタローンにスタナー喰らわすと期待していたのに、スタナー所か「What?」も、中指おったても無し。ただし、シルヴェスター・スタローンはSCSAとの格闘場面で首の骨にヒビが入ったらしい。やっぱり、スタナー出してたの?そしてSCSAの最後は、元UFC王者だったランディ・クートゥアとの殴り合い。UFCのトップスター対WWEのトップスターという、ここでも夢の顔合わせ。もっとボッコボコの殴り合いがあっても良いのに、それ程でも無しで残念。それと、SCSAのボスを演じていたジュリア・ロバーツのお兄さんエリック・ロバーツの姿が、白髪のオールバックでスーツ姿、金持ちで金をチラつかせて無茶苦茶するって、完全にビンス・マクマホンで笑ってしまった。
予告や公開前の話題では、シルヴェスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリスの三大アクションスターの共演が中心だったけれど、実際見てみるとこの三人が揃う場面と言うか、アーノルド・シュワルツェネッガーとブルース・ウィリスの出演は一場面だけ。この時点ではお遊び程度の出演だったのだけろうけれど、「エクスペンダブルズ2」が作られ、そちらでは結構登場する事を知ると、これさえ上手い前振りになってしまっている。

シルヴェスター・スタローンが作って往年や現役のアクションスター達が登場するとなると、話自体は中身の無い、それこそ1980年代から1990年代に濫造されたアクション映画と同じモノになってしまうのは仕方無いのか。軍事力で恐怖の独裁を行なう南米の悪い将軍対、無茶苦茶する政府が関与しない元軍人なんて、見飽きる程擦られた題材。ただ、これだけのスターで押し切るので見ていられるし、やっぱり楽しい。何時頃から増えたのか分からない、政府の陰謀だの、仲間だと思っていた人物が実は裏切っていただの、登場して濃い感じで存在感があるのに意味も無くあっさり死んで行く人物がやたらいるだのの映画って、濫造されて飽き飽きしていた所の2010年代に、こんなただ人を無暗に殺しまくって、あれだけ激しく撃ち合っていたのに仲間は誰も死なず、ドルフ・ラングレンさえも一緒に「めでたし、めでたし」なんて、割り切っていて非常に良いじゃない。娯楽映画としては最高。「将軍も操られていただけで、本当は国を思っての行動なんだ。」とか、「兵士達は将軍の独善を本気で信奉していたのか、それとも仕事としてやっていただけなのか分からぬまま、エクスペンダブルズに殺されてしまった…」とか考えちゃいけない。…と言うか、そんな不必要な考えを起こさせるシルヴェスター・スタローンの脚本が駄目。
それと、アクション場面の激し過ぎるカット割りも駄目。普通に各人が戦っている場面を見せれば良いのに、やたらとカット割りを早くして短く繋いで、場面によっては誰が何しているかさっぱり分からない場面もあるし、折角アクション出来る人達集まっているのにそこをしっかり見せなきゃ意味無いじゃん。これじゃまるで近年のスティーヴン・セガールの省エネアクションの安いビデオ映画じゃん。もっとドルフ・ラングレンの空手対功夫皇帝ことリー・リンチェイのバッチバチなアクションや、ミッキー・ロークが猫パンチを当てたらシルヴェスター・スタローンやドルフ・ラングレンが倒れるじゃれ合いとか、SCSAとランディ・クートゥアのプロレス技の応酬とか、路地裏で延々とバックドロップをし続けるとか見たかったのになぁ…。

この映画、正直話的にも、アクション的にも物足りない。ただ、登場する役者陣が画面を持たすと言うより、出ているだけで画面を作り、彼等の今までの映画や背景を知っていると物凄く深くなり、じっと見てしまう。前半の展開は大分ゆっくりとまったりと進むのに、役者を見ているだけでお腹一杯。色んな事を思いながら見れてしまう。逆に言えば、彼らのこれまでを知らずに見ると「古臭い馬鹿映画」にしか思えないかもしれない。ただ、わたしはワクワクとニタニタが止まらなかった。

☆☆☆☆★
 
 
関連:エクスペンダブルズ2

« | »

Trackback URL

Leave a Reply