ジョン・カーペンターの要塞警察
2014年11月21日 金曜日ジョン・カーペンター監督・脚本・音楽・編集、オースティン・ストーカー主演の1976年の映画「ジョン・カーペンターの要塞警察(Assault on Precinct 13)」。
警部補になったイーサン・ビショップは、移転による引っ越しでほとんどもぬけの殻になった警察署に回された。その警察所に護送途中で寄る事になった囚人や、事件を知らせに来た人が現れ、復讐の為に現れたギャング達に取り囲まれる事になる。
意味がよく分からない部分も多いけれど、常に緊張感溢れる展開と演出で非常におもしろかった。
始まりは警部補、囚人を乗せた護送車、道に迷う親子、仲間の復讐を誓うギャング達というバラバラな人を見せ、それらの人々が警察署に集まって来るだろう事は分かるものの、30分位は特に何も起きないままだったのが急に話が展開して行く構成の意外性に驚きと関心。普通だと各人物が集まって、警察署に閉じ込められて、その中での群像劇を見せつつ銃撃戦を見せるモノだと思っていたら、絶対今後何かするだろうと思った結構濃い人々があっさり死んでしまったり、全然活躍もしないままの父親とか、登場人物の扱いの思い切りの意外性にも驚き。このバッサリ感は確かに展開から目が離せなくなる上手い脚本。子供の展開なんて、「そうするか!」と驚いたし。
立て籠もりも相手が全然分からないままの恐怖もあるし、理由自体も分からない不条理さも怖さと不安さを盛り上げている。この映画自体は映画「リオ・ブラボー」に大きく影響を受けているそうだけれど、不条理さや包囲の恐怖、言葉も発さずに死ぬ事も気にせず無暗やたらと襲撃して来るギャング達とか、ほとんどジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」に近い感じがする。
おもしろいのだけれど根本的な部分で意味不明な所があって、包囲の発端となる親子の話でギャング達はアイスクリーム屋を執拗に付け回して殺した意味が分からず、元々ギャング達は警察に仲間を殺された復讐の為にサイレンサー付けた大きな銃を持ち出して来て、警察を襲うつもりじゃなかったの…?とずっと疑問ばかり。しかし、中盤以降の展開を見ていると、仲間を殺した男を追っていて、偶然逃げ込んだ警察署を包囲したっぽく、偶然の警察署襲撃なら何で速攻であれだけの人と装備を集められているのかもよく分からないし、重装備から見ると計画的犯行っぽくもあるし、結局ギャング達の行動が何だかよく分からない…。襲撃でギャングの仲間がバンバン殺されているのに、特に策も無く突っ込んで来るだけだし、ギャングの無謀さの説明も無いので彼らの異様さ、異常さは何から来ているのかも分からず。
それに色んな人物を出して、それらの人物を立てておいたのに、特に何も無いまま殺してしまうのは誰が死んでしまうか分からない緊張感はあるとは言え、余りの素っ気無さに身が入って行かない感じも出て来る。
ジョン・カーペンターらしさがあったのは、ナポレオン・ウィルソンの「ナポレオン」は何で「ナポレオン」か分からないままという所。スネーク・プリスキンのクリーブランドでの出来事が語られないままなのと似ている。
この映画、設定や前半の登場人物の出し方からすると、密室に閉じ込められた各人物の葛藤を描いた群像劇に行きそうな所を、中盤から意外な展開を見せ、その展開に喰い付いて放さなかった。この意味不明な突撃はアメリカン・ニューシネマっぽくもあるし、この乾いた感じは1970年代だし、「1976年に低予算で作ったらこうなりました。」という感じが一杯。でも、発想と演出で見せ切る力は大したモノ。
ここら辺の詰めの甘さをもっとどうにかしたら良いのにと思うと、この映画のリメイク作である「アサルト13 要塞警察」があるのだけれど、確かこの映画見た記憶がうっすらあるには大しておもしろくない映画だった様に思う。
☆☆☆☆★