五毒拳

2026年07月07日 火曜日

チャン・チェ監督・脚本、チャン・シェン主演の1978年の香港映画「五毒拳(五毒 The Five Venoms)」

ヤン・ドーは五毒拳を習う為に五毒門の師匠の下で三年間修業をしていた。
しかし、師匠は不治の病で自分の死が近づいている事を悟り、これまでの行って来た悪事を悔やみ、五毒門を終わらせる為、ヤン・ドーにこれまで育てた五人の弟子を見つけ出し、その中の良識ある一人と組んで兄弟子達を倒し、友人に預けた五毒門の秘宝を見つけ出して寄付せよと命じた。
ヤン・ドーは町に出て身分を隠しながら情報を集めていると、それぞれ二人ずつで組んだ兄弟子達も秘宝を狙っている事を知る。
秘宝の持ち主を見つけ出した兄弟子達は襲撃を仕掛けて家人を皆殺しにしてしまった事で警察の捜査が入り、目撃者の証言から犯人が分かって兄弟子達が捕らえられてしまう。

何度目かの昔の香港映画に興味が湧いた時期が来たので幾つか古い香港映画を見ていて、その中で知ったチャン・チェの映画を続けて見てみた。
そのチャン・チェの映画の中では変わった映画と言うか、この映画自体が変わった構成の映画で、ずっと「これは何なのだろう?」と不思議なままで見ていた。

この映画がチャン・チェの映画だからなのか、当時の香港映画のいい加減さだからなのか、説明足らずと都合の良さがまず来て、そこで躓いた上に変な構成なので全然乗って行けず。

始まりから、五毒門は相当な悪党団だったらしく、世間では相当嫌われていて名前も偽名でないとやって行けないと言う話は出て来るのだけれど、実際に何をしたのかは全然描かれないし、言及もされず、一方で主人公の最後の弟子やヤモリ拳の四番弟子やガマ拳の五番弟子は気の良い人達なので、五毒門の何が悪いのかがさっぱり分からない。
師匠は死に際に「自分は悪い事をしたから弟子達を殺してしまえ!」と、まあ自分勝手過ぎるのでそういう人だったのかもとは思わせる様にはなっていたけれど。

最後の弟子は師匠に対して「五人の兄弟子の人相も世間名も分からないのにどうやって見付ければ?」と言っていたのに、次の場面ではその兄弟子五人と五毒門の宝もある町に全員集合って、まあ都合良過ぎ。
兄弟子達も宝の持ち主がはっきりと分かっていなかった様なのに随分前から正体を隠して警察になっていたり、ムカデ拳の一番弟子は自分の家があの町にあったの?と全員が揃う理由も都合が良過ぎ。
犯人を特定し難い目撃者の証言だけで犯人が誰なのか直ぐに分かったり、この映画の中盤はサスペンスや推理で進んで行くのに思い付いた設定をとにかくやる為だけであらゆる所が強引で都合が良過ぎなので付いて行けないし、そこがグダグダなのでサスペンスや推理モノとしてはおもしろくなくなってしまっていた。

始まりから師匠によるこの映画の目的をはっきりと打ち出していたので、てっきり最後の弟子が兄弟子達を見つけ出しながら宝を見つけ出す話になるのかと思っていたら、早い段階で宝の地図は見付けたのに、そこからは誰が殺人犯かの罪の擦り付け合いになり、思っていた展開と全然違っていて意外。
それがおもしろければいいのだけれど、そうでもなく、ずっと回りくどいやり取りで罪を擦り付け、一番弟子と二番弟子組が一方的に暗躍して五番弟子が酷い目に合う展開がずっと続いて段々と飽きて来ていた。
これだけ回りくどくしていたのに最後は一気に皆が集まって殴り合って殺し合って終わるので、それまでのサスペンスミステリーは何だったの?と思ってしまったし。

それにこの話の軸となっていたのが五毒門の宝を巡る争いだったのに、結局宝は全く出て来ず、宝が何だったのかも分からないまま。
話としては出す必要はないんだろうけれど、それにしても初めに宝の地図を出しているので、見ている方は「宝がどうなるの?」という楽しみがあったのに、これ以降は宝の話が関係無くなっちゃって、これも話を転がす為の導入の設定なだけで思い付いたけれど後はほったらかしにしている雑多な脚本という事か。

五毒門の五毒拳はそれぞれが違う性質や拳法を見せて、やたらと丈夫とか、重力無視して壁に立つとか派手さがあっておもしろかったのだけれど、役者は皆何か地味。
この五毒門の人達が元々映画のその他大勢だったり、スタントマンだった人達が、ゴールデン・ハーベストに押されて来たショウ・ブラザーズが次の主役級にと押し出したからなんだろうか。

この映画、原題が「五毒」なのでより五人の毒という意味で悪人同士の駆け引きややり合いを見せるという事なんだろうけれど、その五毒門の人達は初めに「五毒門は悪い」と言う話だけしか出て来ないので別に悪人には見えないままなので、あからさまに良い人側と悪い人側に分かれて良い人側が陰謀にやられて行く展開はそんなにはおもしろくなかったし、初めに素性も名前も分からない五毒拳の弟子達や宝を出していたので、ここら辺を巡る盛り上がる展開になるのかと思いきや、ずっとまったりとした陰謀推理モノに行ってしまうヘンテコな展開に段々と飽きて来て、でも結局殴り合いの殺し合いで終わって行く急な締めに、ずっと何だかなぁ…と思ってしまった映画でした。

☆☆★★★

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