デモリションマン

2014年09月30日 火曜日

マルコ・ブランビラ監督、シルヴェスター・スタローン主演、ウェズリー・スナイプスサンドラ・ブロック共演の1993年のSFアクション映画「デモリションマン(Demolition Man)」。

犯罪者サイモン・フェニックスを追う刑事のジョン・スパルタンは、サイモン・フェニックスの罠にはまり人質全員を殺してしまったとして、サイモン・フェニックスと共に冷凍の刑に処される。36年後の2032年は犯罪が撲滅された社会になっていたが、何故かサイモン・フェニックスは外に出てしまい犯罪を犯し始めた。犯罪に慣れておらず彼に対処出来ない警察はジョン・スパルタンを呼び起こし、サイモン・フェニックスを逮捕させようとする。

録画していたこの映画見ようと思って作品情報を調べていたら、ウィキペディアに「オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』の影響が強い。」と書かれていたので、映画を見る前に「すばらしい新世界」読んでからと思って映画を順番待ちにしたのだけれど、読んでから見たら「すばらしい新世界」と全然関係ないじゃん!「すばらしい新世界」のSF要素の骨子は、「出産は遺棄され、子供は壜で育てられ、生まれた時から完全な階級制度になっているけれど全ての人が満足しており、安定しているユートピア社会における、それに馴染めない人々」だけれど、この映画では単に安定した未来社会位の要素しかない。「すばらしい新世界」では子供は産まず家族も存在していないので、結構なフリーセックス社会だけど、この映画では非常に禁欲的社会。「すばらしい新世界」の主人公達は、完全なる社会の中で自分が浮いていて、社会に馴染めない存在なので悶々と悩むけれど、この映画では「悩む前にぶっ放せ!」だし。「すばらしい新世界」では、完全な安全・安定した世界には実は裏があり、安定した世界を壊そうとする反抗勢力なんて無いし。主人公の一人である野蛮人のジョン・サヴェジとシルヴェスター・スタローンの役名ジョン・スパルタンのファーストネームが同じ事や、サンドラ・ブロックの役名が女性登場人物のレニーナーであり、著者のオルダス・ハクスリーから来ているレニーナー・ハックスリーだという事が一番関連している位。

映画としては、1980~1990年代の無茶苦茶しまくって法律なんか何処へやらな、最早コメディ映画化していたアクション刑事映画をパロディ化。皮肉った様なアクション映画と、一風変わっていて映画自体の方向性としては中々おもしろい。それに、この手のユートピアSFだと必ず暗く重い方向へと行くけれど、コメディ要素が強いのも一風変わってる。
ただ、未来なのに思いっ切り1990年代の雰囲気。衣装にしろ、ブラウン管の解像度の低いテレビとか、何より映画そのものが、如何にも90年代。
あと、そもそも犯罪者に対する罰として、数十年間冷凍保存され、その後肉体的には変わらないまま釈放という刑の意味が良く分からないのだけれど…。この刑の始めの目的って何なのだろう?

役者陣は、これまた如何にも90年代な人達ばかり。サンドラ・ブロックは、現在から比べると何か喋りも初々しい感じ。
他にもどっかで見た事ある顔だなと思ったら、警察署長のボブ・ガントンは「24」のイーサン・ケニン役で見た顔だし、警官役のトロイ・エヴァンズは「ER」の受付のフランク役で見た顔。

アクション映画としては1990年代の色んな所が無茶苦茶なアクションモノとしてはそれなりだけど、そのアクション映画をパロディ化する為にユートピアSFの設定を活かしている部分で中々興味深い映画だし、ディストピアモノ的社会批判風ではあるけれど、結局はシルヴェスター・スタローンのB級アクション映画でしかないという部分でもおもしろな映画。

☆☆☆★★
 
 
関連:すばらしき新世界 - オルダス・ハクスリー

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