リベリオン
2014年09月27日 土曜日ヤン・デ・ボン製作、カート・ウィマー監督・脚本、クリスチャン・ベール主演の2002年の映画「リベリオン(Equilibrium)」。
第三次世界大戦が起こり、世界は崩壊。新たに出来た都市リブリアは、人間の感情を薬によって制御する事によって争いが無い世界を作っていた。そこでは感情を湧き起こさせる物は禁止され、所有している人物を取り締まる捜査官クラリックが存在していた。そのクラリックの一人、ジョン・プレストンは同僚の感情違反を知り、自らの手で殺してしまう。
この映画は、何と言ってもガン・カタ。1990年代頃にカンフー・アクションと欧米的な殴り合いのアクションが融合し始めて、映画「マトリックス」の様なSFの中で使われ始めたけれど、この「リベリオン」では更に進展して一つの到達点に達した感じがする。それまで銃撃戦と言えば、遠くからぶっ放して終わりか、近距離で二人が振り返って互いに銃を突き付けあうというジョン・ウー的な見せ方だったのが、近接戦闘での銃撃をカンフー・アクション的に見せるというガン・カタは発想の勝利。低予算と言っても制作費は2000万ドルだけれど、低予算でも発想とその見せ方が上手く行けばどれだけでもおもしろい映画が作れるという見本。しかも、ガン・カタを導入した事によって「アクション映画での銃撃戦は、主人公には敵の弾は当たらないのに主人公が撃った弾は確実に敵に当たる」という都合の良い部分の説明にもなっているし。
ガン・カタも素晴らしいけれど、その他のアクション部分も上手いし、楽しい。始めの一幕のアクションからして素晴らしい。ドアを留めている部分を銃で撃ち抜いた瞬間と共にクリスチャン・ベールがドアを蹴破って、そのままドアに乗って部屋に滑り込み、真っ暗になって暫く間を取り、その後真っ暗な中、銃の発射の光に照らされ、クリスチャン・ベールが手しか動かさないガン・カタで敵を一掃するとか、唸って、しびれる掴み。なのに中盤はほとんどガン・カタが出て来ないのは勿体無く、残念ではあるけれど、最後の畳み掛ける連続ガン・カタは最高。最後はジョン・ウー的に相対して銃を向け合う所からのガン・カタでの撃ち合いなど、もう楽しくて笑ってた。
ガン・カタは飛び抜けているけれど、話自体は非常に王道なディストピアSF。ただ、それをクリスチャン・ベールの物語に絞って非常にじっくり見せているし、クリスチャン・ベールがきっちりと上手い演技をするので目を離さず見続けられる。
雰囲気も建物はヨーロッパ風、東欧風だし、名も無き脇役もヨーロッパ人風で、ハリウッド的アクション映画の雰囲気と違って良い。管理統制された世界というのは、今だと歴史的にもどうしても東欧風になるのもあるけれど、外での撮影はドイツを中心にしたのは正解な世界観の構築。
題材的にB級ではあるえけれど演出もきっちり見せ、クリスチャン・ベールが雨の降る朝日を見て感動し、感激を覚えるけれど恐怖も憶えるという場面も上手い。特にそれまでクリスチャン・ベールが無感情の演技をしていた分、感情が出て来るその場面は強くなる。
以前この映画を見て「クリスチャン・ベールという役者、良いなぁ」と思ったのだけれど、改めて見て、やっぱり良い。この人、他の映画でも基本的に感情を抑えた演技が多いけれど、感情を隠しながら感情が出てしまうのは、感情が無い人物がはまっているだけに、その分の反動が効いて来てはまり役。
クリスチャン・ベールは2000年に「アメリカン・サイコ」、2002年に「リベリオン」、2004年に「マシニスト」、2005年に「バットマン ビギンズ」とこの時期に良い作品に出会って、「マシニスト」や「バットマン ビギンズ」でトンデモない肉体改造をして役作りで作り込み、アクション映画も新時代の哀しみを背負ったヒーローを演じるし、演技命な映画にも合うしで、一気に花開いた感じ。
ショーン・ビーンも同僚のクラリック役で出演。ただ、ショーン・ビーン本人がパロディにする位作中でよく死んでしまうけれど(http://www.youtube.com/watch?v=n3T987UKN_A)、この映画でもやっぱり…。
この映画、SF好き、アクション映画好き、クリスチャン・ベール好きならたまらない。何よりもガン・カタだけれど、やっぱりアクションとしておもしろい。ただ、もう少しガン・カタの場面は欲しかった所。不思議なのは、ガン・カタは凄い発明なのに、これ以降そんなにガン・カタを使った様な映画やアクションが多くないという事。この映画自体があんまり知名度が高くないのは分かるけれど、だからこそ使う監督がいてもいいのにと思う。
☆☆☆☆☆