ウルトラヴァイオレット

2014年09月28日 日曜日

カート・ウィマー監督・脚本、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の2006年のSF映画「ウルトラヴァイオレット(Ultraviolet)」。
オープニング・クレジットでコミックスのカバーアートで製作陣の名前を見せているけれど、この映画はアメコミが原作ではなく、この映画が元。

近未来、兵士用の増強剤を作り出そうとした研究でヘモファージ・ウイルスと呼ばれるウイルスが蔓延し、国は感染した人々を駆除し始めた。感染した人々は政府と戦い始めたが、政府は感染者を一掃する為の兵器を開発した。それをヴァイオレットが盗み出すのだが…。

あの屈指の傑作「リベリオン」を撮ったカート・ウィマーのSF映画という事で期待大だったのに、これは完全な失敗作。カート・ウィマーがやりたい事詰め込み過ぎて、説明不足過ぎて見ている方は「ちょっと待って!それ何?」と思っている間に次々進んでしまい、色んな事が追い着かない。

一番悪いのはCGの使い方。町並みとかはこの映画製作時よりも一昔、二昔位前のPCゲームのFPS的なノッペリとしたポリゴン的作り物感で統一してあり、如何にもCGな作り物感を反映した偽りの都市という狙いは分かるにしても、実写の方は普通の建物なので、この落差が激し過ぎて単にCGがしょぼいだけにしか見えない。更に人物と背景の合成が酷く、人物と背景のCGの動きが全然合っていない出来の悪い合成。素人でももっと上手くするはずで、自主製作映画やテレビのバラエティ番組よりも合成の仕上げが酷い。序盤のバイクの場面の合成の酷さは何らかの意図があるのかと思うのだけれど、本当に単に酷いだけなんだろう。それに、町並みやセット等は1960~1980年代辺りのSFの雰囲気があり、これも狙いは分かるけれど、その狙いよりも安く仕上げてお洒落な未来感を出している感じがして、セットに安っぽさばかりを感じてしまう。
SFガジェットとして次元圧縮装置から空間に物を出現させたり、重力制御でバイクでビルの壁を走り周ったりと映像的に派手なのに、どれも何だか印象に残らない。重力制御を使っているのに「普通に歩いていたと思ったら実は天井を歩いてました」とかの意外性も全然効果的でもないし。
ヴァイオレットの髪の毛の色や服の色が急に塗り替えられる事があり、それが変わる事によって人の目を誤魔化すという意味のある使い方もしているのだけれど、特に意味も無く急に色を変える場面があり、単に画面的に効果的な色合いを作る為だけの様な事があるのも微妙。昔の映画で「大女優が場面が変わる度に違う衣装になっている」という事のパロディとかなんだろうか?
意外性を狙った映像としては、途中のヴァイオレット対複数の銃を持った東洋人の戦闘場面では、皆がかけているサングラスに映る映像に寄って行き、そのまま別のサングラスに映る映像に寄って行く…というのを繰り返すのだけれど、まあこれが見ていても訳が分からず、置いてけ堀。それにここのアクションはガン・カタの様な説明が無いので、ミラ・ジョヴォヴィッチがクルクル回ったりしているだけで無数に撃たれる銃の弾が一切当たらないという意味不明の都合の良さばかりで、白ける上におもしろくも無いアクション場面。しかも、「通して欲しい。」「いや、駄目だ」で撃ち合いになり皆殺しになる理由や関係性も一切意味不明。

話も、本来ならばもっと時間が長かったのを1時間30分も無く編集してしまったからこんな有様になってしまったかの様な端折りっぷり。世界や社会背景を本編で徐々に見せて行くべきなのに、始まりで説明台詞で延々と語られた所からして映像として物語る事の放棄だし、適当過ぎる作りだし。
何よりこの話の根本になるファージに関する説明が不足し過ぎ。ファージに感染するとどうなるのか?何が危険視されているのか?さえ劇中で説明の無いまま進み、よく見たら感染者は犬歯が伸びていて、台詞では感染者の事は「Vampire」と言っているのに字幕では一切出て来ず、吸血鬼の話なのか?と思っても別に人の血を吸う訳でもないし、光がどうのこうのという話でもないし、「ファージって何?」に関してはさっぱりわからず、物凄い説明不足。政府の兵士はワラワラと無数に湧いて出て来るのに、感染者は多分沢山いるはずなのに十人位しか出て来ず、感染者達の背景さえもさっぱり描かれず。
ヴァイオレットが指示を受けている感染者達は大きなビルに住んでいるけれど、政府に狙われているはずなのに政府には全然知られていないみたいで、政府はアホなのかとも思うし、そのビルには感染者でもなく政府に反抗している人々がいるけれど、その後その人々が特に話に関わって来る訳でもなく意味不明な登場だし。シックスと言う子供を保護したけれど途中で置き捨てにして逃がすのは何でだとか説明は無いし、ヴァイオレットが撃たれて死んだと思ったら、友人がどうやってか潜り込んで助け出して連れ出したとか、ほとんどの説明をしない上、何で一回撃たれなくてはいけなかったのかとか、もう意味不明な事なばかり。観客に分からす事を放棄した脚本で酷い酷い。

それにアクションも良くない。「リベリオン」では、あの大発明ガン・カタや刀でのアクションもバリバリ冴えていたのに、今回はガン・カタ風のアクションをしていて派手に暴れているにも関わらず、大しておもしろくないし、何だかカッコ悪い。全編決められたアクション指導の通りに動いている様にしか見えず、各動きを短く繋ぎ、キメをやたらとカッコ付けてしまい、安っぽいばかり。剣劇も日本のチャンバラみたいな作り物感しかないし。これって、カート・ウィマーよりもミラ・ジョヴォヴィッチに原因があるのか?ミラ・ジョヴォヴィッチのアクション映画やSF映画って、別に演技が下手という感じもしないし、その世界観に存在している雰囲気はあるのに、どれも何か微妙な安っぽさ、しょぼさを感じてしまうから、やっぱりミラ・ジョヴォヴィッチに原因があるんだろうなぁ。

「リベリオン」があれだけおもしろく、この映画も似た様な雰囲気とアクションなのに、この映画のしょっぱさと言ったら無い。全体的に中学生・高校生の「僕の考えた最高におもしろい映画」みたいな話と演出とアクションばかり。自分が分かっているから見ている人なんて気にしていないかの様な独り善がりで理由が分からない場面の連続の脚本。おもしろそうな要素は一杯なのに、早い段階で「あっ、これ駄目か…」と分かってしまう。特に「リベリオン」を見てからこれを見てしまうと、同じカート・ウィマー監督作品で似た感じなのに、トンデモない落差に完全なる駄作としか言いようがない。

☆★★★★

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