ガメラ 大怪獣空中決戦
2014年09月13日 土曜日金子修介監督、伊原剛志、中山忍共演の1995年の映画「ガメラ 大怪獣空中決戦」。
ガメラシリーズとしては九作目。平成ガメラシリーズの一作目。
プルトニウムを輸送する船が座礁するが、巨大な岩と思われた物が移動して難を逃れた。不審に思った海上保安官の米森良成はその移動する巨大な物体を調査し始める。一方、鳥類学者の長峰真弓は五島列島に現れた巨大な鳥の調査に出掛ける。米森の方は巨大な亀の怪獣ガメラで、長峰の方はギャオスという怪獣であり、その怪獣同士が戦う。
特撮や合成や演出・編集はこの当時の日本の映画としてはがんばってはいるのだろうけれど、ガメラが出て来た瞬間に全てが終了し、子供向け着ぐるみ怪獣映画でしかなくなる。それまでギャオスの出現や謎の巨大生物としてガメラを少しずつ見せて期待を煽るのに、ガメラが上陸し、二足歩行する巨大な着ぐるみの亀が出て来たら、そりゃあ爆笑してしまうし、「あ~あ…。」と腰砕けになってしまう。平成時代にガメラをやろうと思ったのは疑問だし、そもそも1965年の第一作目の「大怪獣ガメラ」がいくら子供向けだったとは言え、「巨大な亀の怪獣!」で企画が通って映画作られたのも驚くべき事。二足歩行する巨大亀が突然手足から光と風を出して、回転しながら空飛んだら笑うでしょ。その後は足部分の穴だけから何かを放射して飛んで、回転飛びが全然出て来なかったりするので、だったら初めから回転飛びは無しでいいんじゃないの?とも思うし。
そもそもガメラで大人向けなんて前提が無理はあるけれど、脚本も酷い。始まりからして「我々はプルトニウムを運んでいる。もし何かあれば大変だぞ。あ、座礁した!」と分かりやすい説明台詞で全部説明して、その通りにしかならないどうしようもない始まりで、これ以降の話に何ら期待出来る事がないのは分かるけれど、中盤でギャオスが現れ、村の人が逃げ惑う中、女性が「まだ子供が残っている!」と叫んでいる所へ中山忍が子供を抱いて走って来て、案の定こけてしまい、ギャオスが襲いかかろうとする所をガメラが助ける…なんて、もう使い古されて流石に1995年でも恥ずかしいだろう展開を恥ずかしげも無く堂々とするんだから、見ていても「うえ~…」とヘドつきそうだった。後半からの急な「それまで多くの人が勾玉を触っていたのに、藤谷文子が勾玉触ったらガメラの意図が分かり、ガメラが傷付くと藤谷文子も傷付く」なんて展開は子供騙しもいい所。
それに主人公である伊原剛志と中山忍の役もよくない。伊原剛志は初めはガメラ側の狂言回しだったけれど、中盤以降はガメラ側の狂言回しとして特に必要も無いし、別にガメラやそういった生物の専門家でもないのに政府の会議や自衛隊の作戦本部にいたりする意味が分からない。特に藤谷文子がガメラの説明役になって行くので、どんどん伊原剛志の存在感も存在意義も無くなって行く。
一方の中山忍も、始めは真面目な研究者位だったのが、どんどん証拠も無い勝手な自説を展開し、ガメラが正義だと信じて色んな人を叱責し、その独善さが鼻に付いて行って仕方がなくなる。見て行く内にイライラし、むかつくヒロインって致命的。決定的な証拠も無いのにガメラやギャオスはアトランティスかもしれない超古代文明が遺伝子操作らしきモノで作り出し、ギャオスが彼らの絶滅の原因となり、ガメラはギャオスを倒す為に作られ、そこから現代の人間批判をしてしまう所辺りは本当にイラッと来る。そのイラつきは中山忍の変に強弱を付ける演技もあるのかな?
そう言えばギャオスが復活と言うか、再び卵から産まれたのって、日本の人為的な環境変化・環境悪化によってらしいけれど、ギャオスの卵があったのって五島列島だよね?東京のど真ん中なら環境の変化が原因と言うのも分かるけれど、国立公園にもなっているような五島列島でその理由って、無理矢理で如何にもな人間の生活環境の悪化の批判したくて入れ込んだ安っぽい場面だし。
特撮は、人間視線の映像と着ぐるみ怪獣の合成は中々良いけれど、怪獣だけのミニチュアセットでの映像となるとやっぱり安い。特に題名で「大怪獣空中決戦」と言っているにも関わらず、地上でガメラとギャオスが引っ掻き、突っ突き合う場面の安っぽさったらありゃしない。
それに音楽の演出も何か違和感。全編音楽がやたらと壮大で危機感を煽り過ぎていて、特に緊迫する場面でも無かったり、着ぐるみ怪獣が暴れていてもその音楽なので、音楽と画面がのチグハグ感を感じてしまう所がある。その違和感は、音楽聴いていると「あ、これ『水曜どうでしょう』だ!」と気付いて納得。この音楽の中の「ギャオス逃げ去る」が「水曜どうでしょう」で予告に使われているのだけれど、「水曜どうでしょう」の予告も音楽は壮大で危機感を煽っているけれど、画面上はミスターこと鈴井貴之と大泉洋が文句言っていたり、旅館で相撲取っていたりと非常にこじんまりしていて、その映像と音楽のチグハグさを笑いにしていたけれど、それと似ている。
この映画、結構評判が良いらしいけれど、実際見てみても「その高評価は何で?」としか思えない。展開は大人向けの顔はしているけれど、話が進んで行くにつれドンドン子供向け着ぐるみ怪獣映画そのものになって行くし、特撮はそれなりには良いけれどガメラの滑稽さで台無しだし。やっぱりガメラをどれだけ捏ね繰り回してみても、子供向け着ぐるみ怪獣映画にしかならないし、着ぐるみ怪獣の対決を見せられても「…う、うん…。」としかならんしねぇ…。
☆★★★★
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