ガメラ3 邪神覚醒

2014年09月15日 月曜日

金子修介監督、中山忍主演の1999年の映画「ガメラ3 邪神覚醒」。
ガメラシリーズとしては十一作目。平成ガメラシリーズの三作目で、前作「ガメラ2 レギオン襲来」からの続編。

ギャオスが世界各地で再び発生。それに対応しガメラも現れる。以前のガメラの出現で両親が犠牲になり、ガメラに対して恨みを持つ少女が封印されていた謎の生物を解放し、育てていた。

ガメラ 大怪獣空中決戦」とその続編「ガメラ2 レギオン襲来」までは人間側の話を中心にパニック映画としてはそれなりに見せていたのに、今回は子供を中心としてしまった為に一気につまんなくなってしまった。急に中高生が喜びそうな小寒い話や展開ばかりで、見ていられなかった。封印された魔物を子供が解放するとか、当時の子供向け漫画でも擦り過ぎていてやらない話じゃないの?
それに三作目にして、「ガメラは単に人間の味方ではない」って事を今更やる必要性ってあるんだろうか?元々の昭和のガメラシリーズが子供向けの良い怪獣だったからなんだろうけれど、単なる人間の味方ではないガメラなら初登場の一作目からやればいいし、二作目でもいいのに、何で三部作の最終作で急過ぎる方針転換したんだろうか?最後のあがき感しかないし。その一方でガメラを良い物にしたいという意志も見ては取れるんだけれど、ガメラがあれだけ散々人間を構わず殺した場面を見せておいて、藤谷文子に「ガメラは人間を殺したくないんだよ!」と言わせても無理しかないし、あれだけ関係無く人々を殺して来たガメラが、こちらも人殺しして来た前田愛を助けて良い奴でしょ!って何にも説得力が無く、脚本にしろ演出にしろ題材を完全に制御出来ておらず、中途半端過ぎるしブレ過ぎ。
これまで「ガメラは地球を守る守護者」だったのが、二作目で「実はガメラが地球の環境を変えてしまった」という矛盾もだからどうしたいんだろうか?前作までもあった「ガメラの存在意味がどうのこうの…」は、全て特に確信的証拠も無い今の人間の想像でしかなかったけれど、今作ではそこら辺をこねくり回し過ぎていて、脚本家の「どう?社会批判的でしょ?哲学的でしょ?大人っぽいでしょ?」と言いたいのが見え見えで鼻に付きまくり、しかも完全に滑っているし、もう小寒いし、見ていてもうっとおしいだけ。
中山忍と螢雪次朗が東京の街中で偶然会うとかも酷い脚本。その後、何故か中山忍が全く関係無い螢雪次朗を連れて調査に回ったりしているけれど、政府や自衛隊はよく許したな。ただこれまでの人物をはめ込むだけに都合良く展開する脚本には辟易。
また、前作で仙台が壊滅したにも関わらず、自衛隊の装備や兵器がしょぼ過ぎる。普通は数年前にあんな事があったら、相当兵器をアメリカ辺りから買いまくるはずなのにほぼ一作目から変わらず。むしろ見ていても自衛隊の兵器がほとんど出て来ないので、政府や自衛隊はもう怪獣対策放棄したとしか思えない。イリスに対し戦闘機二機だけでどうにかなると思っている位の馬鹿さだし、それ以上にイリスという巨大怪獣に対して人間が銃を撃って対応って、これまでよりも相当馬鹿になっているし。怪獣に現実味が無いにしろ、それ以外の現実の部分の手抜き脚本の酷い事。

あと、演出も間違っている所があって、京都に皆が集まってこれからガメラとイリスが戦うという時、右向きのガメラ。左向きのイリス。右向きの前田愛とカットが変わるけれど、前田愛が右向いていたらどうみてもガメラ側に付いて、イリスと対峙している様にしか見えないじゃん。このカットの意味って何なのだろう?
山咲千里が死んだ場面も死んだのか何なのかよく分からなかったし。と言うか、山咲千里や手塚とおるで何をしたかったのだろう?無暗に時間割いてしまうので、より散漫になっていたし。
それと、イリスが京都に飛んで来て、着陸した場所が佃煮屋の裏っていうのは何かのギャグだったのだろうか?

やっぱりこのシリーズと言うか、この1990年代の怪獣映画全般なんだろうけれど、怪獣の造形は酷いよなぁ。イリスの「トゲトゲ一杯!ビームを出すんだ!僕の考えた、つおい怪獣!」という安っぽさ。「怪獣だから意味の分からないトゲトゲとか、全体的に尖がっていてもいいだろ!これがカッコ良いんだ!」と開き直っているのだろうか?

笑ってしまうのは、ドリームキャストを使って地球環境をシミュレートして「今のゲーム機は凄いんだぞ!ドリームキャストは凄いんだぞ!セガからお金出てんだぞ!」と言いたいんだろうけれど、この後のドリームキャストが、それこそ「後藤喜男」だったり、「うんこや」「江口愛実」でお馴染み秋元康の宣伝や何やもあって一気に衰退してしまった事を知っていると、もう…。

この映画、それまでシリーズでそれなりにはパニック映画として見せてはいたのに、急な方向転換で小寒くなってしまい、本当につまらなくしてしまった。やりたい事入れ込み過ぎて、どれを見せたいのか絞り切れていないので脚本は雑多で散漫になっているし、怪獣映画としても見せ場は完全にこれまでよりも減っているし。まあ、これだとシリーズは終わるよな。

☆★★★★
 
 
関連:ガメラ 大怪獣空中決戦
   ガメラ2 レギオン襲来

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